24 ロスト・バタフライ
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どうして、泣くの?
──欠けちゃったの?
[ぽたり、薄紅色から落ちる雫は とても綺麗。]
──それとも、欠けてるの?
[それを見た子どもの声にならぬ「聲」、
聞かせずに尋ねる声に、乗る色がある。]
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―― 現在・古びた花壇 ――
……
[半分程の水を遣り、 華の無い花壇を見下ろしながら何事かを ぶつぶつと独り呟いていた。]
―――?
[背後に人の気配を感じて、 座り込んだまま緩く首を其方へ向ける。 やがて白闇の中に見慣れた姉の姿が見えてくるだろうか。]
(9) 2011/01/26(Wed) 02時頃
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墓地に涙は付き物だと言うのに
ここほど、生者の涙の似合わぬ場所もない
死者が立ち、生者が眠るこの地
この地に涙を流すのは、あの二人だけでいい
[左耳は生者の声を聞き、右耳は死者の囁きを聞きます。左目は今世の姿を見、右目は魂の色を見ます。私は、少々特殊なようで御座いますな]
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[髪を撫ぜられれば、 姉へと同じように手を伸ばし撫ぜ降ろす。 互いの形を確認するかのように。]
予感?
[姉妹であっても感覚は姉の方が鋭い。 くん、と鼻を鳴らして虚空を見上げる。]
……そう。
[その点、嗅覚は妹の方が鋭いようで。 何かを悟ったように姉をじっと見つめ小さく頷いた。]
(15) 2011/01/26(Wed) 02時半頃
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……姉さん。
[抱き寄せられれば小さく名を呼んだ。 我が身を辿る指先から幾許かの感情を知る。 器は鋭く、互いを探る為の手段。]
待って。
[身体を離せば、 報せに行くと言い出す姉を声で制す。]
(20) 2011/01/26(Wed) 02時半頃
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何故だと思う?
[緩やかに首を傾ぐ。 色彩の薄い唇は細く高い音を奏でた。]
今までも。 間隔は空いていたけれど、 人が訪れた事は、在った。
[姉は何を、どう感じているのだろうか。 自身が感じた事と同じなのだろうか、と思い じ、と見つめたまま返答を待つ。]
(27) 2011/01/26(Wed) 02時半頃
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いやはや、どーうして泣くんだろねー?
[ひひ。と聲は笑う。]
欠けてるの、すごく、いいのにさ。
欠けているの、きれいなのに
欠けているの、すてきなのに。
欠けているから、
──寄り添って、おぎないあえるのにさ?
…――――
耳につく キンキン、キンキン
うっとおしい事この上ない
君、少し静かにしたまえ
[まったく、死者も生者も騒がしい。静かな時間が欲しい、この霧の中の湖のように。波すら立たぬ、静かな世界が良い]
完全で、まったきものなんて、つまらないだけじゃないか。
せっかく欠けて、埋めあうことができるのに、
どーして泣くんだろうね。
おいらにはさっぱりわかんないや。
[にこー。と、差し込まれる注意に、唇にまりと弧を描く]
や ・ だ 。
[NO、と突きつける二音、愉しげに笑っている。]
黙っててほしいの?
本当に?
静かなのがいいの?
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そう。
[姉の言葉に緩やかな頷きを見せた。 後に何か思案するような少々の沈黙。]
………姉さん。 其れが、誰かの願いだったら。
其れを私達に止める権利は―――
[有る、のだろうか。 確かな言葉にはせず、姉の手に触れ じ、と眸から眸を逸らさない。 正に今、姉がしようとしている事そのものなのだから。]
(29) 2011/01/26(Wed) 03時頃
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うるさいから追い出したい?
人間を?
まだ生きてる人たちを?
おいらもかい?
ねえ。──お仲間だろう?
それとも、仲間だ、なんて──認める気はない?
[煩い、と言われても声は止まない。
からかうような遊ぶような声、
矢継ぎ早の質問、問いかけ、まるでどこか試すよう。]
私はな、穏やかな日々が続く事を希望するだけなのだ
ただ、静かにこの場にありたいだけだと言うのに
騒がしい生者を追い出そうと、今起きたばかりだと言うのに
君が騒いだら、意味が無いだろう
[まったく、イライラする、イライラする。私に残る、憤怒の感情。ラースの炎が、今の私を形作る源。だから私は、イライラする。だから私の体は、生者と変わらず形を保つ。]
仲間? 何が仲間だ
同類、同族、そのくらいの物だろう
仲間と言うのは、共通の目標を持つ者の事を言う
静かな夜を取り戻すために、私は今、ここにいる
[イライラする、イライラする。ああ、頭が痛い]
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……
[姉の声に言葉は返さない。 同じものを見て、感じてきたからこそ きっと分かり合えてしまう事もあるのだから。]
願いは、きっと。 代償を必要とするの。 其れが生き延びれるだけの物とは限らない。
今までが偶々、そうだっただけかも知れない。
[もう一度。 姉の身体を求めるように両手を伸ばした。 拒まれなければ強く、抱く為に。]
(37) 2011/01/26(Wed) 03時頃
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静かな静かな?
そーうかあ。
おいらは煩いのも嫌いじゃないよ。
あんたの話を聴くのも嫌いじゃないよ?
仲間じゃなかったら、
同族、同類? なんでもいいな。
[いらいらする声にも、返す声、言葉楽しそうなまま
相手のことなどお構いなしなのはかわらない]
欠けてるもの見ているのは綺麗で、好き。
話すのも好き。
にひひ。黙るのは難しい。
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……―――
[長い付き合いなのだ。 姉の謂い掛けた言葉と気遣いは厭でも分かる。 ふわりと華のように笑んでは]
姉さん。 私は時々、思っていたの。
私達が今日まで此処に居れたのも、 誰かの願いなのかもしれない、って。
(41) 2011/01/26(Wed) 03時半頃
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[姉妹の存在を揺るがせる一言だとは分かって居ても。 指先が姉の背を確かめるように蠢いて]
それでも。 今日、この瞬間までの私の思いは二人のものよ。
姉さん。
[眸を閉じて、そっと唇を寄せる]
(42) 2011/01/26(Wed) 03時半頃
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おいらは楽しければ、なんでもいいんだ。
面白ければ。なんでも。
さあて、やってきた子達の中で、
片方だけの羽埋められる子はどれだけいるかなー。
でも、永久に埋まらないで、欠けたままでもいいよねー。
[つらつらと話す声音飄々と]
はぁ・・・わかった、もういい
声を聞くのは、100歩譲ろう、構わない
頭に響くその声を、なんとかしてくれ
トーンを落とせ、ゆっくり話せ
[まぁいい、今はいい。イライラするのがこの身の元なのだ。怒りを感じるのは構わない。イライラする、イライラする]
ゆっくり。
ゆっくり?
ゆっくり。
ゆっくりか、
うん。
うん?
うん。
[笑う声、言葉]
そうだね。
[ ──転調する。]
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……
[触れ合う唇は暫しの忘却。 言葉の無い温もりを分かち合えば、 そ、と身体を離し何時もの眸を向ける。]
姉さん。 本音を言えば、私は。 極力、彼らに何かを言うべきじゃないと思ってるの。
それでも―――
[ふ、と諦めたように笑って]
姉さんはきっと、それが我慢出来ない人、よね
(49) 2011/01/26(Wed) 03時半頃
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そう、ゆっくり、優雅に話すんだ
そしたら、私の方に問題はない
わかるか?
わからないよな
わからないのはよくわかる
とにかく、私のように話をするなら、良いのだ
誰かに聞かれるかも知れないよ。
ボクたちの言葉も。
耳のいい子も混じっているかもしれないものね。
今度の話し方は、どう? 似合うかな?
[声に混じる、楽しげな色だけ変わらないまま──
急くようだった口調が転じる。]
構わないさ
聞きたい者には、聞かすと良いんだ
それをべらべら話すような者なら、煩いから邪魔になるが
静かな者ならば、私は構わない
私は、静かな夜が欲しいのだ
それとも君は、聞かれたくないような話をするのか?
過去の恥ずかしい話とかか?
聞かないぞ、私は
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ん。
[絡めた手に力を篭める。 其れが、答え。]
姉さん。 一つだけ、約束して。
[歩みだす前に、一つ。 言葉を先に、歩ませた。]
(53) 2011/01/26(Wed) 03時半頃
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