48 マーメイドライン
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[見知らぬ女性に声を掛けられて、びくりと震える肩。 上着の下に隠した短刀を押さえて、じろりと視線だけを向ける]
…………。
[まず一番最初に目に入ったのは、金の色の髪。 私のセイレーンをたぶらかす女たちと同じ、蜜色の髪に]
あなた、誰……? あなたも、私の邪魔をするの……?
[眼鏡の奥から見据えてくる瞳を睨めつける様に見上げて、口を開いた]
(4) 2012/05/19(Sat) 12時半頃
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[害はないのだといいたいのだろう。 表情を和らげる、金の髪の女。
だけど、私は気を許したりしない。
いつだって、彼女たちは。 優しい顔をして、王子を。そしてセイレーンを私から奪っていくのだから]
……ご忠告ありがとう。 もう用は済んだから、帰るわ。
[くるり、背を向ける。
――……急がなくちゃいけない。 こんなことをしている間に、 私のセイレーンが、また奪われてしまうかもしれないのだから]
(5) 2012/05/19(Sat) 12時半頃
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[向けた背中に声をかけられれば、二言三言言葉を返したかもしれないけれど、 服の下に感じる短刀の硬質な重さを確認しながら、海へ向かう。
三年前と同じように。 セイレーンを海へ返すために。
あの岬へ、と――……]
(6) 2012/05/19(Sat) 12時半頃
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― 岬 ―
[あそこに行けば、きっといると思ってた。 あの場所は三年前に、セイレーンが海へと還って行った場所だから。
だから、きっと。 彼女は、きっとあそこ――岬にいると]
…………はぁ、はぁ…… やっぱり、いた……。
[走ってきたせいで乱れた呼吸の中、 岬の埠頭にうずくまる小さな影を見つける。
幸い風は海からこちらへと吹いているから。 彼女はきっと気付かないだろう。
極力足音を殺し、そっと忍びよる]
(7) 2012/05/19(Sat) 12時半頃
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[彼女まであと数メートルといった距離まで近づけば、 自然と顔に薄い笑みが浮かぶ。
もう一度。 あの愛しい人を、私だけのものにできるのだと思うと、 嬉しくて嬉しくて笑みが浮かぶのを止めることが出来なかった]
(8) 2012/05/19(Sat) 12時半頃
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還ってきたのね、セイレーン……。 もう一度、私に逢いに。 私だけのものになるために。
[いつだって違う人を選ぶあなた。 だから、私はあなたを私だけのものにするの。
くすくす、くすくす。 鈴をころがす様な啜り笑いに、さすがに気がついたのだろう。
うずくまる影がこちらを振り向いたような気がしたけれど。 ――……もう、遅いわ]
(9) 2012/05/19(Sat) 12時半頃
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[どすっ、と。 何かを劈く音が響いた後、鈍い衝撃を握った短刀が伝えてくる。
何が起こっているのか、判らないと言った表情を浮かべるセイレーンに、 私はあなたが三年前に可愛いと言ってくれた笑顔を浮かべて]
――…大好きよ、セイレーン。 私だけの、アムール。
[三年前と同じように、波打つ海へと身体を、押して――]
(10) 2012/05/19(Sat) 12時半頃
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[大きな水音が一つ響いて。 岬には一人ぼっちの影が一つ。揺らめくのみ**]
(11) 2012/05/19(Sat) 12時半頃
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