279 宇宙(そら)を往くサルバシオン
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… シルク、さん。
[ああ。やっぱりわたしは、なにも出来なかった。]
(75) 2020/09/03(Thu) 22時頃
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[ワクラバさんが部屋を出ていく。>>62 わたしはそれを、どこか呆然とした面持ちで見送っていた。
ぼんやりと、椅子に座っている。 足元には転がったシュガーキャンディ、色とりどりの欠片は床に砕けて。]
……、…
[涙は流れてくれやしない。 わたしは、無言のまま手で顔を覆った。*]
(76) 2020/09/03(Thu) 22時頃
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─ 談話室 ─
[ふと。意識が呼び戻されたのは、再び猫さんの声が聞こえたせい。 小さな姿がこちらを見上げて、何か優しい言葉を紡いでる。>>83
声の調子が優しくて穏やかで、わたしはまた泣きそうになってしまった。泣くことなんて、出来ないくせに。]
う 、ん。 …猫さん、も。
[ひょいと小さな温もりが膝の上に飛び乗ってくる。 それに、わたしは温もりのない掌を添えた。 柔らかな毛並みを緩やかに指の間に梳いて。]
(84) 2020/09/03(Thu) 23時半頃
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あの、ね。 わたし。 猫さんにも 、ぶじで、居て欲しかったの。
─── ゆ め。
叶えて、くれるんでしょう? だから…ね。
[冷凍ポッドに乗せられて、送り出されて行ってしまった人たち。 広大無限の宇宙空間に、なんの装置もないまま送り出されたそれらは死と同義だろう。
それでも。…それでも、もし。 ────もしも奇跡を願えるならば。]
(85) 2020/09/03(Thu) 23時半頃
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わたしは、猫さんの無事を願ったの。 ずっと。 クラゲさんに襲われることのないように。
わたし、夜に見張っていたの。 …もしも猫さんが襲われるなら、絶対に守るんだって。
[突拍子もない話だろう。 それはいつぞやの、お兄さんに向けた話にも似て。 信じられたいわけじゃない。感謝されたいわけでもない。…ただ。]
だから、……ね。 わたしも、猫さんが、生きていてくれて嬉しい。
(86) 2020/09/03(Thu) 23時半頃
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…… ありがとう。
[ただ。ささやかな喜びにも似た感謝の気持ちを。 伝えたくて、膝の上の猫さんにそっと声を落とした。]
(-52) 2020/09/03(Thu) 23時半頃
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[膝の上に乗ってくれた猫さんは、暖かかった。>>91 偽物のセンサーが柔らかな感触を伝えてくれる。]
ほんとうは、……みんな、守り、たかったけど。
[ヘリンお姉さんも、シルクさんも。薄荷さんだって。 でも、みんなみんな守れなかった。 わたしに出来ることなんて、何もなかった。]
… だって。 猫さん、小さい でしょ?
[小さいから!と、薄荷さんに言った時には尻尾がぴしぴしと揺れていたけど。>>3:39 泣き出しそうな、声がくぐもる。今は大人しく聞いてくれてたかしら。]
(120) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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わっ…、わたし は、ね。
[ひょいっと猫さんが降りていく。 そうして向けられたワクラバさんの問いと視線に、鼓動を打たない心臓がぴょこんと跳ねた。でも、目は逸らさない。逸らしてはダメなんだと思ってた。 今は寄り添えるお姉さんもお兄さんもいないから。 ひとり、薄荷さんとお姉さんのいる胸元に拳を添える。]
わたしは、モナリザさんを選んだの。
[それでも。彼女の方は見れそうにない。]
(121) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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わたし。昨日、廊下で言ったわ。>>4:75>>4:76 猫さんとモナリザさんと一緒にいた時に。
理由は変わっていないの。 わたしは猫さんの夢を、本当に素敵だと思ったし… シルクさんは、……ひとを、大事にしてくれる人だったから。
[ぎゅう。と、胸元を押さえる手に力が篭る。]
そしてね。 昨日、言えなかったもう一人。
[そう、言いそびれてしまった最後の名前。それを口にする前に部屋についてしまった。>>4:77 問われれば答えただろうけど、問われることはなかったから。結局は言い出せぬまま。]
… ワクラバさんも、違うんじゃないかしらって。
(122) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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あのね。ワクラバさんとは殆ど話したことがないわ。 だからわたしには、ワクラバさんがクラゲさんに寄生される前も後かも分からない。比較なんて出来ないのだわ。
……、でも。
[ぽつ。と、言葉が途切れる。]
ワクラバさんは、「さいなんだな」って言ったの。 くらげさんに。さいなんだなって。>>5:204
わたし、それを聞いてひとごとだなって思ったわ。>>4:14 そう、他人事に聞こえたんだわ。
…───クラゲ、にとっての、他人事に。
(123) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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[そうして改めて、ワクラバさんを見る。 大丈夫、怖くない。]
だから。クラゲを他人事に語るワクラバさんは、クラゲじゃない。 そうかも知れないって、少しだけ思ったの。
でも少しだけ。自信なんてなかったわ。 それでも、彼を選ぶつもりにはなれなかった。
それに、ね。 昨日、お話をして、くれたでしょう? ひとり、くらげが死ねばって。>>4:165
わたし、あれから考えたの。 お話が終わったあとにも、お部屋でも考えたのよ。
(124) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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ワクラバさん。 あなたが、もしもクラゲで「本当に自分の説を信じるなら」あなたが立候補すればよかった。
自分がクラゲであると名乗り出て。 それで仲間を生かせると信じるなら、それで良かったわ。 でもワクラバさんはそれをしていない。
どうして? 彼がクラゲで、自分の言葉を信じてはいなかったから? では、信じていない言葉をわざわざ言う理由は何?
(125) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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みんなを混乱させたかったから? いいえ、あれじゃあ混乱しやしない。 みんなでクラゲさんを探そうとしただけだもの。
そしてクラゲさんたちは、昨日名乗り出る意味がない。 そうよ、だってクラゲさん以外に投票してしまえば良かったのだもの。 そうしてから他を殺したって、大丈夫。 それからクラゲさんみんなで、「宇宙クラゲは退治しました」と言い張っても良かったはずよ。
[わたしは小さく首を傾ける。 おかしなことを言っているなら、きっと反論があるでしょう。]
…では結局のところ、ワクラバさんは「クラゲではない」のだわ。
(129) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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……だから。 わかっては、いるわ。
昨日は自分を除いて、残り5人。 シルクさん、猫さん、ワクラバさんにわたし自身。 それを除けは、残りは二人。
お兄さんとモナリザさん。 わたしは、どちら も、クラゲさん「ではない」と思えなかった。
ひょっとしたら……って思ってた。疑った、わ。
(130) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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でも。でも。 間違いかも知れないじゃない、違うかもしれないわ!! お兄さんも、今日は信じられたかも。
……だから、でも。 …、だから。
[ワクラバさんを見ていたわたしの視線が下を向く。 俯いたわたしの視界に、砕け散ったキャンディの色が映った。 粉々に、無残に砕けた甘いお菓子の残骸が。]
(131) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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… だから。 お兄さんには、投票してない。
したく、なかったの。
[分かってる。彼は宇宙クラゲだったのだろう。 であればこれは、裏切りかも。それでわたしが仲間と断じられても仕方ない。…でも。わたしは、嫌だったのだ。
キャンディを受け取ってくれた時の、彼の表情を覚えてる。>>2:175 我儘、と思われるかも知れない。浅はかとも。でもそれは、わたしの大切な思い出だった。*]
(132) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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/* 要素は白を取る派です
(-96) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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/* まあでも、これでワクラバさん黒だったらお手上げだがね。わはは!
(-97) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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[わたしは、少し緊張していた。 懸命に考えたつもりではあったけど、でも、責められたって仕方ない。
わたしは、お兄さんを疑っていて、それでもお兄さんを死なせたくはなかった。間違いかも知れないと思い続けていた。
彼が宇宙クラゲであったのなら。 わたしは、宇宙クラゲさんの肩を持っていたのでしょう。]
モナリザ、…さん?
[けれど、掛けられた声は予想外で。>>135 キャンディを希望する彼女の声に頷くわたしの声に、戸惑いが乗る。]
(136) 2020/09/04(Fri) 23時頃
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うん、いいよ。 まだちょっとだけ、残っているから。
[もう殆どは、床に砕けてしまったけど。 まだ幾つかのキャンディは、袋の中に残ってた。 ころころとそれを机の上に出してみせ、彼女に漸く目を向ける。]
どの色が好き? ……ねえ、あのね。モナリザさん。
わたし、お姉さんの部屋に一緒に来てくれて嬉しかったの。 とても嬉しかったの。…その、
[あの時、彼女は隣人の愛を示してくれた。>>4:36 それが心強かったこと、彼女にきちんと伝えられたのかしら? 嬉しかったこと。その気持ちはきちんと伝えたくて。]
だから、
(138) 2020/09/04(Fri) 23時頃
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嫌い、なんかじゃ、ないんだわ。
[ひょっとしたら、わたしは間違えてしまっているのかも知れない。 票を入れたと言っておきながら、偽善なのかも。 何が間違いで何が正しいのか自信などないままで。 わたしは祈りを込めるように、モナリザさんへとキャンディを差し出した。]
(139) 2020/09/04(Fri) 23時頃
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/* モナリザさんにときめくな……… っていうか、能力者丸出ししてお弁当どうぞ!のつもり、でしたが。灰狭めるだけで終わったような気もするな。
マジすまないやで…
(-116) 2020/09/04(Fri) 23時半頃
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/* 最高
(-117) 2020/09/04(Fri) 23時半頃
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ミタシュは、モナリザの声にびくんと体を揺らした。
2020/09/04(Fri) 23時半頃
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…… な、なに?
[わたしは、モナリザさんから身体を引いた。 聞き慣れたはずの、滑らかな合成音声。それなのに。 冷え冷えとした声色には、覚えがない。]
(146) 2020/09/04(Fri) 23時半頃
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………。 どうして、
[聞き慣れたはずの声が、聞き覚えのない声色を紡ぐ。 それをわたしは、呆然として聞いていた。
ああ、わたしは本当には分かってなかった。 宇宙クラゲは単純に犠牲者を喰らっただけじゃない。 彼らは宿主こそを、真っ先に喰らっていたのだ。]
(148) 2020/09/04(Fri) 23時半頃
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お姉さんは、食料、なんかじゃないわ。 っそれなら!!わたしを食べればよかったじゃない! わたしだって、脳くらいは生身なんだから!
[それだけじゃ食べごたえはなかった、のかも知れないけど。]
………。でも、そうなのね。 モナリザ…いいえ、クラゲさん。
宇宙クラゲさんたちは、みんな、そんな風だったの?
[気に掛かった。他のふたり、も。 やっぱり、あれは全て演技、だったのかと。]
(150) 2020/09/04(Fri) 23時半頃
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コータ、さん……そう。
[一番先に追い出されたやつ、と。 聞いて名を呼ぶ。いいえ、クラゲの名前ではないのだけれど。]
まったく、全然、元の人格もなかったの? お兄さんが、ずっと、優しかったの は……………
…… やっぱり、いいわ。
[聞くのが怖い。わたしは首を横に振った。]
(154) 2020/09/05(Sat) 00時頃
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………。ねえ、「モナリザさん」
今は貴方に聞こえないのかも知れないけど…… でも、聞いて。
あなたが宇宙クラゲさんに寄生されているなら、 わたしたちは今日、あなたを宇宙空間に追放するわ。 クラゲさんの目覚めない、氷の温度に閉じ込めて。
でも……でも、ひょっとしたら。 いつか、猫さんの研究が完成するかも。
モナリザさんと宇宙クラゲさん。 二人を二人に分かつことが、出来るように、なるのかも。
(155) 2020/09/05(Sat) 00時頃
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だから眠って待っていて。 わたし、きっと忘れないから。
[以前語られた、猫さんの夢。>>3:211 きっと文字通りの夢のような話だろう。 実際に出来るかどうかも分かりはしない、夢語り。
それでも、未来が繋がるのならそれは希望だ。 だからと言葉を繋いで、わたしは猫さんを見る。]
ねえ、猫さん。 だからそれまで……わたしを、助手にしてくれない?
[そう願った。*]
(156) 2020/09/05(Sat) 00時頃
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……そ、っか。
ありがとう、クラゲさん。
[その返答に。わたしは、いちど深く頭を下げた。>>158]
(163) 2020/09/05(Sat) 00時頃
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