278 冷たい校舎村8
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……紫織ちゃんっ!?
[ ベッドで寝転がっているだけじゃいられなくて、 ようやく千夏は布団を蹴り上げて、寝床から出る。 部屋の明かりをつけて、 夏美からのメールや留守電を確認する。
一酸化炭素中毒。 火事のほとんどの死因がそれだって、読んだことある。 ……火事に巻き込まれて? ううん。メールに死にますって書いてある。 ]
(+19) 2020/06/19(Fri) 18時頃
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[ どうしたらいいんだろう。 と千夏は思った。
メールをスクロールさせていけば、 病院に行くから!と夏美が宣言していた。 夏美の行動的なところが羨ましくて、 同時に……、ううん。 今はあんまり思わないかもしれない。 ]
(+20) 2020/06/19(Fri) 18時頃
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[ なにができるわけでもないけど、 千夏も紫織が搬送されたという病院へと、 赴くための身支度の準備を始める。* ]
(+21) 2020/06/19(Fri) 18時頃
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師範棋士 千早は、メモを貼った。
2020/06/19(Fri) 18時頃
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-- 現在/自宅 -- [ ばたばたと身支度をしていたら、 どうやら煩かったらしく、 焦ったような母が部屋の様子を見にきた。 何?と短く質問のあとに、じと見詰められる。 目が見れなくて、足元に視線を落とした。 ]
……紫織ちゃんが、 クラスメートがしんじゃいそう、で。
[ え?どういうこと?と母が言う。 千夏もよくわからない。どういうことなんだろう。 どうしてなんだろうね。 人間やめたくなっちゃったのかな。 と、紫織の精神世界でのことを思い返す。 ]
(+22) 2020/06/19(Fri) 22時頃
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[ しばし、沈黙。 口を先に開いたのは、母だった。 千夏に何もなくてよかった、って。 ]
そうだね、なにもなくてよかったよ。
[ あ。すこし冷たい言い方になった。 たぶん母は低血糖だとかを心配している。
そうだ、血糖値、測らないと。 思った瞬間におなかがすいたきがする。 ]
(+23) 2020/06/19(Fri) 22時頃
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病院、いってくる。 お母さんが私を心配なように、 私も紫織ちゃんが心配だから。
(+24) 2020/06/19(Fri) 22時頃
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[ お母さんは寝ててね、と千夏は言った。 困った顔をした後に、 母は部屋の前から寝室に帰っていく。
それから、千夏は全速力で血糖値を測って、 間食のための注射を打って、 あんまりおいしくないビスケットを頬張った。 クレープの暴力的な甘さが恋しい。 ]
(+25) 2020/06/19(Fri) 22時頃
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[ コートにマフラーを身に着けて、 (ハンガーに掛けたコートはなぜか落下!) (なんでかリップがポケットに入っていた!) 靴箱から長靴を探して履く。傘も持った。
靴箱に備え付けられた鏡には、 顔色の悪い千夏が写っている。 色をのせる暇はないな、とそのままに飛び出した。 のはいいけれど。すぐに戻ってくる。 ]
雪、降ってない!
[ 玄関に長靴を置きっぱなしにして、 スニーカーに履き替える。 ]
(+26) 2020/06/19(Fri) 22時頃
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[ 自転車に乗って、 病院への道を漕ぎ出す。
千夏も知っている道だ。* ]
(+27) 2020/06/19(Fri) 22時頃
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[ なんで謝るんだろう。>>1:1 ]
(+28) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ 謝るくらいなら死ぬのをやめてほしい。
何で死ぬかって、原因の一言も書かずに 謝って、死のうとして、世界を作って。 そして追い出すのだから、我儘。
あと「許してくれなくてもいい」なんて まるで許すのが当然みたいな言い方 ぜんぜん気に食わないな。って思う。 ]
(+29) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ でも、郁斗は怒っていなかった。 怒る気にもなれなかった。 怒ったら死にたくなりそうだ。
あの時みたいに泣き叫ぶ気にもなれなかった。 いっくんは大人になりました。 まだ未成年だけどね。
騒いで正気を失う気にもなれない。 というか、寝起きなんで。だるいな。 全部夢だったらな。夢かも知れないな。 ]
(+30) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ そんな訳ないだろうな。 夢だったらもっと楽しいはずです。
あーちゃんも居ないし、 みんなも、まだ、死んでないし。 ]
(+31) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ 指の下で文字がひかっている。 ]
(+32) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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── 現在:病院 ──
[ 兄の運転する車のドアを開ければ、 冷たい空気が流れ込んでくる。 一歩踏み出して、その中へ体を晒す。 ]
……帰るときまた電話する。 まー、寝てたら、タクシーで帰る。
[ わざわざ窓を開けて話を聞く兄は いっつも無視したり無下に扱ったりするのに 郁斗に対して結構過保護。かもしれない。
負い目だね。負い目だよ。 そーゆーとこ、ほんと親子だよね。 前言ってしばかれたので、言わないけど。 ]
(+33) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ 寒い。外は寒い。 というか、病院に着いてしまって怖かった。 開いたシャツの首元を手繰り寄せる。
ダルそうなふりして心配そうな運転手が お前それ大丈夫か。って平坦に聞くから 素直に兄の視線を追ってしまった。
手首に痣がある。あーあ。 ]
はは……なんだろ…、 なんだろーね……。
[ 無数の手。小さな手に触れられる感覚。 臭い。音。……を、思い出す。笑う。 ]
(+34) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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あれはあーちゃんなんでしょうか。 あーちゃんじゃなければ、なんなのでしょうか。
(+35) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ 顔色を悪くした郁斗を見て、それに対して、 兄はマフラーを投げつけてた。 寒いなら使えば。って、ぶっきら棒に言う。
かわいくねーツンデレ(笑)って、思う。 嘘。カッコワライつける元気は、無い。 ]
ありがとー。 ……じゃあ、行ってくる。
[ そう宣言したくせに動かないでいる弟の背を 兄はぞんざいに、勇気づけるように叩いた。 ]
(+36) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ 正気になったら。 色んなことを考えてしまうので、嫌だ。 ]
(+37) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ あーちゃんのこと。ワタリさんのこと。 あと、あーちゃんのこと。
そういう、どうしようもないことを考えても、 苦しくなるだけだ。過去は変えられない。 事実は嘘にならない。 ]
(+38) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ 喜多仲家は矯正された。そこそこ幸せな家族に。 兄も母も父も、郁斗を大事にしてくれる。 喧嘩もするけど、ちゃんと気にかけてくれる。 なりました。普通の家族に。
なんで。って、あーちゃんのおかげだよ。 あーちゃんが死んだおかげ。だよ。
あーちゃんが死んで郁斗が病んで、 三人が何とか繋ぎとめようとしたからだ。 あーちゃんが死ななければ。 こんなに幸せになることはなかった。きっと。 ]
(+39) 2020/06/19(Fri) 23時頃
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[ あーちゃんはクソみたいな親に殺された癖に それをダシに幸せになっていいのか。って、 そういうことを考えると、 目の前が真っ暗になる。眩暈がする。
そのくせ、今だって 兄ちゃん優しーやったじゃん(笑)なんて この結果を喜ぶ自分が居るので、笑える。
あーちゃんが死んだことによって、 いっくんも全部全部不幸せになれればよかった。 でも違った。幸せになってしまった。 ]
(+40) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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[ 授業中眠くなったときとか、 つまんねー講演を聞いているときとか、 ふとした瞬間に正気に戻って考えて、 その度に死にたくなってしまう。
どうせその数十分後にはそんなこと忘れて 皆とバカやって笑ってるっていうのに。
バカやって笑ってる自分を冷静に見て 自己嫌悪して、忘れて笑って、 みたいなエンドレスはしたくないです。
どーせなら笑ってたい。笑っていたい。 ]
(+41) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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[ 持てるもの全部持って抱えて、 正気になりたくない。って思う。 可笑しいですか。
可笑しくても良い。……って、思ってた。 ]
(+42) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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あれはあーちゃんなんでしょうか。 あーちゃんじゃなければ、なんなのでしょうか。
夢の中のあーちゃんは いっくんがあーちゃんだって言うから、>>2:245 あーちゃんです。そういうことになりました。
チビだったり、同い年たっだり、 たまーに全然人間じゃなかったりしても、 夢の主があーちゃんって言い張るのですから、 あーちゃんはあーちゃんでした。
いっくんにはあーちゃんだって分かっていました。
(+43) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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でも、本当は。 あーちゃんなんて居ないのかもしれません。
居たけど、たしかに現実に居たけど、 もう、いっくんの傍には居ないのかもしれません。 じゃあ。本物のあーちゃんは 一体全体、どこに行ったんだろう。
(+44) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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……天国だったらいいなあ。
(+45) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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ハア?叩かなくてもよくねえ? チョー酷いんですけど。 寝ててもマジ叩き起こすから。
[ 寝起きにしたってテンションの低い郁斗は それでもなんとか、病院へ進んでいく。
もう嫌いじゃなくって、 もう嫌われてもいない兄を背にして。 ]*
(+46) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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[ え。てか、夜中の病院って怖くねえ?(笑) フツーに怖いんですけどぉ!! ]
(+47) 2020/06/20(Sat) 00時頃
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── 病院前/自動販売機の傍 ──
[ ホラーが苦手な喜多仲郁斗は 病院の前、および自動販売機の傍で、 コーンスープを握ってぼんやり立ってる。 ]
あーさむぅ……。
[ この寒さは確実に夢じゃない。 って心の中で断言して。
雪の降っていない世界で、待ってる。 ]*
(+48) 2020/06/20(Sat) 00時頃
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