263 ― 地球からの手紙 ―
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うわ、いっぱいある
[一体どれが良いものなのだろうか。 陳列されたそれらを目に思わず独り言を呟き、 ひょこひょこと棚の前を移動しながら、その全てを眺め倒す。 ────文具売り場の一角、レターセットが並ぶ棚は 脇を通り過ぎる者ばかりで、少年が邪魔になることは無かった。
故に、呟きを喧騒から聞き取った者も 言葉の割には浮かべた表情は楽しげであったことを知る者も ショッピングモールの客達の中には存在しない。]
(30) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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[日常の変化は唐突だった。 枕元の振動に常よりずっと早くに起こされて 驚き、喜び、二度寝が出来なくなった頭で階下へ降り、 早い朝食を取っていると玄関から聞こえた音。
新聞や親宛ての事務的な便りと共に落ちていたそれらは 少年への者と示すものがなくとも、両親に対してもそうで 中身を確認し──絡みついたものを取り除いてから──気づく
その後の反応は、教室で注目を浴びた時と似ている。 “有り得ない”よりも羞恥心が勝るのは患う物を持つ思春期故に。]
(31) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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可愛いほうがいいのかなー……
[一つはとても可愛い封筒と便箋だったから ああ、でも、読む限りではどちらも望まないかも。
現在の少年は落ち着きレターセットの柄を思考する余裕があるが 手紙を読んだ後冷静になるまでにはそれなりの時間が掛かった。 そして、返事を書くという結論を出せたのは 精一杯答えてあげたいと思える手紙が届いたから、それに 何故か自分のメモ書きを送られてしまったらしい誰かが とても真摯に返事をしてくれたからでもある。
中々不可解で結論が出ない事象、ネットでも調べておきたいが “名前も知らない誰かと言葉を交わす”という部分に関しては 自身が電子機器で行っていることとそう変わらない。]
(32) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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[そうして時間を掛けて選ぶことが出来たのなら、 大切に大切に紙袋を抱えて、本来の用事を済ませに急いだ。
食料品の詰まった袋を帰宅を待っていた母親に託せば、 早速部屋に戻り、机に向かいペンを取り思考する ああ、メールの返信も考えなければいけない。 “あの不思議なもの”のことは、 色々と含めてもう少し長く悩もうと思うけれど。
気心の知れた友人が相手なわけでもないのに、何故か楽しい 忙しさが煩わしく無いというのは、心地良い。
数日前、文字のチャットにロマンが無いと感じた少年は 顔も見えない声も聞こえないコミュニケーションに対して とても積極的に変わっていた。]
(33) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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[青い絵の具を混ぜ、薄め、一つ一つ落としたような 淡い色彩で縁取られたレターセット 封筒は端の一部が星型に小さく切り抜かれた作りになっている そして、相手の署名をそのまま宛先に 今度は自分の名前と住所もしっかりと記入した。
殴り書きも塗り潰しも何処にも無い。 出来る限りで、丁寧に綴ったつもりである。]
(-33) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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心優しいあなたへ
とても丁寧なお返事をありがとうございます それ以上に、本当にすみません。 あれを誰かに届けるつもりは無かったんです。
どうして届いてしまったのか、実のところ分かりません。 あのような内容を汚い紙で急に送られてしまって、 ご迷惑をお掛けしたと思います。
その上で真摯に答えて下さった人生の先輩へ もう一度今度はちゃんと手紙を書きたいと思って、 今ペンを握っています。
(-34) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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僕が読んだ限りでは、ですが あなたの奥様への気持ちは恋なのだと感じました。
熱烈だったり、綺麗な言葉で表現していたり そういうものばかりが恋なわけではないと思います。
声が聞きたい、傍にいて欲しい 素朴で、とても切実な気持ちですね。
僕なんかが言っていいこととは思えないのですが、 今からでもあなたが自信を持ってくれたのなら、 きっと奥様も喜ぶのではないでしょうか?
届いてくれますように! 学より
(-35) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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[青い絵の具を混ぜ、薄め、一つ一つ落としたような 淡い色彩で縁取られたレターセット 封筒は端の一部が星型に小さく切り抜かれた作りになっている その穴から「ショコラくんへ」と見えるように細工した。 雑では無いが、女性や子供の丸みは無い文字で手紙は綴られる。]
(-36) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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ショコラくんへ
初めまして、僕は学という名前の高校生です。
不思議なポスト、とても素敵な話ですね 僕は聞いたことがないので、届かなかったらごめんなさい。
可愛くて優しいお姉さんがいて羨ましいです でも、ちょっと大変なこともあるみたいですね。 女の子は繊細で複雑なものらしいですよ。 落ち着いた態度で扱いに気をつけてみたら、 かっこいい子として扱って貰えるかもしれませんね。
さて、恋のことですがまず言えるのは、 お姉さんの言葉は君が恋を知れば必ず理解出来ます。 けれど、恋はしようと思ってするものではありません。 恋というのは気持ちがひとりの存在に強く動くことです 僕も説明が難しいので、例え話をしようと思います。
(-37) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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ショコラくんは、風が強い日に傘を差したことはありますか 最初は大丈夫でもとても強い風が吹いた時、 傘はそれに乗って自分の手から逃げそうになります。 いつそうなるかは分かりませんし、 逃げそうな傘を捕まえているのはとても大変なことです。
つまり、いつ自分が恋をするかなんて分からなくて してしまったら今度は気持ちを制御するのも難しくなるのです。
そう聞くととても面倒に思えるかもしれませんが、 いいものでもあるんですよ。 自分じゃない誰かがとても素敵に思えて、 良いところにいっぱい気づけて、大好きになって 相手にも同じように思ってほしくなるんです。
僕なりに考えて書いてみましたが、 君の参考にならなかったらごめんなさい。
この手紙が君に届きますように 学より
(-38) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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[「あなたが好きです」「この気持ちが伝えられたらいいのに」
君の手元にもどってきた白紙は泥水をかぶったかのように汚れてよれてしまった。 立方体の角部分のインクはボケボケになってまるくなってしまって、余白にはびっちりとできたばかりのシミが付いてしまっている。
そのシミは文字のようにも見える。]
(-39) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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私は憧れに近づくことができず、近づけば憧れのカドをよろよろのよれよれにさせてしまう。それでも同体したくて細く細く自分を沿わします。 もしカドさんが口を利けたら「どうして私をよれよれにさせてまで近寄ってくるのか」と怒鳴るかもしれません。その時私はなんて答えればいい? 「あなたのことを尊敬しているからあなたを傷つけてでもそばにいたかった」 「それは無意味なことだ、私達が一緒にいても繁殖も社会グループも作れやしない」 「それでも私はあなたを尊敬していてどうしても近くで眺めたかったのです」 いっそカドさんが私のことをメチャメチャに怒って嫌ってしまえば踏ん切りもつきましょうがなにせ私とカドさんは住んでいる次元が違うのでコミュニケーションは取れません。
どうして伝えられないのでしょうか。 もしあなたがコミュニケーションに適した身体を持っており、伝えたい相手が同次元の存在ならば、私はあなたがとてもとてもうらやましい。 もしあなたも私と同じだったら……私は私だけじゃないと思い知り、苦しさをなでてやることができるのでしょう。 どちらにしろ、あなたの心が安らかでありますように。 カドを尊敬するソランジュ
(-40) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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[二つ書き上げ、後のほうを眺め少し考える。 自分に届くべきではなかっただろうな、と 彼──合っているのだろうか──が望む感情は持っていても その対象、が。
例えば母親みたいな年齢の人を好きになったとか、 同性の友人に恋をしてしまったとか。 それくらいの差異なら良かったのだろうが。
参考になることを願うしかない。]
(34) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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/* おわぁ、すみません軽いノリでカドの絵とあんな言葉を送ってしまい 間に合わないメール組も本当にすみません
(-41) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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/* >手紙を書くと体積が減って知能レベルが下がり〜 すごい設定……好き……。
(-42) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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/* ( ,,`・ω・´)ンンン?
(-43) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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/* そうだよな好きになるやつがおにゃのことは限らないよな……(いまさら)
(-44) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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[それから暫く、少年は調べものをした 紛失するメモ、宛先の無い手紙。それと“不思議なポスト”について キーワードは思いつく限り駆使したものの、 おとぎ話、都市伝説、関係ないページが多くを占めた。
非現実的現象に確実性はやはり見つけられない しかし、彼には体験した事象がある。 ──全ての引き出しをひっくり返してもあのメモは無かった。
そして、一つの非現実をネットから掬い取り 自分の体験と重ね、行動することにした。]
(35) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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お願いしますパルック様!
[「鍵のついた引き出しにポプリと手紙を入れ パルック様にお願いし、一日決して開かないこと。 そうするとパルック様が手紙を届けてくれるらしい。 何処にでも、住所がなくても。」 ポプリは母親がリビングに飾っていたものを頂戴し、 引き出しの前で両手を合わせ少年は頼み込んだ。
パルック様とやらも眉唾だなどと、彼は知らない。 けれど手紙は届くことも、また同じく。]
(36) 2019/04/19(Fri) 23時半頃
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[銀河鉄道の夜を読み始め、余白の文字に気付く。 本を読むのを一度止めて、文字を追い始める。 やがて懐かしい言い回しに微笑んだ。
この本を読み終えたら返事を書こう、と、心に決めて。
余白の文字と、小説を、ゆっくりと同時に追った。]**
(37) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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―水底の館―
うん、仕事で必要なところには連絡済み、と。 私信は、そうだね、転送しなくていいよ。入れ違いになっても大変だし。 戻ってきてから、読ませてもらうことにしよう。
あとは……忘れてることは、ない、かな。
[荷物を確かめて、留守居の者との打ち合わせを終えて。 館の中をぐるりと見渡した]
じゃあ、行ってくるよ。 留守をよろしく。
[遠方の親戚の、力になるために。 しばし、領地を後にする**]
(38) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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[ベランダに並ぶ鉢植えには、色とりどりの花が咲いている。 中には太陽の光を受けて、踊るようにゆらゆらと、揺れている花もある。 夫曰く、地球の遠いところで株分けしてもらった花だそうだ。 背中から、花を咲かせる枝を生やした種族が住む地で咲く、“踊る花”。
夫は物書きである。 どこか遠くの場所を舞台にした物語や、詩集。そういうのをメインに世に出している。 だからだろうか、この家には記憶のない私にとってだけではなく、 普通の人の知識にもなさそうな珍しいものがある。探せば手の届くところに。
だがまあベランダで咲いている花は一部を除いて普通の花だ。 どうやら花をこうやって育てることは、私と夫に共通する趣味であったらしい]
(39) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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[鉢植えに水をやっていると、ふいに風がぶわっと吹いた。 かさかさ、葉擦れの音がする中、私は思わず目を閉じていた。
再び目を開けると、足元には葉っぱがあった。 鉢植えの花から落ちたのではないのは明白だった。かたちが違うのだから。 拾い上げて眺めてみれば、葉っぱには文字が書いてあった。 ちゃんと読むこともできた]
おて…… まる?
[とは、いったい。 だが、内容を読む限りこれがおてがみの類であろうことはなんとなくわかった。 先日届いた、知らない人からのメールのような]
(40) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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[はたはたぱたぱた、としーさーは走る。 ふと見上げたその先に、昨日風に託したのと同じような吹き流しがあった。 それらに文字は刻まれていない。 文字を刻むのは、もっと小さくて、絡まないやつだ、
それには願いを書くのだと、 何故知っているのかは、覚えていないけれど、 それを知っているから、願いごとをかいたのだ]
(41) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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[つまりはせっかくおてがみをもらったのだ。 返事をすればきっと相手は喜ぶであろう。
ふと、思い出すことがあった。 この世にはいくつもの不思議があると夫が言っていたこと。
水底に暮らすひとじみた知性を持った生き物、 文明のもたらす光のおおよそ届かない場所で生きる小さき人々、 ―――言葉をどこかからどこかへ届けるふしぎないきもの。
ふしぎないきもの、のことは、夫も見たことはないという。 だが、その痕跡は、 世界を見渡せばあちこちに転がっているらしい]
(42) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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[今の私にとっては、存在の確定しないふしぎないきものが本当にいるのか疑うよりも、 顔の見えないどこかの誰かに思いを馳せることの方が重要課題だ。 真新しい便箋に文字を綴り、 咲いたばかりのパンジーや、ビオラの花びらといっしょに封筒の中に収めた]
(43) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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[さあ次はメールを書こう 立ち上がった彼は意気揚々と、それを楽しみにしていたのだが 届いた二通を開くより先に、響いたノック音 母親に促され昼食を取りに階段を降りて。]
えっ、今から出掛けるの?
[食事の途中、思わぬことを告げられた。 親戚が関わる事情の為、自分は家にいるとも言えず 一晩泊まることになってしまって。 残念ながらその日、メールを返すことは出来なかった──]*
(44) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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けとぅとーぅさんへ
こんにちは。わたしはヘザー・ジールです。 あなたからのおてまるをうけとったのでおへんじをします。
あなたのいるところにもはるがきているのですね。 わたしのいるところにもきています。 とはいえ、さくらをみるには、ちょっととおくまであるいていかないといけないのですが。
はなは、みているとおちつくので、すきです。 わたしのいえにもはなが、たくさんさいています。 きいろっぽいはなは、パンジー。 むらさきいろのはなはビオラといいます。 どちらもはるのはなです。 わたしは、きせつのなかではるがいちばんすきですが、あなたはどうですか?
(-45) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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[さて、どうすれば手紙は届くのだろうか。 そのことについて夫は何か言ってたか……言ってなかったような……
結局、ベランダの片隅に封筒を置いて。 家にあった本に書いてあった、 この地球の、私のいる所よりずっと東の方における、 かみさまに祈るためのやり方を再現した。 二回おじぎをして、二回手を打ち鳴らして、 おてがみが届くよう祈りを込めて、もう一度おじぎをしたのだ。
その後、編み物を3時間した後にベランダを見たところ、 封筒はなくなっていた。 風で飛ばされてしまったか――それとも祈りが届いたのかな?]
(45) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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迷い人 ヘザーは、メモを貼った。
2019/04/20(Sat) 00時頃
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/* パンジーもビオラも冬にも咲くんですねなんてこったい ナカノヒトの中で春の花的ないめーじがあったばっかりにはわわ
(-46) 2019/04/20(Sat) 00時頃
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