267 【突発】Sanatorium,2880【RP村】
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親愛なる ア■■■XX へ 今日は日々良い日の中で 僕は■■のない日を過ごしている。 遠く記憶のかなたのきみは、 ここは雪の国だから、星が出ないと言ったけど 僕はぼんやり、雪の中におよぐ夜の光を覚えている。
(@0) 2019/06/17(Mon) 05時半頃
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きみの世界に星は見えているだろうか きみは大好きな■になれたのだろうか ぷかぷかと 空気を食べて■■ている 僕はそんな風に思いながら ざらりとした肌を撫でていた。
(@1) 2019/06/17(Mon) 05時半頃
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「 今日は夏の日のようだね 」 不意に鼓膜を打った、医者の端くれの話す声が 僕は急速に現実へと引き戻していた。 言葉が水であったかのように、瞬きを落としてから ガラス戸の向こうを見れば太陽は、白雲の細い影に 薄ッすらと主張していたのだったか。
(@2) 2019/06/17(Mon) 05時半頃
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夏の日が如何であったのか 僕はざらつく肌を白衣を着せた手に撫でるだけで それ以上のことは、地べたを這って灼いたような あの感覚のことしか思い出せなんだったが……、 脳裏に過ぎる薄い唇が、 夏の日の星空は綺麗なんだと謳っていた。 ──── 細目を向けたガラス戸の向こう、 唇に言葉を乗せた貴女が誰であるのか…など 僕には煙に包まれたような気分しか残らないが
(@3) 2019/06/17(Mon) 06時頃
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「 ……夏の日には 海の生き物たちは広い微温湯に浸かるのだろうか。 開花を終えた葉は何を思って緑の腕を広げるのか。 うだる呼吸を繰り返し、人は夏に困しむと聞くが ──── 冬より夏の日の方が 死人は少ないのだっけね 」
(@4) 2019/06/17(Mon) 06時頃
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大きく口を隠したマスクを手で押さえてから 吐き出す咳が、実験室の部屋に響いていた。 誰が如何して夏の日≠囁いたのか まるで季節を超えられない■のようだ…と 秘めやかに嘲弄する気持ちもあったが 肺腑に新しい空氣を循環させた頃には ガラスの向こうに広がる空に投げていた視線から ■めしさを込めたような色は無くなっていた筈だ。
(@5) 2019/06/17(Mon) 06時頃
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『 とっておきの夏の日には キミは何がしたいのだろう 』 肌と同じにざらついてはいない聲は 脳裏にそのように反響していた。 唇に綺麗な三日月を残していた貴女は 僕の知らない、僕の記憶の中の貴女は、 開いた窓から入る風に踊る髪を撫でてから 息を呑むほどに美しい微笑を見せてきた。 そして、縋るように僕に言うんだ。
(@6) 2019/06/17(Mon) 06時頃
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『 あなたと星を見に行きたい 』──…
(@7) 2019/06/17(Mon) 06時頃
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二つ返事で了承した。 今ならきっと首も横に振っていたのに そのどちらもないまま、僕は咳を落としている。*
(@8) 2019/06/17(Mon) 06時頃
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パンもスープも どれだけ口にしたことがなかったろう。
空の器を見下ろして、 不意、思ったものだから、
その夜、かたいもの を 食んでいた。
何れだけ噛んでいるのか、味蕾の在るべき部位が
欠けているものだから、全く解らず、
ぐっと 無理に飲み込めば ───のどに刺さるようで。
次第に綿を噛んでいるよな気分に陥り、
結局は、 薄紙にくるんで捨ててしまった。
味のない固形物、 パンの形をしていたなにか。
この世では食餌の調達さえも大変だというのに!
根で栄養補給ができたら良いのに。
食慾というものを喪って久しい男は、
しょくぶつの 機能美を思うだけ。
( 被検体は所詮被検体≠セった
完治しないのなら患者にすら成り切れない
僕にとっては消耗品で、籠の中の鳥だ。
箱の中の魚だ。
君の洞窟に光る碧海のような瞳の奥に
ちらりと存在を主張するモノが見えても…
────── 水底は見えないものだろう )
夜の帳が下りて来るより深い闇の中だった。
締め切ったカーテンは風に踊りもせず、
冷たい■の中に潜む息吹にゆらめいている。
生まれ落ちる頃に眠る籠より大きな箱を一瞥し
想像上に生きる深海ほどに昏くなった室内で、
ぼう、とため息にもならぬと息を吐き出した。
・・
それが人の眠りより長く 深く微睡むうち
僕は研究の為に棺のような箱を開いただろう。
或時にはガートル台を引っ張ってきて
人離れした身に 人らしい補給を施した。
閉じ切られた瞼がぴくりとも動かないのなら
はじめて見た時より小さくなった唇の上へと手を翳し
うっすらと、呼吸を確かめようとも。
過ごしやすいとは言え 蒸し暑い夏を通り過ぎ
葉が老いはじめて来た頃に、持ち上げた蓋の下
水から這い出た生物のように
薄いキャラメルの髪が濡れているのを見る。
折角合わせた服のサイズも
また指先が隠れるようになってしまったのか。
空気の悪い室内の、窓を少しばかり開きながら
僕は少し涼やかになった風を頬に浴びていた。
──────────
──────
ところで
体温が低ければ 心が冷たいと揶揄され
人情に乏しければ血は異色だと云われるが
心臓が赤色でないとの文句は聞くに珍しい。
大海原のまんなかの 青い部分を切り取って
もしくはブルーホールなんかを胸に埋めたような光が
僕の目に見えたのかは分からないが……
見えていたのだとしたら 僕は
僕より薄い体に埋めこまれたようなそれに
冷たいと指差される この手のひらを
そッと 重ねようとしたことがあった。.......
・・・・・・・
「 ......おかえりなさい。
食事の用意は出来ていますが
点滴の方が良いですか、153 」
被検体153が夏の眠りから覚めたとき
それが、彼に真っ先に届いた音だったろう。
灰色の街に踏み込んだときに
ほとんどの確率で見る死体に、
情を沸かす暇はむしろ惜しい
僕が被検体たちに抱いているのは
それとよく似た■■だろう。
不治と揶揄されている病に侵された身は
いずれ冷たくなる躯と何が違うのだろう。
擦り寄られても微笑まれても手を握られても
僕には生きている筈の君たちこそが
まるで生きながらにして死んでいる■のように感じる。
そういう風に 患者たちはいつも
医者を海底に沈める■■を軽々と吐く。
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