252 Aの落日
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[ 彼女の最後の笑顔が、目に焼きついて消えない ]
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─ 自販機の前にて ─
[無謀だろうが。怖いもの知らずだろうが。 理由がわかってしまえば、あとは簡単だ。]
なんでって。そんなの、 うちの守備のどこが甘いか、 一番わかってるのはあんただと思ったから。
[他の誰でもなく。 この人だと、思ったから。それだけだ。>>22
上手く蹴るだけが、フィールドを走り回るだけが、サッカーじゃない。 色んな選手や、戦術を知ればもっと強くなるし、楽しくなる。 俺はそれを知ってる。そしてたぶん、目の前のひとも。
今度は、目を逸らされない。 それを瞬きせず、じっと見ていたなら。 片方しか見えないそれが微かに揺れた、ように見えた。]
(50) 2018/10/17(Wed) 02時半頃
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[受け取ってもらえなかったペットボトルは、素直に下ろす。>>24 簡単に頷いてもらえると思うほど、楽観的じゃない。 とりあえず今は名前だけでも知ってもらえるだけでも。 なんて考えてたところにフルネームで呼ばれて、目が丸くなった。
もう一度その目を見つめて。
ああやっぱり、この人だ。 無意識に口端が緩く上がる。]
上手くなれるかどうかは俺次第だし、 誰に教えてもらいたいかも、俺が決めることっす。
あと馬鹿なのも合ってます、 サッカー馬鹿なんで。
[ふてぶてしい、上等だ。]
(51) 2018/10/17(Wed) 02時半頃
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だから、考えておいてください。 葛"センパイ"。
[ハリボテのような牽制。 その程度で怯むんじゃあ、キーパーなんてできやしない。 自販機に寄ることなく離れていくなら、止めることもなく。 真顔に戻って、その背中を見送った。*]
(52) 2018/10/17(Wed) 02時半頃
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─ そして、文化祭終盤 ─
[今から体育館に行っても、劇に間に合いそうにないか。 シェイクされた上に絶妙にぬるくなったカフェオレは、様子を覗いた生徒会室で、相変わらず忙しそうな会長に差し入れだと押し付けて。>>1:134
そろそろ展示当番の時間だと、教室に向かう。 そうして展示を見に来てくれた生徒や外部からの客人の相手をしている合間、耳に入ってきたのはクラスメイトの女生徒らの騒ぐ声。
『ねえ伏見さん見た?』 『見た! すごくかわいくてびっくりした!』
なんのことやら。 首を傾げながら窓の外を見れば、校門を出て行こうとする頭が目に入った。>>25]
(53) 2018/10/17(Wed) 02時半頃
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……歩きながら、あぶないっすよ。
[ここから届かないことを承知で、呟いて。 そろそろ文化祭も終わりの頃合に、片付けの段取りを頭の中で組み始めた時。
ふと、先輩の顔色が変わったのが見えた。>>35 何処を見ているのか。 弾かれたように、走り出して。>>36
そして。]
(54) 2018/10/17(Wed) 02時半頃
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[──鈍い、大きな音がした。>>#0**]
(55) 2018/10/17(Wed) 02時半頃
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[ 万年青は知らない。
彼女がどんな子なのか。
どうして飛び降りたのか。
どうして、あんなきれいな笑顔を見せたのか。
人から聞いた断片をつなぎ合わせても、
つぎはぎの人物像は、熱を持たない ]
[ 万年青は考える。
彼女はどうしてあの時間あそこにいたのか。
どこへ行くつもりだったのか。
もともと飛び降りるつもりだったのか。
決心したのはインタビューのせいなのか。
あの窓から落ちたのは故意なのか、偶然か。
もっと上まで行くつもりだったのか。
窓が開いていなければ彼女は落ちなかったのか。
あの時声をかければ。
シャッター音が響かなければ。
彼女は、空へ飛び立たなかったのだろうか ]
[ 思考を巡らせるたびに、
彼女が思い切ったことに
自分が関わっていて欲しいと、
彼女を動かしたのは自分でいたいと、
願うように思考が巡る ]
[ そんなに人を動かす主になりたいのか。
……浅ましい ]
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[久しぶりの、なつかしい夢を見た。]
(252) 2018/10/18(Thu) 02時半頃
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[夢の中の俺は周りに埋もれるくらい、背が低くて。 それでも必死にゴールを守っていた。
ベンチから届くいくつもの声援。 一際ひびく声はいつだってマネージャーのものだった。
よく笑う女の先輩。 いつだって部員のことばかり考えて、駆けずり回って。 楽しそうに笑っていた。
それなのに。 その笑顔が変わったように見えたのは、いつからだろう。 楽しそうでも、面白そうでもなく。 でも、相変わらずよく笑っていた。から。]
(253) 2018/10/18(Thu) 02時半頃
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[何も、聞こうとしなかった。 何を、聞けばいいのかわからなかった。
だから、見ていただけだった。
そうしているうちに、]
(254) 2018/10/18(Thu) 02時半頃
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[──鈍い大きな音がして。
何も、聞くことができなくなってしまった。*]
(255) 2018/10/18(Thu) 02時半頃
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─ 文化祭翌日 ─
[珍しく居眠りすることなく。 けれど真面目に聞くわけでもなく。 ぼんやりとしてる間に終わった全校集会。>>#5 授業は中止。それだけ頭の隅に置いて体育館から教室に戻っていく生徒らの波に紛れて、歩く。
頭が重い。単純に、寝不足のせいだ。]
……悪い。 ちょっと保健室行ってくる。
[教室の片付けは丸投げして。 生徒らの波から逸れるように、歩き出した。]
(256) 2018/10/18(Thu) 02時半頃
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[保健室、というのは口実で。 適当にどこか休める場所でも探そうと校内をぶらり。 文化祭で浮かれて賑やかだった昨日と打って変って、不穏な空気がざわつく廊下。 群れる生徒を散らそうとする教師の声が響く。>>219 それらを避けるように歩いていると、着いたのは購買。
なんとなく、甘いものが飲みたくなる。 コーヒー、カフェオレ、いやもっと甘いやつがいい。 誰かのため息と共に、ふわりと、漂う甘い匂いが鼻を掠めた。>>192]
……あ。ココアは売り切れか。
[売切表示に出鼻をくじかれて、結局選んだのは抹茶オレ。 立ったまま一口飲んで息をつけば、再び聞こえたため息。>>226
ちらりと振り返ると、そこには小柄な先輩が座っていた。 見たことがある。 四十崎に生徒会の連絡を伝えに行った、3年の教室で。 サッカー部の先輩が元カノだとか話してた気がする。>>0:326 あまり興味ないし、名前も覚えてないけど。]
(257) 2018/10/18(Thu) 02時半頃
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[昨日、校舎から落ちた女生徒も3-Aらしい。 それは最新の校内新聞を見ていなくても、嫌でも聞こえてくる噂話で知れること。>>168
何かといらぬ気苦労を抱えこみそうな四十崎は、どうしているだろうか。]
でかいため息っすね。
[スマホを見てる先輩に、声を掛けたなら。>>236]
どうも。 先輩のクラス、3-Aでしたよね。 四十崎先輩は教室にいましたか?
[唐突なそれに不審がられるなら、生徒会の後輩です、と添えよう。 校内のざわめきや重い空気など他所事のように。 口調も表情も、いつもと変わらず淡々と。**]
(258) 2018/10/18(Thu) 02時半頃
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[ 身を乗り出す安住の後ろ姿の写真を
こちらを見て微笑む安住を、
手が離れた瞬間を、
スライドさせるごとに
ゆっくりと、落ちていく様子を
万年青は何度も見つめる。
最後はふざけて身を乗り出す生徒たちの写真。
下から見ていたら、こんな様子だったのだろうか。
ぶるりと体が震える。
もっと、こんな様子が見たい ]
[ 彼女が死んでしまえば、
きっと感化される生徒が増える。
箱におさめられた生徒たちは
簡単に人に流される。
水をとどめるた堰が亀裂ひとつで破壊されるように
一人目が出れば連鎖が起きてもおかしくない。
そのための土壌は、すでに整えられているのだから ]
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[スマホを握る指先が動いた気がした。>>276 立ってる位置から見えない画面で何が怒っているか知らないまま、不躾に見下ろして。]
さあ。
でもため息で、幸せは逃げないらしいっすよ。 じつは体にいいとか。
[真顔で返す。>>277 なんてことない、親が好きな健康番組の受け売りだ。
小柄な先輩の、にっこりと効果音がつきそうな笑顔。 こういうのが所謂、愛想がいいっていうんだろう。 無邪気に見えるそれをなんとなく、器用だなと思った。]
(310) 2018/10/18(Thu) 22時頃
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[先輩の名前は、はのん、というらしい。>>278]
用事、……はないっすね。
[メールには、なるほど。 部活や生徒会の連絡以外であまり使うことがないから、忘れかけていた文明の利器を思い出して頷き。 俺もつられるように、抹茶オレをもう一口。 喉を落ちていく甘さに、長めに息を吐き出した。]
教室にいるなら、どうしてるかと思って。
昨日落ちたの、先輩のクラスの人っすよね。 四十崎先輩って、いつも周りに気を遣って 他人のことまで抱えこんでる感じするから。
[ポケットから、携帯を引っ張り出す。 しかし、メールするならなんと送ったものか。 メール作成画面を開いたはいいものの、指を止めて考え込むこと数秒。]
(311) 2018/10/18(Thu) 22時半頃
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───────────────── To 四十崎 縁 From 辰巳 刀流 ─────────────────
カフェオレ、飲みますか?
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(312) 2018/10/18(Thu) 22時半頃
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[端的すぎるメールを送信して。 再び視線を、携帯から小柄な先輩へ。]
えーと……はのん先輩?で、いいっすか。 あ、俺は辰巳っていいます。
[名前を間違えてないか、今更のような確認をして。 今度は俺のほうが首を傾げたなら、もう一つ気になっていたことを訊いてみる。]
昨日落ちたのって、どんな人でした?
[明日の天気でもきくように。*]
(313) 2018/10/18(Thu) 22時半頃
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