181 アイスソード伝記
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"はい"
[風が過ぎる。今は氷を刀身に纏った黒柄の、本来の姿となった剣は、主とのみ繋ぐことのできる音なき念で答えた。 剣は主の願いに、すぅ、と深く呼吸をするように意識を広げる。]
"───いけます。"
[その大きさや意図は、言葉にされずとも、主人が意識を向ければ共有される。その主にばかり、今は姿のない少女が、手のひらを丘へと向け、造り出すべき氷壁の橋から橋までを青の瞳で追うイメージが見えただろうか。]
(142) 2016/01/23(Sat) 01時半頃
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[声が脳裏に響くと同時、青年はふわりと黒いドレスの裾を翻し、 幻の如き白い掌を丘へと向ける少女の姿を幻視した。
凪いだ湖の如き透明な瞳が、氷壁の辺を視線でなぞる。 剣の主の望む通りに、その思うが侭に氷壁は幻の中に姿を見せた。]
"────頼む。"
[こくりと頷く動作は、ごく小さい。]
(143) 2016/01/23(Sat) 01時半頃
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["はい"と頼みに応えるときばかりは僅かに声は緩み、]
"マスター。──剣先を目標へ"
[されど集中を凝らす間に、響く声は硬質なものに変わる。 それと同時に、剣の周囲の空気が冷えた。 剣の切っ先から筋状に白い靄が伸びる。
それは馬が走ると逆へ尾を引きながら 丘の手前まで繋がり、 すう。と横に先を引いた後に 縦へと広がった。
丘の手前に聳えた薄いヴェールのような冷気は、 ぴきり と届かぬ距離で音をたてた。]
(144) 2016/01/23(Sat) 02時頃
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[そのまま、大気が、白く凝固する。]
(145) 2016/01/23(Sat) 02時頃
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[丘の手前へ現れた氷壁の袂には、 遠巻きにも白く煙が溜まってみえた。
城壁の如く高くとはいかずも、傍に立つ樹と同程度の高さで、 その氷壁は丘の向こうとこちらを分断していた。]
(146) 2016/01/23(Sat) 02時頃
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─ 北の丘へ ─
[変化は何気無く、そして突然だった。 北を目指して急ぐ者らの後背に、冷気が凝る。
勘の鋭い者が振り返った。 クラリッサさま。と呼ばれて、クラリッサ・ウィリデも振り返る。 彼らの見守る視線の先、ぴきりと、大気が白く凝った。
───きん!と音を立てるほどの鋭さで、 追い来る兵を隔てるようにして、氷の壁が平原に屹立した。 戸惑ったような声が、アウァールス兵の間から上がる。
ウィリデの人々の間からは、ざわめきと感謝の声が零れた。 その中でクラリッサは案じるような顔を南へと向けている。]
(147) 2016/01/23(Sat) 02時頃
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「クラリッサさま。……さ。」
[促す声に従って、彼女は再び足を北へと向けた。 彼女には子を守るという大切な務めがある。
子を守ってくれと言った夫の為にも。 安心して逃げよと言ってくれた娘の為にも。 彼女らを安全に逃がす為、今も戦場にある全ての者らの為にも、 彼女たちは懸命に逃げるべきであった。
思いを断ち切るようにして、北への道を歩む。 目指す実家───ラエトゥスの地は、未だ遠い*]
(148) 2016/01/23(Sat) 02時頃
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─ 戦場 ─
["魔法"が行われるには、あまりに何気無い仕草であったろう。 微かに頷いたサイラスは、剣先を北の丘へと向けた。
見える仕草は、ただそれだけだ。 ただそれだけのこと、それのみを以って、 オーレリアは平原に氷壁を現出せしめた。
畏怖のようなどよめきが、敵味方双方から上がる。 ただその中で、サイラスのみは驚く顔も見せずに、 敵陣を射るようにして見つめていた。
その向こうからも、同じく動ぜず返る視線がある。 ドン・アウァールスに相違なかった。]
(149) 2016/01/23(Sat) 02時頃
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聞け。
[視線をアウァールスに据えたまま、 サイラスは自ら率いる兵らに声を放った。]
俺は今から、ドン・アウァールスの槍を打ち壊しにいく。 あれを残してはおけん。
お前たちは援護してくれ。 周辺の敵兵を押さえるだけでいい。 炎が来たら、構わん。逃げろ。
─── レリィ、いいな?
[敢えて声の必要のないオーレリアにもそう、 周囲に聞こえる音で語りかけ、剣を馬上に構えなおす。]
(150) 2016/01/23(Sat) 02時半頃
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突撃!!!
[号令一下、喚声が上がった。 呼応するように、アウァールスの陣からも喚声が上がる。 馬に拍車をあて、駆ける正面に立ちはだからんとする、 勇敢で無謀な兵らの姿が目に映った。]
"あれらを止めてくれ。"
[───地面に白く、冷気が奔った。]
(151) 2016/01/23(Sat) 02時半頃
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[ざわつく周囲の声の中、互いの兵の群れの中で ひりつくような視線を交わし、対峙する一対があった。
声に出されずとも、主がその姿を しかと凝視していることはオーレリアにも伝わる。]
" ──はい "
[返事は間をおかず、剣の意識は、 逸れず敵陣へと向けられていた。
──こちらへ突撃する兵らの奥に紛れるドン・アウァールは、 愉しむようにか、口角を上げ、槍を前方へと振り下ろした。 遠く、握られた位置よりも上で赤い色がちらと光る。]
(152) 2016/01/23(Sat) 02時半頃
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[戦場は、無残な有様となった。 迂闊にも足元を湿らせていたアウァールスの兵たちは、 地面を奔る冷気に縫いとめられたように足を止めてしまう。 そこに、ウィリディス兵の放った矢が降り注いだ。
アウァールスとて、ただやられていた訳ではない。 ウィリディス軍の後方から悲鳴が上がった。 携行していた油の袋から炎が出て、瞬く間に燃え広がったのだ。 叩いても転がっても消えない炎は、エアによるものであった。
踊るように転げ落ちる兵らの姿に、 ドン・アウァールスは歪んだ笑みを浮かべた。 その視線は真っ直ぐにウィリデの小倅、サイラスへ向けられている。 正確には、彼の手にするエア「オーレリア」にだ。]
(153) 2016/01/23(Sat) 02時半頃
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[
─── 貴様にその武器は、不釣合いだ。
思いは、期せずして重なった。 笑み浮かべる瞳と怒り浮かべた瞳、二つの視線が絡み合う。 高く、武器打ち付け合う音が戦いの場に響いた。]
(154) 2016/01/23(Sat) 02時半頃
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[エアとエアのぶつかり合いは、凄まじいものだった。 剣よりは間合いの長い槍を、ドンが勢い良く振り回す。 炎の余韻含むそれを、冷たい氷纏う刃が弾き返す。
一振りごとにその余韻が、 周囲の地面を焼き、緑の葉を銀色に凍らせた。 その威を恐れた兵らは、次第に彼らを遠巻きにした。
一合、また一合、剣と槍とが打ち合わされる。 ドンの顔から、皮肉な笑みが薄れていった。]
(155) 2016/01/23(Sat) 03時頃
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[サイラスにとて、余裕があったわけではない。 炎の片鱗は腕を掠め頬を掠め、服をちりちりと焼き焦がした。
炎の槍の刃が身を掠めれば、傷は火傷となる。 左の腕を掠めた傷の痛みに、サイラスは顔を歪めた。 お返しにとばかり剣を振るえば、 右腿に凍傷を負ったドンがやはり顔を歪め打ち返してくる。
"レリィ、"
いつしか、サイラスは昔を思い出していた。 かつて自分は、今手にしている剣に剣を習ったのだ。 不思議なものだと思えば、僅か口元に笑みが浮かんだ。 つかの間、ふわり、淡い白金の髪の面影が脳裏を過ぎった。]
(156) 2016/01/23(Sat) 03時頃
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───── !!
[きぃんと、高く不思議な音が響いたのは次の瞬間だ。 黒いドレスの剣の娘の手に導かれるように、 正確な起動をなぞったサイラスの手の振り下ろした剣先は、 紛うことなく炎の槍の宝玉──コアを捉えていた。
わ。と、ウィリディスから上がった歓声が、 次の瞬間悲鳴に変わる。 その中にクラリッサの名を聞いた気がして、 サイラスも思わず顔を上げた。
兵らが指し示す指の先、平原に立つ守りの氷の壁の向こう。 北から襲い来た兵に逃げ惑う人々の姿がある。 煙が上がった。 荷か人か、それらに炎が放たれたに違いなかった。
─── 挟撃の兵が伏せられていたのである。]
(157) 2016/01/23(Sat) 03時頃
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クラリッ…… !!
[サイラスの声もまた、炎に途切れた。 ごう。と、耳に炎の音が響く。 空色の双眸を見開いてドンを見遣れば、 最後とばかりに炎の槍を翳す彼の姿があった。
ぎり。と、奥歯を噛み締める。 半身を炎に包まれながら、剣を構えた。]
"───── オーレリア、"
[呼ぶ名、ひとつ。]
(158) 2016/01/23(Sat) 03時半頃
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[空気よりも重たい煙が下に溜まるように白い冷気が進み出るアウァール兵の足元へと広がる。
霧の如くに広がったと思えば、 ──キ、と引掻くような音を立てて、 その足を地面に縫い付ける。
矢が互いの頭上をとびかい、 ウィリディスが敷いた陣から 火の色が立ちのぼる。]
(159) 2016/01/23(Sat) 03時半頃
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[進む兵らは氷と炎に数を減らしながら 剣戟と鬨の声をそこら響かせていた。
しかし、それも互いの戴く領主がぶつかれば 脅威と畏怖とに「エア」の主たちを中心に 自然と空洞──、円ができていた。]
(160) 2016/01/23(Sat) 03時半頃
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[一合、二合と炎の槍と氷の剣が打ち合わされる。 はじめは互角、いや、間合いの広い槍が有利かとみなされたが、 しかし息詰まる打ち合いは、 やがて氷剣の持ち主に傾いていった。]
(161) 2016/01/23(Sat) 03時半頃
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[剣を振り下ろす瞬間に無防備になる逆の肩。そこを襲う熱風を振り払えるように切り裂く剣に冷気の風を纏わせる。 槍の重さを弾くために氷の刃を厚くする。
レリィ、と彼のみが呼ぶ名に、 剣は微かに頷きの気配を返す。
ウィリデの剣筋を、剣が知ればこそ。 思うより早く、言葉より速く、 氷の剣は、主の意思に応えた。]
(162) 2016/01/23(Sat) 03時半頃
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[一度傾いた天秤が、その差を示すまでには そう時間はかからず、狙いを定められた一閃は 光る赤い石を捉えた。
ぴ と丸い石に、直線の皹が入る。
余裕の笑みをその表情から消していたドン・アウァールスが、そのとき確かに怒りに似た顔つきで目を見開いた。]
(163) 2016/01/23(Sat) 03時半頃
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[歓声が上がり、決着がついたかと思えば ──それが北で上がった赤に、 されど動揺と嘆きの声に成り代わる。
僅かに目を瞠るに似て気配を揺らし、されと剣がそれよりも反応したのは、きり。と柄を握る手に、力が篭ったことだったか ]
"────、はい"
[あるいは、常の愛称ではなく。ウィリデの剣たる名で呼ばれたことだったか。]
(164) 2016/01/23(Sat) 03時半頃
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[名を呼べば、剣は掌の中、応えたようだった。 柄を握る腕から少し、熱気が和らぐ。
指し示されたように明瞭に、取るべき形が分かった。 突く、払われる、交わし再び剣を突き出す───]
"…───あと、"
[肌を焦がす熱に、ぐらりと視界が揺れる。 剣先がドンの首元を捉える。 驚愕と恐怖の滲んだ彼の視線が、刹那交わる。 けど、サイラスの力もそこまでが限界だった。]
" … 頼む。"
[膝ががくりと、意思に反して崩れ落ちた。]
(165) 2016/01/23(Sat) 04時頃
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[ぐら。と膝がかしぐ気配と疲労の色に、剣はマスター、と声をあげかけてしかし、後を託す主人の声に、それを飲み込んだ。
同族と打ち合わされる剣戟の余韻が残る中 氷剣の意識は主が定めた狙いに向けて ただ真っ直ぐに伸びていく。]
" ───はい。おまかせください。"
[崩れた膝のぶん、ずれた切っ先を形を変える氷の刃が正し、透明な切先は人の熱に表面を曇らせた。]
(166) 2016/01/23(Sat) 04時頃
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[槍の主人の首から胸へめがけて、剣は深く深く突き刺さり、恐怖と、この結末を予想もしていなかったような驚愕を浮かべた男の時を、ここで止めた。
握っていた手から力が失われ、 槍が地の上で がらん と転がり音を立てた。
その槍の上に、こぷりとドン・アウァールスの血が溢れ── ぽたり ぽたりと雫が槍の上に落ちるたび見る間に赤く凍りゆく。]
(167) 2016/01/23(Sat) 04時頃
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[既に絶命し両の膝をついたドン・アウァールスは、横倒しにその身体を、"寄りかからせた"。
ウィりディスを望んだ男が伏したのは、 炎槍の赤い柄を分厚く閉じ込めた 氷の棺の上にだった。
男の血を糧に棺は嵩を増し── やがて、その色も、 白い霜の下へと隠された。]
(168) 2016/01/23(Sat) 04時半頃
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[サイラスに纏いついていた炎も、 また、兵を苦しめていたエアの炎も、 槍が氷に閉ざされると同時に勢いを弱めて掻き消えた。
炎の槍と氷の剣の主の勝負の行方、 それを見ていた兵らは少しの間、 しんと恐怖したように静まり返っていたが、 やがてざわりと声が上がった。
アウァールスの兵のうちの一人が、 サイラスが弱ったと見て氷の剣へと手を伸ばそうとする。 それを阻まんとウィリディスの兵が切りかかる。
不穏なざわめきを聞きながら、サイラスは顎を上げた。 皮膚を焼かれた形容し難い痛みの中、声を「思う」]
(169) 2016/01/23(Sat) 04時半頃
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" レリィ、"
"俺を "
" 俺の周りを、静かに──… "
(170) 2016/01/23(Sat) 04時半頃
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[隔離してくれ。 言葉にするなら、イメージしたのは大体こんなところだったろう。 賢明とは言い難い選択であったかも知れない。 何故ならそれは、味方と離される危険もあるからだ。
けれどこの時、サイラスの心を占めていたのはオーレリアの安全、その一点のみだった。
痛みが全身を貫いている。 炎の槍の痛み。そして、…──家族を喪った痛み。 もうこれ以上、大切なものを失いたくはない。 そんな必死で切実な、心の動きでもあった。]
(171) 2016/01/23(Sat) 04時半頃
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