279 宇宙(そら)を往くサルバシオン
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― 回想・夜が明ける前の談話室 ―
[ モナリザ>>35の説明を受け、彼女の疑問に合点がいく。 前提>>4:177が知らないからこその問いは、状況を情報から導く彼女に見合うものだ。 つまり、"そこ"にモナリザ自身も該当することを彼女は知らない。触れる勇気が出ないまま、頷く。]
わかっ 、た。
[ 叶うなら、言葉を尽くしたかった。 結論はまだ出ていない。それはモナリザと交わした言葉もまた、少ないからだ。 しかし四桁の数字は既に終わりを示しつつある。己の"足"では、もう進まねば間に合わない。 ――今日もまた、終わりの夜が訪れる。]
はな し、 を しよ、 う。
[ 明日の話をする。数日前までなら己と同じくらい軽かった言葉が、今は腰から繋がる枷より重かった。 それでも願うように頷きを返し、窓に手をつく。押し出した勢いで、皆のいる部屋の外へと前進を始めた。]
(+0) 2020/09/03(Thu) 20時半頃
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[ 無言で佇むアーサー>>4:175がいた。 モナリザ>>36は、アーサーに話しかけていた。
浮きかけた手を戻すトルドウィン>>4:171の姿があった。 手の先にいたミタシュ>>17は、トルドウィンを見送った。
周囲を見ているワクラバ>>4:170が、緩く瞬いていた。
すべてが瞳の中を流れて行く。 留まることは、できない。]
(+1) 2020/09/03(Thu) 20時半頃
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[ これまで>>0:179もそうだったことが、 これからもそうであるというだけの話だ。 視線はいつも下を向き、先を行く皆の背を見る。 止まることを助けてくれた腕>>0:188も、もうない。
誰かの隣人であることが許されないのは、 既に理解していたことだった。
ただひとつ、 ラックの上にあるコーヒーにだけ手を伸ばして部屋を出た。 何か言おうと思って振り返ったが、 狭い喉に言葉が押し寄せて、何ひとつ音にできなかった。]*
(+2) 2020/09/03(Thu) 21時頃
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[ 約束を交わした。
ひとつ。周りに優しくすること。 ひとつ。命を大切にすること。 ひとつ。ながく、誰かの傍にいないこと。
はじまりの日から数年が過ぎた。 見送りに並んだ皆の頭には、己に似た白が目立っていた。]
(+3) 2020/09/03(Thu) 21時頃
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[ 優しさの中で生きている。]
(+4) 2020/09/03(Thu) 21時頃
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― 回想・夜が訪れる前の自室 ―
[ ひとつ目のドアを開いた。スライドした先の空間に身体を滑り込ませる。 ふたつ目のドアを開けることはせず、壁へ背を押し当てるように腕を弾いた。背後のジェットパックが軋むような音を立てる。 ひとつ目のドアが閉じて廊下の光が遮られても、手元を見失うことはない>>1:124。]
……。
[ フェイスカバーを外した。 辺りの空気が微かに濁り、甘酸っぱい匂いが広がった……はずだ。己にとっては空気が晴れ、匂いが薄まるだけの行為。 縁の汚れたカップに視線を落とす。]
たし か、 に うす 、い ね。
[ 口に含んだそれは、一絞りの蜜の甘さが際立っていた。コーヒー本来の苦味がどこか遠くに感じる。 確かに飲みやすくはあると、数度、カップを傾けた。]
(+5) 2020/09/03(Thu) 22時頃
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[ 蜜を持っていなかったら、どうしてと問えただろう。 淹れたコーヒーがとびきり濃かったら、反応の多寡が理由になったかもしれない。 しかし、どちらもそうではなかった。
だからトルドウィン>>4:150に問われた時、他の誰かを理由にすることしかできなかった>>4:161。 彼の閉じられた目>>4:167を思い、己もまた目を閉じた。 その傍らにはやはり、小柄な少女>>1:164の姿が見える。]
…… ぼく、 は、 はなれた く なかっ、 た よ。
[ 小さな空間に溢れたのは、誰にも届くことのない思いだ。
家族>>1:95だった。 形も、知識も、何もかも。多くのことを教えてくれた。 何もできない無力な己だけど、このまま研究が進んだら何か力になれるかもしれないと思っていた。
なりたいと思っていた――なりたかった。]
(+6) 2020/09/03(Thu) 22時頃
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……。
[ 無言が満ちる。 少女を信じると言った時の表情>>4:137を思い、終ぞ伸ばしきられることのなかった黒い腕を思った。
…――大切な者の傍にいないのは、 そうできない理由があるからだ。
あの時、己はそう、思ったのだ。]
(+7) 2020/09/03(Thu) 22時頃
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[ コータと話して、 コータがコータのまま、コータでなくなったことを知った。 その上で、境界線が曖昧であるとも思った>>3:207。
宇宙クラゲは狡猾なのだと言う。 意識は完全に乗っ取られ、元には戻らないらしい。 先人たちが鳴らす警鐘を疑うつもりは欠片もない。
――託されたこと>>3:202が、ある。 ――溢れた無念>>3:205があった。 答えが出た後のことだ。 あの時、彼を以前のコータだと信じる者はいなかった。
狡猾な宇宙クラゲの偽装だろう。それで済む話だ。 けれど、もしも。 もしも、すべてを奪われた上で、元の人格が僅かでも宇宙クラゲ自身に影響を及ぼすとするのなら。
理由>>+7は、理由たり得るはずだ。]
(+8) 2020/09/03(Thu) 22時頃
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[ それを誰か>>1:164の前で口にすることは、 ……どうしても、できなかったけれど。
今もそれが真実だなんて半分も信じていない。 それでも新たに生まれた疑念>>4:169は、確かに空っぽの胸へ巣食っている。
いつの間にか、カップは空になっていた。 無言でふたつ目の扉を開くと、重力のない世界へ戻った。 五度目のコーヒーは、甘くて苦い。]*
(+9) 2020/09/03(Thu) 22時頃
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[ 誰か>>4:164のくれた水色の方が、甘いと思った。]*
(+10) 2020/09/03(Thu) 22時頃
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― 回想・夜の迫る自室 ―
[ トルドウィンの言う、ミタシュの強さを己は知らない。 それが宇宙クラゲすら圧倒するものなのか、あるいは限られた未来をこじ開けられるようなものなのか。 彼女のまっすぐな優しさを信じると決めた以上、今、それ以上を知る時間はなかったし、"強いこと"と"傍にいないこと"が己の中では上手く繋がらなかった。]
ふ、う。
[ 外部作業服を流用した装備を規定の位置に固定すると、内側からずるりと身体を抜き落とす。のっぺりとした白が宙空へと躍り出た。 身体には何もなかった。頭の先ほど濃く、足の先ほど薄い。 作業服の縁を蹴り、モニターの前へ向かった。]
……。
[ 無機質に並ぶ名前のひとつに触れる。 結局、正しい音を紡ぐことはできなかったなと思った。 そしてどんな未来へ転ぶにしろ、もう彼の前で彼の名を呼ぶことはできないのだろう、とも。
選択を終えた指を離し、宙へ身を投げ出す。 白に似た髪が、視界の端で揺らめいていた。]
(+11) 2020/09/04(Fri) 06時半頃
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[ 小惑星SIL33999222上のガスに含まれる不明な構成要素>>1:123の特性が分かったのは、研究から数年が経ってからのことだった。
はじまりは、一本の白い髪だった。 ここにいる誰よりも若い研究員は、己によく絵の描かれた本を見せてくれたヒトだった>>2:200。]
『 可燃性、なし。支燃性、極微弱。 毒性、極々微弱。構成要素、不明物質数点。
――不明物質の一部に、 細胞の分裂暴走を引き起こす成分の含有を確認。
小惑星SIL33999222内での調査を一時休止する。』
[ 数年を共にした研究員たちの被害は軽微だった。 結果に対する必要摂取量が膨大すぎるのだと言う。 少なくとも数年単位、一定以上の濃度を恒常的に摂取してはじめて影響が出るらしい。 だから安心していいと笑ってくれた”たいちょう”たちは、透明な壁の向こうにいた。
――あの時から、己と誰かの間には一枚の隔りがある。]
(+12) 2020/09/04(Fri) 06時半頃
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[ >>1:48害と呼ぶにはあまりにも脆弱で、 だからこそ何かへ役立てることもできないまま。 僅かに不快を与えるだけの、意味もない霞のようなもの。
>>4:98”かたち”が少しでも違えば、隣人になりえなかった。
我々は、そういう存在だ。]
(+13) 2020/09/04(Fri) 06時半頃
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[ ……ということになっている。今のところは。 浮遊種は発見が遅れたこともあり、未だ研究途中の種族。 それが正しいかどうかを断言することは、誰にもできない。
それでも、研究に協力していた同胞の中には、 形を手放して星(はは)の虚(はら)にかえる者もいた。 己のように形を残す者もいたが、以前より姿はどこか朧だ。
し ぬ 形を失うのは嫌だった。 でも、皆に迷惑をかけたくもなかった。
重力下での生活実験を提案したのは己で、 それを受け入れて準備を整えてくれたのが彼らだ。 随分と無茶を言ったと思う。
それなのに課せられたのは、ただ、生きること>>0:175。 元気でいてくれたらそれでいいと、皆は言う。 己に似た白が僅かに増えた頭で、そんなことを言うのだ。 研究者なのに。しっかりしてよ。]
(+14) 2020/09/04(Fri) 06時半頃
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[ 新しい研究所は、辺境の星の端にある。 常駐する研究員は新しく配属される己だけだ。 実験という名目上、経過報告、観察の目はあるが、 基本的にこれからはひとりで生きていかねばならなくなる。
>>0:180己を知る為に母星を旅立った。 今は、もっと自分のことを知りたいと思う。 誰かの隣人となれる道を、探す為に。 いつか彼ら>>1:95の元へ、帰る為に。
――宇宙船サルバシオン。 これは俯くことができず、前にしか進めない己にとって、 救いの旅路なのだ。]
(+15) 2020/09/04(Fri) 07時頃
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[ 優しさの中で生きていた。]*
(+16) 2020/09/04(Fri) 07時頃
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― 回想・終わりの夜に ―
[ ――嗚呼、己は死ぬのだ、と。
理解した瞬間、足下から自壊が始まった。 ぐずぐずと崩れる形は、やがて肉色のガスへ戻っていく。 もし喰らった者が未だその場にいるのなら、身体によっては痺れを覚えたかもしれない。 意味のない者にとっては、ただ視界を阻害するだけの靄でしかないけれど。]
……。
[ 死にたくないなあと思った。 思ったから口にするつもりだったのに、喉からはガスの漏れる音と甘酸っぱい匂いしかしなかった。 拙い口は、自壊する前に役立たずになってしまったようだ。 言葉も、悲鳴も、溢れない。]
(+17) 2020/09/04(Fri) 12時頃
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[ 小さく呟かれた夢>>3:211へ、 あの時>>1:128と同じ根拠のないいつかを贈りたかった。
食べることが特別好きな訳ではないけれど、 あのキャンディ>>3:18はまた食べたいと思っていたことを 伝えたかった。
感情を得難いものと言っていた声>>3:160に、 己が見つけた彼女の感情の欠片を教えたかった。 “またあした”>>35だって、叶えたかった。
己を地に縛りつけず>>2:40に 本人へ直接命の色を尋ねてみたかったし、
透明なドームの向こう、 響く電子音>>1:26と言葉を交わしてみたかった。
本当は厚い隔たりを介さずに抱きしめたかったし>>3:93、
パイセンとの話>>3:147をもっと聞きたかった。]
(+18) 2020/09/04(Fri) 12時頃
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[ きっと他愛なく差し出してくれた腕>>0:188が、 他者との肉体的接触に及び腰になっていた己にとって どんなに助けになったかを話したかった。
何より、あの時のこころ>>4:118を、 つめたいそとがわ>>4:129の意味を、 聞いて欲しかった。
他にも、まだ、まだ、まだ。もっと。 やりたいことがたくさんあるのに、 時間は誰よりも厳格で、命はどうしようもなく有限だ。
崩れ行く耳元に、呟き>>4:142がひとつ残り続けている。]
(+19) 2020/09/04(Fri) 12時頃
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[ 自壊は足下から徐々に上へ広がっていく。 萎びた足が、模した腹が――ぽっかりと欠落した胸の内が。 心臓も肺もないそこには、隙間を埋めるように肉色のガスが満ちている。
五本の指が消えて、傷ひとつない肩が失われた。 先に役目を終えた喉元は仕組みを理解する前に成形されたのか、通り道がひどく細く、構造もやや煩雑だ。 満足に震わせることのできないそこから外に飛び出し損ねた言葉は、いつだって頭の中を巡っている。
薄い口元も、頼りない鼻筋も、燻んだ瞳も、緩やかな額も。 順番に宙へとかえっていく。 血は一滴も流れなかった。 代わりに、やがて消える肉色のガスがその場を覆っていく。
もう、時間はほとんど残っていなかった。 耳に残った呟きが消えてしまう前に、見えなくなってしまった両手で掬い上げる。]
(+20) 2020/09/04(Fri) 12時頃
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[ クラゲにとって冷たくて外側にある声。 それは、相容れないと断じた己>>3:196にとっては、 誰よりも近くにある、あたたかい声だった。
出航から数日、ようやく皆に声をかけられた己>>0:181は、 この場所からひどく浮いていただろう。 地につかない足はひとところに留まれず、 皆の視線から少し外れた場所にいる。
細められた瞳をおもう。 見開かれた瞳をおもう。
彼は、この中の誰よりも目線の近いヒト>>67だった。]
(+21) 2020/09/04(Fri) 12時頃
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[ もっと早く、見ていることに気づけたら。 もっと早く、掌に指を滑らせていたら。 横顔>>0:179の前で、立ち止まることができていたら。
頭に残ったままの言葉を、ひとつでも伝えられただろうか。
聞きたいことがたくさんあった。 知りたいこともたくさんあった。
それは、彼が何か隠したがっていること>>3:218よりも、
食事は取るのかだったり、 自室での過ごし方だったり、 これまで見てきた星の話だったり、 これから目指す先の話だったり、
今、話せないことの方が多かったように思う。]
(+22) 2020/09/04(Fri) 12時頃
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( ぼく、 は、 )
[ みててと言ったのに、みてもらえなくなるなあと思った。 その欠落は、ぽっかり空いた胸より寂しいことのように感じられた。
信じる、と言えたらいいと思っていた。 あの目がみてくれた己を知りたいと思っていた。
すべてが手遅れで、取り返しのつかない場所にいる。]
( き み 、 と )
[ 彼に届くのは、理由の通る事象ばかりで、 心や感情を乗せた言葉には沈黙が返ってくる>>4:135。 だからもしかしたら、 彼はまた難しいと口にするかもしれないけれど、 あの時>>4:134のように否定しないでくれればいいと思う。]
(+23) 2020/09/04(Fri) 12時頃
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( もう すこ、 し 、 )
( いっ しょ 、 に )
( いたかっ た、 の、 )
( 、 か なあ )
[ 彼を選ばない理由には、たぶん、情も含まれていた。 もちろんそれだけではないけれど、
それは確かに心であったと、信じている。]
(+24) 2020/09/04(Fri) 12時半頃
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[もう匂いも音もしなかったし、何も見えなくなっていた。 頭の先まで崩れようとする形が、拍動する脳を晒す。
重力下、いくら枷を下げているとはいえ、この身は決して反転することはなかったし、頭を伏せることはできなかった。 身体は頭の先ほど濃く、足の先ほど薄い。 この身を作るガスに浮力があるのなら、どこよりも高く在る頭に探し物がある可能性は、何かのきっかけで分かってもおかしくないことだったのかもしれない。
最初から、ずっと。 大事なものはすべて、頭の中にあったのだ。]
(+25) 2020/09/04(Fri) 12時半頃
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( とも、 ―― )
( な ――… )
( …… … )
[ ――そして、命の形は失われた。]*
(+26) 2020/09/04(Fri) 12時半頃
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― シルクの部屋 ―
[ 翌朝、清掃ロボット>>52が取り除いたのは、 滲む肉色の靄と残った甘酸っぱい匂いくらいだろう。
荷物を整頓しようとしたとしても、部屋には物品がない。 唯一の持ち物と言える遮断性抜群の装備と いくつかの空のカップだけが、 部屋の隅に固定されたまま佇んでいた。]
(+27) 2020/09/04(Fri) 12時半頃
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[ >>64返事は当たり前のようにない。]
[ >>65返事は当たり前のようにない。]
[ >>66大丈夫と問う声はない。]
[ >>67顔を覗き込むことはできない。]
[ >>68触れることも、見下ろすことも許されない。]
[ >>69去り行く背を、何も言わずに見送った。]**
(+28) 2020/09/04(Fri) 12時半頃
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[宿主ごと冷凍ポッドに入れられて、宇宙に放り出されて。 クラゲの活動が停止するまで、少しの時間があった。 宿主の体は既に冷たい。
ポッド内の冷却処理が始まってほどなくして、寒さに弱いトルドヴィンの息は絶えた。元より意識はほぼ奪われていたため、きっとその瞬間は、深い眠りに落ちるようなものだった。
彼の意志を示すものは、喉元の傷>>4:178以外なにひとつ残っていない。 ここにいるのは一匹の凍えるクラゲだけだ。
救うべきものなど、ここにはいない。]
(+29) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[トルドヴィンは幸せだっただろうか。>>2:118
この船に乗り込んだ当初は、全く幸せではなかった。 最愛の女王を、『母』を喪い、後を追うことも赦されず。 生きる意味も意義も失ったまま、窓の外ばかり見て過ごしていた。 談話室に顔を出していたのは、他の乗客――他の星から来た宇宙人達が、どのように生きているのか知ろうと思ったからだ。
自分の中に答えが見出せないならば、そうする他はない。]
(+30) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[様々な人がいた。
大学教授を名乗る気さくな女と、科学者だと主張する尊大な猫がいた。
機械の音をさせる無口な男と、朧な声で懸命に関わりを求める浮遊種がいた。
主を亡くしたヒューマノイドと、大切な人との別れを強いられた知性体がいた。
先輩を慕う調子のいい技師がいた。 電子音で話すゼリー状の生き物がいた。
故郷の味を、無邪気に喜んでくれた少女がいた。
このまま旅が続いていれば、あるいは。 遺伝子に刻まれた習性と忠誠だけで生きていた男にも、新たな理由が見つけられたのかもしれない。
もしも果たされていたら、それは多分幸せなことだったのだろう。]
(+31) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[クラゲに寄生された時、トルドヴィンには意識があった。 だから、教え込まれた通り>>0:38に自らの首を斬り落とそうとした。 もっと武器らしい武器があれば、クラゲは一匹減っていたのかもしれない。 結果としてそれは失敗し、トルドヴィンは意識と体を奪われ、以降はクラゲの触手からの刺激に反応を返すだけとなった。
そこに彼自身の意思はなにひとつ存在しない。]
(+32) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[宇宙クラゲは記憶と思考パターンを読み取って行動する。 不自然でないように。中身が変わっていることを悟られないために。
トルドヴィンはクラゲにとって模倣しやすい相手だった。 情緒の変動が少なく、行動原理が単純だからだ。 だから、クラゲに寄生されていようといまいと。 トルドヴィンの行動は結果的にあまり変わらなかった。
敵への共感に対する過剰な拒絶反応も。>>4:110 敵を生かすという言葉の受け取り方も。>>4:113
宿主の思想を、習性を、本能を、クラゲが忠実に真似ただけだ。
それはクラゲを探すという状況において有効な対応とは言えず、結果としてクラゲは今まさに触手の先から凍りつつある。 そのあたり、このクラゲはやや狡猾さに欠けるところがあった。]
(+33) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[記憶を読み取る。意識を奪う。
それは細かく言えば、触手を脳や神経に沿わせて張り巡らせ、電気信号を送って体を動かしたり、宿主の感覚器を介して情報を受け取ったりすることだ。必要ならばより宿主の思考に近付けるため、"考えさせる"こともある。
それらは宿主が生きていなければ行えない。 クラゲが与えた信号に、返ってくるものがなければならない。
そして、返ってくるということは。
クラゲ自身も、触手を通して何かを受け取ってしまう可能性があるということだ。>>+8]
(+34) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[このクラゲが意図せず宿主から吸い上げてしまったのは、『母』への思慕だった。 それは最初、『母』に会いたい、食べてみたいという欲求となって表れた。 勿論トルドヴィンの『母』――Vespaの女王は冷凍追放刑に処されているため、クラゲには手出しができない。
その時はまだ、正常な判断ができていた。
おかしくなったのは、彼女に触れられてからだ。>>3:34]
(+35) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[ミタシュの手が頭に触れた時、対応に迷ったクラゲは宿主に"考えさせた"。 思考させられたトルドヴィンの脳は、その状況から『母』との記憶を思い出した。 それがいけなかった。
トルドヴィンの種族は、生まれた時から役割が決まっている。体のつくりも、役割を全うするためだけに特化している。 彼に与えられた役割は『女王の側近』。 盾となるための硬い外殻と、普段は隠された殺傷力の高い大顎を備えた大柄な個体群。 そして、女王の命令を忠実に遂行するための仕組みがひとつ。
自分を産んだ女王――『母』を思う時、彼等の脳は強力な鎮痛作用と多幸感をもたらす神経伝達物質を分泌するようにできている。 トルドヴィンが躊躇せず自らの首に刃を向けたのも、この物質によるところだ。
クラゲはあの時>>*3:16、引きずり出された記憶によって分泌されたそれを――脳内麻薬に近しいそれを、じかに受け取ってしまった。]
(+36) 2020/09/04(Fri) 20時半頃
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[トルドヴィンがクラゲに寄生されていなければ、別に何も起こらなかった。 彼女の勇敢な申し出に跪き、謝意を示すことはしただろう。>>2:191 その小さな手>>3:15に、『母』との幸せな記憶を思い出しもしただろう。
だからといって彼がミタシュに『母』を重ねることはない。 その記憶がどれほどの歓喜と恍惚に満ちていたとしても、彼女とは無関係だ。
ミタシュを気にかけることはあれど、それは彼女の勇気や真摯さに対する好ましさと、少しの庇護欲によるものだと、トルドヴィンならば自覚できていたはずだった。]
(+37) 2020/09/04(Fri) 20時半頃
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[しかし、クラゲにそんな区別はつかなかった。 突然襲ってきた過剰な幸福感に、クラゲは仰天し、混乱した。
クラゲにとっての幸せは、食べることと殖えることだ。 そのどちらにも結びつかない行動がもたらしたそれをどこに置いたらいいのか、クラゲにはわからなかった。わからなかったので、わからないまま、クラゲの無意識は目の前にいた少女にそれを紐づけた。
それから、クラゲは彼女を見ていた。 そうしていると、あの強烈な多幸感の残滓が感じられた。]
(+38) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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(うれしい、と おもった。)
[彼女の姿を見ただけで、無意識に触角が跳ねた>>4:159。
彼女と話したいと思った。 触れたいと思った。>>4:171 もう一度、触れてほしいと思った。
そして、たぶん、
――食べたいとも、思っていた。]
(+39) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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(わからない。)
(おれには、……わたしには、これがなんなのかわからない。)
[伸ばした手が落ちた>>4:171のは、わからなかったからだ。 どうするべきか。 どう、したいのか。
"気に入っているのだろう"と、同胞は言った。 そうなのだろうか。わからない。]
(+40) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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(触れていたら、わかったのだろうか。)
(食べていたら、わかったのだろうか。)
[彼女に票を入れなかったのは、追放されたら困るからだ。 彼女を襲わなかったのは、一度きりにしたくなかったからだ。
彼女のためではない、どこまでも自分のため。 その証拠に、ヘリンを喰えば少女が悲しむだろうことすら、このクラゲは考慮しなかった。 彼女を食べることは躊躇しても、彼女のために食べることをやめようとはしなかった。
だから、今クラゲがここにいることは、正しい。 クラゲは、隣人にはなりえない生き物だ。]
(+41) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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(……わからない、わからなかった。 けれど もういちど、)
(……あのとき。もしも、てを、)
(…………、)
(……。)
[傘の中心まで凍りついて、クラゲの思考はそこで停止した。]
(+42) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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[蜂の骸と冷凍クラゲを乗せて、ポッドは漂っていく。
あてもない、果てもない旅だ。
救うべきものなど、ここにはいない。
――だから、ここに救いは必要ない。**]
(+43) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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[ 冷凍庫に遠く小さな太陽からの風が吹き付けると、ほんのわずかな間だけ温度が上がる。 そのせいか、やめていた思考のシナプスがすこしだけ弾けて、刹那の夢を見て消えた。]
(+44) 2020/09/05(Sat) 00時頃
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[ プラヌラの夢。生活用水配管にしのばせた、自分の分身。 もしも孵り、もしも仲間たちが船を占領し、もしも港湾検疫をごまかして、もしも惑星や衛星の下水と繋がれば。
ハードルは高く、それほどの綱渡りであることは仲間には打ち明けられなかったけれど――]
(+45) 2020/09/05(Sat) 00時頃
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[ 故郷を飛び出し、ボロのシャトルに忍び込んで街に出たころの思い出。廃熱設備のぬくもりに誘われて居眠りし、車屋のオヤジに拾われた。痩せて生意気で無学な小僧だったが、もしも金が溜まって、もしも技術が身に付き、もしもちょうどいい恒星と宇宙空間があれば――。]
(+46) 2020/09/05(Sat) 00時頃
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