190 【身内村】宇宙奇病村
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[ノイズ。そうして、その先の無音。 ワクラバの声。]
――先生?
[反射的にそう呼ぶ。急激に心臓が早鐘を打つ。 何事か打ち込みかけていた端末を無意識のうちに閉じる。 椅子から立ち上がりかけた姿勢で、見えない筈の音声通信を目で追うように、視線を動かす。
叫ぶようなワクラバの声。 唐突な空恐ろしさに襲われて、ワレンチナは力が抜けたように再び椅子に沈み込んだ。]
(頼む。これ以上、そんなこと。やめてくれ。お願いだよ)
[震える指先が、前髪をくしゃりと掻き上げた。]
(121) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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(――これは吊り橋理論か?ワクラバ。 そうでないなら単純な情けか。それとも好奇心か?
どちらでもいい。投げかけたのは僕の方だ。 そうして君は応えた。それだけ。結果論でいい。
『王子様』はもう居ない。 ほんとうの自分の心に――言わば本能に従ってみれば。 僕は、女という名のけだものだったのだ。
それを認めさせてくれ。 どうか無事に帰ってきてくれ。今夜、僕の元へ。 僕が今――祈るのは、そればかりだ。)
(*6) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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[デブリの霧の中、遠方へと漂う見慣れた姿があった]
まて!いくな…! いくんじゃねぇ!!
[ワクラバは『月』に手を伸ばした]
……『親父』!!
(122) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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[極力欲を絶ち生きた老人は、生き方のおかげか。 ごく、素早く、諦めた。
時間はいくらかありそうだ。 この防護服の酸素が尽き、この脳が止まるまで。
それまで、存分に「己が何たるか」を思考することが出来る。]
(123) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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[ふと、脳裏に彼の顔がよぎる。
そこで、ワレンチナの意識は――静かに、途絶えた。]
(124) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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