218 あした、ぼくはきみになる
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[床の方のテーブルには、 可愛いイルカデザインのクッキー缶 宝物の手鏡と、それからスケッチブック 多分一番最初のイラストは猫。是はそこそこ自信作 色んな空の写真を集めた本、 それから今流行りの少女漫画 教科書は勉強机の本棚の中だよ?勿論
水彩絵の具セットもきちんと片付けて、 テーブルのすぐ横においてある
大事なフルートはケースに入って 何時でも練習しやすいように部屋の隅においてある]
(88) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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[これが私。女の子、の私 甘いお菓子と、お友達とお話しすることが好き お洒落だってちょっとはする
でも、もし私が男の子だったら どんなお部屋になったんだろうなあ 若しかしたら過去に持ってたクッキー缶 その中に入れた宝物も持ち続けていたんだろうか
ああ、あの缶何処に仕舞ったんだっけ ――昔の写真の貼られた、アルバムも*]
(89) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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/* 入れ替わって起きた時の朝が描写しやすいように せっせとお部屋を説明している私である
(-28) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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[ ――――……たまに 感じる 幼馴染二人の間に流れる空気は、
まるで淡雪のように清廉で繊細で。>>64>>66 アタシが無遠慮に入り込んだら溶けて崩れてしまいそう。 だからそっと見守るだけ。 ]
ひひ。 んじゃ約束ね。
[ そう会話を打ち切って。 彼らの間で交わされた“感想”の約束。 良い結果をもたらすのを祈るにとどめる。 ]
(90) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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― 回想 昔の記憶 ―
[ かの有名な作曲家、ベートーヴェン。 その彼が作り上げた楽曲、『月光 第三楽章』。 激しい旋律とスタッカートが印象的な楽曲。 まさに、歴史に残る一曲であろう。
奏多は、この曲が凄く好きだった。 16分音符で写り変わりゆくメロディ。 細かい音の流れを聞くのが、好きだった。
しかし、この曲が憎いほど嫌いでもあった。 ピアノは小学生の頃から習っていた。 町のレッスン場に足繁く通っていた。
中2の時、渡された曲が、これだった。 大好きな曲だから、頑張ろうと思っていた。 けれども……――発表会当日。]
(91) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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[ 結果は、散々な出来だった。 奏多に取っての、大きな悔いと、挫折。 それを、味わわせてしまった。
例えば、曲が好きだったとしても。 それを完璧に演奏できるとは限らない。 大勢の観客の前で、恥をかいた。 そんな、苦い記憶。
そのレッスン場は、自分が中3の時、 受験シーズンと重なり、やめる事となった。
まったく、なんて滑稽な話なのだろうか。]
(92) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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[ 改めて前に向き直れば。 チャイムの音に紛れて。 ――― “ ひらり ”
視界を横切る、宙を舞う、季節外れの白いもの。 咄嗟に手を伸ばして、掴み取り。 持ち主に向けて掲げて見せる。 ]
もしもし、そこのおにーさん。 あなたの未来。 落としましたよ?
[ 声におどけた調子を含ませ微笑んだ。 ]
(93) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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[ このとき、奏多は悟ったのだ。 自分に才能なんて、ある訳がない。 自分は、どう足掻いても。 ベートーヴェンにはなれないんだ、という事を。
この影響から、ピアノに触れない時期もあったが。 今では、なんだかんだでまたピアノをしている。 あの時とは違うんだ、そう言い聞かせ。
才能なんて、あるわけ無い。 だからこそ、楽しむ努力を怠るな。
それは、インターネットに書いてあった、言葉であった。*]
(94) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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( ………進路希望調査、か )
[ ちらり。手の中の用紙を一瞥する。 美風は多分、自身の学力にあう大学名を。 一つ、二つ、三つ。 上から順に埋めて―――はいおしまい。
目の前の人はどうするんだろうね? もし映す眸が僅かでも憂いの色を滲ませていたのなら。]
お悩みならあれだよ。 「素敵なお嫁さん♡」 ―――って埋めておけば、OKOK!
[ そんなことを言って。 呆れさせてしまったかもしれない? ]
(95) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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( ………なぁんて。 )
[ 自嘲するように笑うのは。 アタシの中の私の役目。 ]
(96) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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[ ―――そんなわけ、ないよねぇ。 ]*
(97) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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[綺麗な声はお道化たように、でも可愛らしい ひらり紙をさせながら、私より後に教室にやってきた なゆ君に話しかけてる、ふうちゃん>>93
私は会話を邪魔しない様に、 おはよーって手を振る。ひらひらって 1本おくれた電車で一緒になったの 相手は気づいてない、って私は思ってるから (だから。後姿を見られたのも当然気付いてないんだよ!)
ひらり、舞った白紙の進路相談書 私のものも真っ白だけど 皆は埋まったのかしら
コンプレックスシックスティーン 夏が来れば1つ私は大人になるけど 私や皆の未来は一体。どんな風になってるんだろう 未だ、それは霧の中なのです*]
(98) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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奏者 セシルは、メモを貼った。
2017/06/04(Sun) 22時半頃
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[ふうちゃんの、進路希望調査は 多分きっちり埋められるんじゃないかな ふうちゃん、真面目だし
私が少しだけ憂いを滲ませた瞳をしていたからなのか 励ますようにお嫁さんで埋めておけばいいと そう、言うのだけれど>>95]
ふうちゃんなら兎も角さぁ 私を貰ってくれる人なんて いるわけないよぅ
[私は、私も白紙です、をカミングアウトしつつ ぺしょーって机の上につっぷすのですよ]
(99) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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─── いつかのこと:記憶と窓の外と ───
[ 物心がついた時には母親はいなかった。 大きな日本家屋は父一人子一人には持て余すもの そこに何か感情を抱く年になる前は 家の中は素敵な探検の舞台だった。
雨も降らない、恐い生き物もいない。 時間が流れても困らないその世界
いつだって、何処にでも行けた。 けれど、いつでもゴールは父親の元 彼がアトリエとしている部屋で。]
(!29) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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『何もあなたまで、……』
『お父さんに言われたの?』
[ 画家という堅実でない仕事をよく思わない親戚は 親と同じ道を選ぼうとする子供に苦い顔をした。]
『やっぱり、土鈴時人の息子だから?』
[ 知る人ぞ知るような知名度の筈の父親 けれど、珍しい姓が理由か。 はたまた、周りの大人にこの分野に明るい者がいるのか。 そんな風に話し掛けてきた美術部員もいた。
そんな時はいつも唇を噛んで、心の中で吐き捨てる 違う。俺は俺の意志で選んだんだ。 知ったような口を聞くなって。 ]
(!30) 2017/06/04(Sun) 22時半頃
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(──────けれど、それは本当に?)
(今でも、胸を張れる?)
[ 迷いが筆の動きをより鈍くしてしまう。 ろくに描けなくなって、もう数カ月。
心の問題だ、とか。 教師は簡単に言ってくれるけれど。 何をどうすれば治るのか、なんて。 聞いたところで返るのは綺麗事か曖昧な言葉。 ]
(!31) 2017/06/04(Sun) 23時頃
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[ 例えば、違う誰かだったのならば
土鈴時人の息子ではない人生があったのなら 誰の言葉も気にせずに絵を描けるのだろうか?
恵まれた環境で、随分親不孝な発想だ。 ]
(!32) 2017/06/04(Sun) 23時頃
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[ 美術室の窓から陸上部の練習風景を眺める 下級生の女子生徒が、風を受けて駆ける。 短い髪は目立つ色をしており、よく目に止まる。
彼女の心の中を知らない。 どんな悩みを抱えているかも、分からない。
ただ、その光景は爽やかなもので。 自分にない色があると感じる。
────パレットに絞り過ぎた絵の具が飛び散った。 ]*
(!33) 2017/06/04(Sun) 23時頃
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[かなちゃんは多分知らない事 小学生の頃。中学年くらいだったかな? どうだったっけ。もっと小さかったか それとも大きかったか
かなちゃんはピアノを習っていて 多分大きくなるにつれ レッスンの為に裏山で遊ぶ回数は 少なくなっていったんじゃないかな
町にあるレッスン場に、結構な頻度で通っているのを 私は3軒先、の御家から 楽譜を入れるレッスン鞄を持って 出ていく後姿を何度も見かけたことがある]
(100) 2017/06/04(Sun) 23時頃
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[でも、それを見なくなったのは中学三年生の時 おばちゃんが、受験と重なったから やめたんだよって教えてくれた
でも、私は知ってる その背が、楽しいを伝えなくなったのは 中学2年生のある日から
何があったかわからない。でも どうして何も相談してくれないんだろ 嗚、私が男の子だったら相談してくれたのかなぁ でも、私は男にはなれない いくらつるぺったんでもなれないの
だから、私はこの時も 何も、言えなかった 何も、言わなかった
だから多分。彼が自力で立ち直る切欠を 私は知らない。しらないの*]
(101) 2017/06/04(Sun) 23時頃
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── 教室にて ──
[別にイタズラのつもりはなかったけど、 思いの外、返ってきたのはいい反応>>!22。 どちらかというとええかっこしいな彼の、 情けない声にはそれなりに溜飲が下がったかも。]
大会ならもちろんあるよ、陸上も。 っても、あたしの競技は先輩いるから。 今年が最後ってヒト達の見せ場、 無理に取る事もないじゃん?
[その答えは半分本当で、半分嘘…かもしれない。 正確には好きでやってる訳じゃない≠ゥら。]
(!34) 2017/06/04(Sun) 23時頃
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[足は速いみたい。選抜だって打診された。 だけど、同じ理由で断った。
選抜枠に喰らいつく程の熱を持てない。 どうしようもないけど、後ろめたいのかな。 きっと、あたしが熱くなれるのは別の分野。 知っててもこれだって、どうにもならない。
だから、彼の野心?向上心?は嫌いじゃない。 …絶対言ってなんかやんないけど>>!23。]
(!35) 2017/06/04(Sun) 23時頃
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先輩達ったら、いろいろ騒いでるよ。 やれ祭りがどう、花火がどうってさ。
大会大丈夫なのって正直思うけど… …バスケの先輩から激励もらってるなら、 明野は行く暇ないのかな?
[あたしがサンタに相応しいかはともかくとして、 もひとつ地元情報のプレゼント。 机に頬杖が行儀悪いなんて、今更の話。
とはいえ当人が十分知っていておかしくないし、 話を振っておきながら、当のあたしときたら。 行くかどうかすら決めてないんだけどね。]**
(!36) 2017/06/04(Sun) 23時頃
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― スケッチブックの話 ―
[空の青さを伝えるには 青い絵の具を使えばいい
夜空のお月様の色を伝えるには 黄色い絵の具を使えばいい
でも、赤が見えない人に 太陽の緋色を伝えたい時
どんな色の絵の具を使えばいいんだろう]
(102) 2017/06/04(Sun) 23時半頃
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[なゆ君の瞳に映る色には 赤色はないんだって 中学校の頃の美術の先生が言ってた
だったら。彼から貰った薄紅色の貝は どんな風に彼に見えてたんだろう
綺麗な淡い桜の色は 真っ白の、ものに見えてたのかな それとも薄く黄色を穿いた様にみえたのかな
私はお部屋の明かりに貝殻を翳しながら そんな事を取り留めなく考える]
(103) 2017/06/04(Sun) 23時半頃
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[星の煌めき、月影の濃淡 それらなら君は分かるのだろう 海の青、空の蒼。初夏を知らせる紫陽花の 鮮やかな藍なら伝えられるのに
身体を廻る血潮の赫も 春終わりから森を彩る新緑も 冬のお供の、橙色も
貴方の瞳には、映らない]
(104) 2017/06/04(Sun) 23時半頃
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[伝えたいのは、私の我儘 同じ景色が見れないのなら せめて、世の中にあふれる色の存在を知ってほしい 君の心の中で、七色の虹が描けるくらいに 私が絵が上手だったらよかったのに 色のセンスとか、有ればよかったのに
スケッチブックには、最初の猫の絵以外には 絵具を塗りたくった形跡がある それはデザインの形を、していない 何とか伝えようとした努力の証 一見、ふざけて色で遊んだようにみえるかもしれない でも、私は伝えたいと思ったの
当事者の知らない努力は、実を結ぶこともなく 一行に上達しない水彩画 レトロなサイドチェストに 隠されたスケッチブックは何冊も、何冊も]
(105) 2017/06/04(Sun) 23時半頃
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[これだけが、私の部屋の中で異質なもの ”おんなのこ”じゃないもの
最新の、スケッチブックの一番最後のページには 走り書きでこう書かれている]
(106) 2017/06/04(Sun) 23時半頃
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『空の青さを伝えるには 青い絵の具を使えばいい
夜空のお月様の色を伝えるには 黄色い絵の具を使えばいい
でも、赤が見えない人に 太陽の緋色を伝えたい時
どんな色の絵の具を使えばいいんだろう』*
(107) 2017/06/04(Sun) 23時半頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2017/06/04(Sun) 23時半頃
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― 現在 ―
[ 那由太も無事に到着した様だ。 内心大丈夫なのか、と心配していた所だったので、 奏多は胸をなで下ろした。
……彼の到着とついでに、何かが落ちたようで。 それを、結城が拾っているのが見える。>>93 ]
……――未来、か。
[ そう、自分も書かねばならなかった。 進路希望調査という、定期的に来る紙を。 奏多は、俯きながら、その紙を取り出す。
……紙は白紙だった。 嫌、その答えはほぼ決まっている。 決まっている……んだけど。 ]
(108) 2017/06/04(Sun) 23時半頃
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