169 きみがおとなになるまえに
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[それから、いつものように表へ出て、朱色の着物を探す。 舞台の上からよく見える朱色。 今日も見に来てくれていることを、知っている。]
芙蓉。 あ、のね、
[呼びかけながら、いざというこんなときに限って、先の音は臆病なまま出てこず、惑う。]
(162) 2015/09/22(Tue) 22時半頃
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双子 夕顔は、メモを貼った。
2015/09/22(Tue) 23時頃
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[ 座ることは、なく。 まだ"早い"空を、瞳を細めて見て。 先生からマリアの話を聞いて、思うこと。 ――きっと、オーレリアとは似ていません。
だって、オーレリアは生きているものが好きです。 鳥の囀り、昇っていく陽、夜に煌めく、月と星々。 月明かりに照らされた夜道は心躍り、 オーレリアの瞳とは、また別の灰の空。 そこから降る雨は、ぽつ、ぽつと音楽を奏でるし、 そんな雨粒を受けて育つ草木を見るのだって、 オーレリアは好きなのです。
どれもこれも。 自分が、自分らしく生きている証に見えるから。 ]
(163) 2015/09/22(Tue) 23時頃
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夕陽、次は…わたしも並んで眺めたいな。 ――ねえ、先生。
[ 空を、見上げたまま。小さく星が見えて。 生きるものに思いを馳せながら、ぽつんと、呟き。 ]
出ていってしまおう、なんて。 もうそんなこと、言っちゃ駄目よ。 …いくら死んでしまうものが、好きだったとしても。 置いていかれるのは、やっぱり…寂しいもの。
[ 誰が、とは、言いませんでした。 もしかしたら、誰か――Mariaは、 そうは思わないかも、しれないけれど。 でも、オーレリアは寂しいから、なんて。
重ねられるやくそく。 きっとこれからも、――増えていくのでしょう。 ]
(164) 2015/09/22(Tue) 23時頃
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[ ―――そして、陽が傾くまで、其処に居て。 姿勢を正して、ゆるり、先生が立つのを待ちました。 危ない様なら、手も貸して。
墓碑の前。いつも通り、見上げる姿は紳士のもの。 先程見えた少年の色はもう、無く。 ずるいおとなの、そう、 慇懃無礼な姿が、そこにはありました。
ああ、何故でしょうか。ようやく、わかった気がします。 オーレリアの前に居る、この外の先生だって、 あの教会で見た時の様なものでは無くて。 お屋敷で何時も見る姿と同じく、 ちゃんと"先生"だということ。
そして、どの先生だって。 オーレリアを嫌いなんてこと、ないって。 ]
(165) 2015/09/22(Tue) 23時頃
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[ 嫌いになんてならない、大好きな。 オーレリアにとって、ひとりだけの紳士からのお誘い。 今度は断りなんて、しません。 ]
―――喜んで。先生。 今日はわたし、フォンダンショコラが食べたいわ。
[ ただお腹が満たされるものより、 もっとあまいものが食べたいの。 そうねだれるのは、きっとおんなのこの特権です。 ねえ、良いでしょう?――なんて。笑ってみせて、 ]
(166) 2015/09/22(Tue) 23時頃
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[ スカートをつまんで、淑女の礼。 ]*
(167) 2015/09/22(Tue) 23時頃
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― キネーン・中央 ―
[ シアターの明かりを遠くに見つめながら、 先生に手を引かれて、中央へ。
ショーの公演もあるのでしょうか。 それとも、オーレリア達の様に、 外食目当ての人もいるのでしょうか。 人も、ずっと多くなってきた気がします。
ぱちん。灰色は瞬いて。 全てを閉じ込めるこどもの瞳は、黄と、青。 異なる両の瞳を持つ姿>>151と――そう、 かわいらしい"ともだち"を、 雑踏の中でもきちんと、見つけました。 ]
(168) 2015/09/22(Tue) 23時頃
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―――先生!
[ かるく。手を引っ張って。 ともだちがいるよ、なんて示してしまうのは、 きっと、ご愛嬌。
歌った時の様に、良く通るオーレリアの声は。 もしかしたら、少し離れたふたりにも、 届いたかもしれません。 ]
(169) 2015/09/22(Tue) 23時頃
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/* しょーのこうえんってずつうがいたいみたいな
夕顔たちにも会いたかったけど間に合わないか なあ と はなしたかった…
(-39) 2015/09/22(Tue) 23時頃
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― ある日のキネーン・ショー ―
[ロビーの受付に肘をつく振袖の女姿は、そこそこ、噂になった。 服も口調もそれなりに目立つ。
夕顔がここで歌い続けるたび、その噂は少しずつ広がっていたのだろう。 それが「どれくらい」か、なんていうのは職を失って放浪してる女にはわからない。
世界がどれだけ残酷でも、女は自分主義だった。]
(170) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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[その日もチケットを貰って、 今日は、そこそこ良い席を貰った。
今日はどんな歌を歌ってくれるだろうか。
久々に、知ってる歌が聞きたかった。 自分もすこしだけ真似をしながら、 抱えた手鞠を頃がしたかったから。
でも、その日は少し違ったのだ。]
――…?
[ステージの上から、そっと、花の名が告げられる。 それはまちがいなく花の名であり、女の名前。>>162
どうしたの、と口だけあけて喋ってみた。 流石に、舞台の子の邪魔をするほど無粋ではない。]
(171) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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[それでも。
聞かないわけには、いかない気がして。]*
(172) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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好き。雨のにおいがすきよ なんだか、わくわくするの 何かがはじまりそうで
[ 雨は好きかと問う声>>103に、屈託無く答える。 きらきらと、期待を瞳に宿して、 あ、あ、あ、とあとにつづく。]
"そら、ひとつ、しずく" "天のめぐみ、そらは──、"
[ たどたどしくも、のびやかに。 音程に難あり、と称されども、 物怖じをしないことだけは、確か。]
(173) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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[ ひとしきり歌えば、視線に、くるんと瞳をまわして、 満足げに、笑う。楽しかったと。]
── だけど、ここのおとなは、 あそびの邪魔ばかりするじゃない
[ さっきの出来事を、根に持つように、 こどもは、唇をとがらせて、 ちら、と制服のおとなを見上げた。]
それに、わたし、 ひとに拍手してもらうために歌うわけじゃないもの
[ けろりとした顔で返しては、右手を差し出す。]
(174) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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ゾーイよ まだしばらく、ここにいる予定だから、 また、会えるかも
[ そのときには今より上手に歌ってみせるわ、なんて、 こどもらしい口約束を取り付け、手を振った。 さよなら、と、背中を見送った。**]
(175) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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―キネーン:中心部―
[目的の店を探すも、賑やかな人の波に阻まれて、なかなか思うようにはいかず。 それでも、人混みに流されてしまいそうな少女の手を、握りしめるのは忘れずに。
はてさて、どうすべきか。 途方に暮れたところで、聞こえてきた、よく通るこどもの声>>169。 ショコラのものとは違うけれど、その呼称は、よく自分に向けられるものだったのもあって。
きっと、手を握った少女共々、その声に振り向いて。 この街で、ほぼ唯一の顔見知りの彼らに向かって、軽く手を振って見せただろうか。]
ほら、ショコラ。 お友達ですよ。
[ショコラは、手を引くまでもなく、気付いたか否か。 人混みで見えないようであれば、その小さな身体を持ち上げるくらいはしたかもしれない。]
(176) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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[何にせよ、丁度いいとも言えるタイミングであったから。 人混みをかき分けるようにして、彼らに歩み寄る。]
こんにちは、奇遇ですね。 お二方は、買い物か何かで?
[ショコラ共々、軽く頭を下げて。 人の好い笑みを彼らに向けただろうか。*]
(177) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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[ステージの上。 芙蓉の花の名を交えた歌をうたいたいと、事前に進言していたこと、当の本人には伝えていないけれど。 ふるさとの歌を聞きたい、と思っていた彼女には、ちょうど耳に馴染んだか。 あの時芙蓉>>171と口にしたのは、あくまで歌詞の一節でしかなかったけれど、今は違う。
ステージの外、戻りを待ってくれていた"芙蓉"のもとへ向かうと、満を持して口を開いたのだ>>162。]
(178) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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え、ぇと……ごめんなさい。
[そして、満を持した割には拙すぎる告白、ようやく出てきてくれたのは謝罪の言葉。 うまく言葉を出せなかったもどかしさで、思わず口をついていた。 呼吸を整えるように、一度、二度、深く息を吸って。 言葉を待っていてくれる芙蓉を、見上げる。]
あ、の。わたし、あなたと一緒に、いく。いきたい。 だけど、今、この場でいきましょうと、手を取ることは、できないの。
[枷は、外す見込みができただけの話で、相変わらず重い。]
(179) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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だから、待っていて。 あなたがこの土地を離れても、かならず、手紙を書くから。あなたと旅立つ準備が整ったら、かならず。
そうしたら、迎えに来て。 トップスターになっていたって、あなたを選ぶから。
[冗談めかして笑いながら。 あまり待たせることにならなければいいと、内に秘める。]
(180) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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[人に拍手をしてもらうために歌うわけじゃない。
そう言い切った少女が、どこか眩しく見えた。*]
(181) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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[此れまで、積み重ねたやくそく。 これから、増えていくやくそく。
生に輝く灰色は、やはり過去の聖女──マリアのものとは、全く、全く別物で。くすりも飲んでいないのに、止まってしまっていた己の時を、自覚しては拳に握った手でこつん、墓碑に触れる。 寂しいんだろうか、君も。 少なくとも、学者は、私は、 ───置いていかれるのが、寂しかったんだ。 碧を閉じて、数分、]
──やくそく、何かに纏めておかないとな。
[ゆるり、笑んだ。]
(182) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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――キネーン・広場――
[ユウガオ、女性と別れ、広場を行く。 目についた旅に必要なものや、特産品等を買い、別の場所で買った名物を売り込む。
財布はそこそこ重い。 もう一泊くらいなら、あのホテルにいても大丈夫だろう。 そう心配する彼は、翌日料金を聞いた時に目を点にすることを知らない。*]
(183) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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「おはようさん。……そういえば、昨日、新しい客が来たんだ」
[君たちと同じ、大人と子どもの2人連れだよ。 あくる日の朝、軽食を取ろうと階下へ降りた時のこと。 宿の主が、藤乃たちを朝の挨拶と共に、からりと笑って告げる。
へえ、と、瞬いて相槌を打つ。 藤乃たちがタリンへとたどり着いてから、この宿に自分たちの他に宿泊客がいるという話は聞かなかったものだから、少しばかり興味は芽生えて。 けれど、その時の感想は、ただそれだけ。 その者たちも、自分と同じように"楽園"を探し求めていたのだろうか、と頭に過りはしたけども。
だから、後日。 宿の片隅で、彼らと顔を合わせた時は、驚きに目を見開くこととなっただろう。]
(+23) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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ヴェスパタイン、……と、マリオ?
[どうして、君たちがここに。 口から転がり落ちたのは、そんな有り触れた問いだったか。 それに対して、答えが返ろうと返らなかろうと。
彼らを前にして思い出すのは、ヴェスパタインと雑談の末に交わした小さな約束だ。>>2:177>>2:178 思い出してしまえば、途端、バツの悪そうな顔をする。 その表情は、きっと、キネーンにいた頃にはあまり見せなかった、何処か子どもじみたもの。]
……御免、何も言わずにキネーンを離れてしまって。
あの約束を、忘れたわけではなかったんだけど。 ……その、悪かった、ね。
[ヴェスパタインとマリオの2人が、藤乃らとそう変わらぬ頃に旅立ったのだとは知らないまま。 そんな風に、気まずげに謝ってみたりしただろうか*]
(+24) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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[然して紳士な学者は手を借りつつ立ち上がって、 可愛い聖女から色良い御返事を頂けたならば仰々しくオーダーを聞く。 あまいもので夕食を。 先程のラウンジでは興味が去っていたようだったから、その跳ね返りだろうか。
─まあ、良いでしょう。淑女の御相手は大変偏屈な模様。 聞いておいて、"及第点"、みたいな言い方をするのだから。
1つ、脳内地図に目星をつけて、紳士は淑女の手を引こう。]
(184) 2015/09/22(Tue) 23時半頃
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[歌いだしではない「声」が静かな舞台によく響く。
戸惑いを示していても>>179。 その言葉一つ、息ひとつ、聞き逃すわけにはいかない。
彼女の声を一番知っているのは自分だから。 離れ離れになって、生きる道を違えて、ものごとをすなおにいえなくなった、年だけは自分よりも「おとな」のように、沈黙を金として守り続けていた矜持を、自ら打ち破る声を。
「素直」になった、彼女のことばを待って。]
(185) 2015/09/23(Wed) 00時頃
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[答えを聞く。>>179>>180]
………。 ……――ふふ、
[聞いて、笑いがこぼれた。 やはり、これは恋のあれそれとは違うのだ。
素直になったって、繋がれたのは紅と朱の糸は巻き上げるのには距離が長くて。 自分とて、それを無理にひっぱるつもりもなくて。
謝らなくていいのに、とも考えて、笑いが出てしまった。]
(186) 2015/09/23(Wed) 00時頃
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[けれど。
ココロは、ちゃんと繋がっている。
文は、想いを綴るのに良い手段。 それは一番、自分が知っているから。
そうして、未だ「客」である女は、抱えていた手鞠を、ステージに向かって投げる。
ふわりと、人を、人を。越えて。 彼女立つ舞台へと灰色の毬は落ちる。]
(187) 2015/09/23(Wed) 00時頃
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まってるわ。 「また」遊びましょう。ユウガオ。
やくそく。
(188) 2015/09/23(Wed) 00時頃
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