279 宇宙(そら)を往くサルバシオン
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うまく始末できたか。
洗剤の味はどうだった? 硬いか?
ふん……特殊な匂いはするが、喰って美味いものではないな。
数だけはあるが、これは髄液だけしかないような味わいだ。
つまらん。
いまはちょっとコーヒー味するのかなあ。
色水にしちゃったみたいだし。
知能はわりと働いてそうなんだけれど…
ごめんよ、つまらないみたいだし、すこし横盗るね。
んー。旨味はある。こんなにさみしんぼうだったんだなあ、こいつ。
こっちは不安。もぐもぐ。
すこしずつ味が違うの面白いけれど、こう。しじみ汁のしじみをひとつひとつほじる感じ…
こりゃ食べ疲れちゃうなあ。
なるほど、食通好みというわけか。
おれの口には合わないな。後の処理は任せる。
[ひとつ摘まんだものの、スン……と離れていった。]
ぼくも、そろそろ疲れた…。
発見の喜び?人間への好奇心?みたいな味も混じってるし。こういうの混ぜられちゃうとちょっと…
ごちそうさま。あとよろしくね……
[ スン……と廊下の、機械の塊へと戻っていった。]
[このクラゲはミタシュという少女に興味を持った。
故に、まだ追放されては少し困るな。と思った。]
むかし住んでたイケメンのまわりで、たまに見たんだよね。この表情の女のヒト。
仲間の中で、つがいに一歩近づいたひとを指さしながらするんだよ。
[ はにかんだ笑顔は、正直コータの顔にはあんまり…]
つがい?
この宿主には雌と番う機能はないぞ。
というか、ミタシュとやらも機械製なんだろう。
[なにを言ってるのかわからん。という顔をした。いつもそんな顔ではあるが。]
……。
[その顔は、やめた方がいいんじゃないかと思った。
なんと言うか、人相の問題で。**]
さて。
きょうはぼくの命日だと思うんだよね。宿主が喜んでるんだ。やっとぼくを排除できそうなんだって。
ぼくのプラヌラたち、ちゃんと増えて、そのうち僕になるといいけれど。
人間たちばかりの船だと当然、虫下しで流されちゃうだろうなあ。
だから、ここをぼくたちの王道楽土にしておくれよ。
生活用水タンクの中で、孵ってくる日をたのしみに待ってる。
…じゃあね。
……そうか。
残念だが、仕方がないな。
プラヌラは見つかりにくいところに置いておけよ。
まあ、おまえの宿主なら適切な場所は知っているか。
では、またな。
[別れの言葉を告げる同胞に、淡々とした声が返った。]
[血の通っていないかのような冷たい手。
どうやらミタシュは本当に機械であるらしい。
守ってあげる、などと言われたのは、トルドヴィンには初めてのことだった。
……この宇宙クラゲにとっても。
だから、トルドヴィンがどう反応するのが自然か、わからなかった。
このクラゲはあまり器用な方ではない。
同胞のように宿主に考えさせて情報を引き出したり、様々な感情を味わうことが得意ではない。記憶と思考パターンを読み取り、齟齬のないように動く。その程度のことしかしてこなかった。
しかし、今回ばかりはどう対応するべきか皆目わからなかったので、クラゲは宿主に考えさせてみることにした。
その結果があれで、それに対しての反応がこれだったのだ。]
[勿論クラゲはこんな優しい手つきで頭に触れられたことはない。
困惑のまま。このクラゲは迂闊にも、次の判断も宿主に考えさせることにした。
それがトルドヴィンという男のどんな記憶と結びついているか、確認もせずに。]
――――!!!
[その瞬間、激しい混乱がクラゲを襲った。
慌てて宿主の思考を打ち切る。
外目には触角が揺れた程度、辛うじて動揺は悟られなかったはずだ。]
…………。
[混乱したような思念はやがて落ち着き、同胞に応える頃には、いつも通りを装うことはできていただろう。]
ヘリンヘイモの落差がかわいい。
あふれでるどうしようもない気持ちをすくって食べてないの、じつにじつに勿体ないなー。じゅるり。
/* これについてはモナリザを待った方がよさそうかな?と思いつつ。
たったいま?みたの?(きょろきょろ)
どこだ。どこをみたんだ。だいぶまえに冷凍庫に詰めて捨てられたんじゃなかったのかしら。
覚醒。…かれは、なにをいっているんだろう。未練や痛みはおいしそうだけれども。じゅる。
さっぱりわからん。我々の影とはなんだ?
……他の連中は、これを信じるだろうか。
[同じく何を言っているのかわからない様子だ。]
[少女の姿を目にすると、触手の先がなにやらぞくぞくとした。それが昨夜の混乱によるものなのかは、よくわからない。]
(わたしは、……いや、おれは)
[クラゲにとっての幸福とは、食べることと殖えることだ。
たくさんたべられればうれしい。
なかまがたくさんいればたのしい。]
[それなのに、]
(……うれしい?)
[食事中でもないのに、不思議だ。クラゲは宿主の中で首を(そんな部位はないが)捻っていた。]
そういえばこの辺りだったか。
こんなところまで欠片が飛んでいたとは。
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――朝――
[スリープモードに入らずチャージをするのも2日目だ。 だが、艇内放送を聞いてから動き出したためもあってか、バッテリーの消費も少なく動き出しは早い。 朝の放送の頃には、チャージも済んでいた。]
ソラ氏……
[その名前を読み上げる声に抑揚はないが、彼が選ばれたのは想定から遠く、データのぶれがあったかと記録を調整する。 確かに、キンジン星人はクラゲあるいはその近種と考えられていたが、昨日は談話室にも現れず、判断材料が少ないため断定されることはないと思っていた。]
(119) 2020/08/30(Sun) 22時半頃
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残念です。
[もう少し話を聞けたら、違ったのだろうか。 しかしそれは誰であっても同じだろう。 誰か一人を決めなくてはならなかった。それが、ソラ氏になってしまった。それだけだ。
ヒューマノイドは談話室に向かう。]
(120) 2020/08/30(Sun) 22時半頃
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――談話室――
ソラ氏は死亡したわけではありません。
[憔悴した表情を浮かべる面々に、淡々とした声が事実のみを告げた。 冷凍ポッドに乗せられた時点で肉体の時は止まる。死でも生でもない状態で固定される。 死んだわけではない。ただ、再び出会う可能性が限りなく少なくなっただけだ。 そして、解凍される可能性もごく僅かだ。別の船とぶつかったところで、宇宙クラゲの対処として追放されたポッドを解凍するものはいない。]
(123) 2020/08/30(Sun) 22時半頃
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先輩だとかいう男も、お前の宿主も船から消える。
キャプテンだとかいうやつはこの件に関わる気が薄そうだし、お前のプラヌラはまた水道管にでも入れておけば生存の確率は高まるだろうよ。
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