250 ─ 大病院の手紙村 ─
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こんな話を聞いたことがある。 幼子は眠ることと死ぬことの区別がつかず、夜毎眠りを恐れて泣きわめくらしい。 ハムレットですら“死ぬことは眠ること、それだけだ”と言っている。はたして、主観的な眠りと死の区別はどこにあるのか。 見知らぬ誰か。あるいは見知った誰か。噂の怪異が本物で、もしあなたのところにこれが届いたのなら、どうかひとつ意見をお聞かせ願いたい。
アオ
(-67) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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/* わあ!凄いこの日にだけ手紙集中する!バランス!
(-68) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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そうだったよね?
[優しい優しい店員さんへの返事を書き終えて 記名の後、ふと思いつき付け足した一文。 ベッドの上の君に問い掛けて、独り笑った。
少しばかり長く書き過ぎただろうか。 乾かす時間に読み返していれば、 やがて行き着くのはあの喫茶店の店長の話。
彼女の祖母だという店長は、常連として当然知っている ……あまり店に出ている印象は無いのだが。 店での態度と変わらない明るい印象の文 けれど、深く語られない中に伝わるものもあって。]
(73) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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[ まず、退部届。 発見した日に、既に皺は伸ばし、 透明のファイルに入れて保存している。
改めて見てみると、 印刷が滲んている箇所が数カ所目に留まる。 雨か。 涙か。 おそらく後者なのだろう。
デスクの前のパソコンを立ち上げ、 署名欄に書かれた名前を打ち込む。 エンターキーを押せば、 患者、逃矢メルのカルテが表示された。 ]
(74) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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[ 入院している科を見て、 寄りかかればぎぃと椅子が嫌な音を立てた。
なるほどなあ、と啓之は思った。 故障で走れないのだろうという想像は、 恐らくは遠からずとも外れていないだろう。
ただ名前を書いているだけで、まさか、 リ・ジアンさまの標的になるとは、 まさか考えてもいなかったろう。 提出するなり捨てるなりは自分の手で行うべきだ。 逃矢メルに返さなければ、と啓之は思う。 ]
(75) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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[ 次に、目に留まったのは、蔦模様の封筒だったが、 それを手に取るのは後回しにしておこう。
重ねてあった紙片の小さい方を手に取る。 折り目をきちりと合わせる意図が、 あまり感じられないそれを開くと、 明らかに大人の筆跡が目に入る。知った字だ。 瞬きながら、それを読み終え。もう一度読み返す。
知り合いの子供でも見舞っているのだろうか。 そして、その子には父親がいない。 けれど、嘘とは? 啓之の想像は追いつかず、思考を止める。 嘘は一度ついてしまうと、それを突き通すため、 幾つも嘘を重ねなければならないことが多い。 ]
(76) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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[ 手紙の主の事情はよくわからないが、 最後の一文に書かれている通り忘れた方が、 賢明であるのかもしれない。
啓之だって、暇ではない。 興味こそあれど、 それ以上事情に踏み込むことはないだろう。 大人というのは、たいていそういったものだ。 手紙の相手に踏み込むのが仕事であるわけでも、 ない。 ]
(77) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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[ 少し暗い気持ちになりながら、 幾つか穴が開いたの紙を手に取る。 どうやら日記のようだ。 みゃおから届いたメモ書きのように、 日付は随分と前に書かれたものだった。
文字と内容から、小学生の日記のようだ。 微笑ましく読み進めていたのだが、 それに似つかわしくない言葉を見つけ、 啓之は首を傾げる。 ]
(78) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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忘れちゃうみたいだけど、って。
[ 健忘症だろうか。 心因的理由で? 本人はその状況を受け入れているようである。 最後に綴られた願望も、忘れているのだろうか。
なんとなしに裏返しにすれば、 患者の名前が知れる。 二人分の名前が書かれているが、 メイ。 こちらが日記の持ち主だろう。 ]
(79) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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人は簡単に怪我をするし、死ぬし、壊れてしまう。
だから、ちゃんと大切にしておかなきゃ。
(80) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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[ 啓之は大きく伸びをして、 昨日購入した封筒と、 業務で稀に使用するA4の茶封筒を手にする。 ]
(81) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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[ 意図せず消えた退部届は、 皺が伸ばされ、君の手許へと返ってきた。
大き目の茶封筒の表や裏には、何も書かれていない。 花丸のシールで簡易的に留められたそれの中身は、 クリアファイルに入った退部届と添えられたメモだ。 ]
(-69) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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私の許に偶然届いていました。 リ・ジアンさまは、 きっとあなたの許に返してくれるでしょう。
たまたま繋がった縁。 知ってしまったからには、 大人として一つアドバイスを贈ります。 おせっかいだと思って、聞き流してくれて構いません。
貴女の心に従って、行動されますように。 後悔しない選択を。
(-70) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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[誰一人見ることの無かったその笑みは ただひたすらに幸福を湛えていた。]
(82) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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[ 君に届くのは、白い封筒だ。 シンプルなヤギの柄が入っている。 同封されているのは、 君が失くしてしまった日記帳の一ページ。
癖字でかかれた文字は少し読みづらいかもしれない。 ]
(-71) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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こんにちは、初めまして。 八国さん、私は一期崎(いちござき)と言います。
最近病院内で多く噂されているリ・ジアンさまは、 知っていますか? リ・ジアンさまがあなたの日記を一枚、 さらってしまったみたいだから、お返ししますね。
喫茶店 蜂蜜には、私もよくお世話になっています。 今なら、洋ナシのタルトがおすすめですよ。
(-72) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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忘れちゃうことは、寂しいですね。 でも、裏返しにしたら、 いつでも新しい体験をできるとも捉えられますね。
お名前の練習もえらいですね。 担当のお医者さんのいうことも、 きちんと聞いてあげてくださいね。 マイさんにも、よろしくお願いします。
(-73) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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/* るいくんをサンドウィッチの具にしてしまった。 もぐ。
めいめるやで逆に送るところだった……はゎ……危ない。
(-74) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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[表の宛名には、私の苗字が書かれている。 なんだろう、と。なんの気なしにひっくり返せば 裏に書かれた苺の絵に、無意識に頬が緩んだ。]
絵を描く人に悪い人はいない、と。
[封を開けて手紙を開いた時こそ、 少しの緊張はあっても、そのぐらいだった。
だがーーーその後。 私は暫く、その手紙に読み耽ることとなる。 私がよくわかっていた事実を突き付ける一方で この手紙には、私が一番欲しかった答えが。 ずっと悩んでばかりで勇気を出せなかった私の背を 強く(それでいて優しく)押してくれるような そんなものが、沢山込められていた。]
(83) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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…………ぅ。
[あまりにも優しい手紙に、 読み終わった後は泣きそうになっていた。
喫茶店によく来ていた常連の患者さんが いきなり来なくなってしまう経験は良くあった。 その理由が、退院が理由かそうでないかぐらい 察することができる程度は、私は長く働いていた。
人はいつか死ぬ。 そのことがわかっているからこそ。 私は親にもおばーちゃんにも、何も聞けなかった。
……きっとこの人は、私よりも全然多く、 色んな人の死を身近に感じてきたのだろう。 それを思うと、全部の言葉に重みを感じて。 最後の数文を読んだ頃には、 指先は、強く、その手紙を握っていた。]
(84) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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/* ワタル君のはお母さん宛てかな? それこいつのとこに来たらいかんでしょ…… よりによってこいつ……。
(-75) 2018/09/26(Wed) 23時半頃
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/* 明日の祝宮先生第一声で「ウワッ」て言うと思う
(-76) 2018/09/27(Thu) 00時頃
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[あぁ、お返事を書かなきゃ。
でも、その前に。 私は、やらなければいけないことができてしまった。]
……うん。 そうだよね。簡単なことだった。
[手紙を丁寧に畳んで、 まだ読んでいない一通と一緒に鞄に仕舞う。
ぐし、と。ちょっとだけ、目元を指先で拭って。 そこで丁度、最後のお客さんがお店を出ていった。]
またのご来店を、お待ちしておりますー!
[カウンターのレジ奥で立ちあがり、 ぺこりとお辞儀をして見送って。 大きく一度、深呼吸をすれば、 奥で編み物をしていたおばーちゃんの方へ行く。]
(85) 2018/09/27(Thu) 00時頃
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[ みゃおからの封筒を手に取る。 みぁおと鳴いている猫らしき生き物に、 ダメ出しをしながら、便箋に目を通した。
耳はもっと尖らせて。 目はもっと可愛く。 顔はもっと丸く。 これでは、犬のようにも見えてしまう。 ]
友達からも金をとる気か。
[ 書かれている冗談をわざと真にとって、 啓之は真顔で白い便箋に向かって唱える。 ]
(86) 2018/09/27(Thu) 00時頃
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[ 文言には静かに頭を抱えることになる。 見ず知らずの人間とやりとりが、 確実に手紙経由でできているのだ。 まさかやり取り相手が自分にも知覚できない 第二・第三の人格といった可能性も零ではないが。
航やみゃおといった知り合いとの間では、 集団ヒステリーの可能性も捨てられはしない。 ]
(87) 2018/09/27(Thu) 00時頃
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誰かのお父さんである貴方へ
勝手に返事をしてしまって、ごめんなさい。 本当は僕じゃなく貴方の子が受け取るべきだった。
貴方の言う通り、 僕が見たいのはきっと貴方の笑顔じゃない だけど、 お父さん の笑顔を見たいのは どんな子も同じじゃないのかな。
僕らにとって、お父さんの言葉は大切なものだから あなたもどうか、自分の言葉を大切にしてほしい。 嘘ばっかりじゃ ないでしょう。
(-77) 2018/09/27(Thu) 00時頃
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結論、か。 ……オカルトを信じる性質ではなかったが、 いる、 んだろうな。 リ・ジアンさま。
[ 集団ヒステリーでもなく、多重人格でもなく、 いるのだろうと啓之は結論をだす。 だが、これをみゃおに伝えるのは癪である。
当の本人が家で寝込んでいることを、 当然ながら啓之は知らない。 知っていたのなら、 手紙にゼリーでもつけて送ってやっていたろう。 ]
(88) 2018/09/27(Thu) 00時頃
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[ まだリ・ジアンさまが届けた手紙は、手許にある。 夜空の封筒は、見覚えがないから、 昨日から今日にかけて、どこかで届いたのだろう。
本当にリ・ジアンさまは働き者だ。 ]
(89) 2018/09/27(Thu) 00時頃
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僕も、貴方がその子の願いを 叶えてあげられる日がくることを 心から祈っています。
わたる
[ きっと見覚えのあるだろう 青い便箋が貴方の元に届く。 鉛筆書きであることは変わらないが 以前届いたものよりも、いくらか濃い色を乗せて。]
(-78) 2018/09/27(Thu) 00時頃
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To mer
お返事ありがとう こうして何度もやり取りをできるとは思わなかったから いまとても、嬉しいです。
僕はすっかり元気だけれど 退院までもう少しかかりそう。 あなたの怪我はとても辛そうだ。 包帯、早く取れるといいね。
きっと僕より苦しいだろうと 以前の手紙に書きましたが 贅沢な悩みだとは思いません。 あなたの苦しみは、あなただけのものだから あなたが苦しいならそれは辛いことに違いない。
(-79) 2018/09/27(Thu) 00時頃
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