270 「 」に至る病
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[しばらくあたしは 曇天の街をパパとふたり 家に向かって黙りこくって歩いていた。
だって、どういう反応をしていいか 馬鹿なあたしには分からなかったから。
どきどきしたし、嬉しかったし、しあわせだった。 だけど“愛している”を返すだけじゃ、 きっとあたしの気持ちは伝わらないと思ったから]
(154) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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……ねえ、パパ。雨が降ってきたよ。
[小さく呟いて あたしは鉛色の空を仰ぐ。
ぽつ、ぽつと雨粒が顔に当たって、 頬を流れ落ちていった。 ほら、これでもう 泣いているのがバレないでしょ。
結局、返すのはお決まりの文句だ]
(155) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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"I’m so happy being your daughter."
(156) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[血は繋がっていないけど きっとあたしは パパの家族になるために生まれてきたんだわ。
とっても愛してる。パパのことを。
娘として、伴侶として、家族として あなたを愛してる。
あたしに、愛することのしあわせを 教えてくれてありがとう。
……愛してくれて、ありがとう]*
(157) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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―― それから ――
[長い、月日が経った。
あたしの見た目の年齢は ちょうどママと同じ年嵩で止まった。
穏やかで、しあわせな日々が過ぎてゆく]
(158) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[パパとあたしは、親子であり夫婦だった。
週に幾度も身体を重ねたけれど、 結局、あたしがパパの子を授かることはなかった。
あたしが、いつ狂って死んでもいいように、 パパの子供を産んで 新しい家族を作ってあげたかった。
けど、そんなに世の中はうまくいかないみたい]
(159) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[ママの真似じゃないところが好き、って>>145 パパに言われても、あたしは変われなかった。
ママの真似をしてパパの助手になって、 大学の研究を手伝った。 ママのいなくなった穴を埋められるのは あたしだけのはずだから。
仕事でも、家庭でも、 あたしはいつでもパパの隣にいた]
(160) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[最近は段々と 記憶の辻褄が合わないことが多くなっていた。
朝食を食べていたはずが、午後になっていたり。 夕方大学にいたはずが、夜ベッドの中にいた。 あたしが、あたしでなくなっていく感触。
あたしはいつまであたしのままでいられるんだろう。 怖くて怖くて、堪らなかった]
(161) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[依存症という病は、 ママの形をとって私に現れているらしい。 正気のあたしでいられる時間は、 どんどん短くなっている。
ある日、目覚めると あたしは裸でパパのベッドの中で眠っていた。
記憶がないというのに、確かに愛された痕跡があって 首筋をなぞれば新しい噛み痕がある。 熱を持った胎を、さする]
……パパ。
[生まれたままの姿で、パパに抱きついた]
(162) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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パパ。あたし“も”愛して。お願い。
[すがるように、祈るように。 パパに身体を密着させる。 そのぬくもりに、目を細めて]
怖いの、パパ。眠れないの。 えっちしよ。 そしたら、怖いこと忘れられるから。
[読み聞かせをねだる子供のように、 情事を迫ったりも、した]
(163) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[時には、カレンダーの日付が 飛んでいる時すらあった。
パパとあたしの幸せな日常は永遠じゃない。 終わりの日が、きっといつかはやってくる。
あたしは、カレンダーに赤丸をつけて 「この日だけはあたしでいられますように」って 毎年お祈りをするの。
その日は、特別な日だから]
(164) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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―― 朝 ――
おはよう、ママ。
[写真立てに飾られた古ぼけたママの写真に、 いつも通りに朝の挨拶をする。
カレンダーを見遣って、安堵する。 ああ、あたしはあたしでいられたんだって 神様に感謝するんだ。
パパを起こさないように 足音をしのばせて台所へと向かう。
今日は大学のお仕事がお休みの日。 起こさずにゆっくり寝かせてあげたいし、 サプライズでお祝いしたかったから]
(165) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[だって。今日は、大好きなパパのお誕生日なの]
(166) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[小麦粉と卵と牛乳を目分量でボウルに入れて、 たっぷりのお砂糖と共に泡立て器で混ぜた。
型に生地を流し込んだら、オーブンの中へ。 今度は冷蔵庫の中の苺を取り出して 可愛いハート型に切ってゆく。
生クリームをボウルでいくら混ぜても パパの作ったホイップクリームのように 角が立たないけれど、 見た目じゃなくて味で勝負だからきっと問題がないわ]
(167) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[ほら完成。 いつも通りにちょっと不細工な パパのためのお誕生日ケーキ。
たくさんたくさんお砂糖を入れたから 今年もきっとパパは喜んでくれるはずだわ。
階段を下りてくる足音が響いてきたなら、 あたしは満面の笑顔でパパを出迎える]
(168) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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Daddy, Happy Birthday!
(169) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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ロウソクがいっぱいで、 ケーキが見えなくなっちゃったわ。
[パパと出会ってからの年嵩だけ増えた、 ケーキの上のロウソクたち。
クリームの付いた頬を、人差し指で掻いた]
(170) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[ねえ、大好きなあたしのパパ。 来年もあたしはパパを祝ってあげられるのかな。
もっといっしょにいさせてくださいって 毎朝、天国のママにお祈りしてるの。
きっとママはやさしいから、 あたしのお願いを聞いてくれるよね。 パパが寂しい思いをするのを ママも見たくないはずって思うから]
(171) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[ケーキの上にのったロウソクの1本1本に あたしたち家族ふたりの思い出が詰まってる。
何年前はこんなことがあったねって 小さな思い出まであたしは覚えてるよ。
パパもきっと、同じでしょう?]
(172) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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[大好きなパパ。 いつまでもいつまでも元気でいてね。 しあわせでいてね。
それがあたしの願いです]**
(173) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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/* 土曜日あんましこれないので、 こう、〆に向けてぐいぐいぐい〜〜〜〜っと!!!
遅くなってパパごめんね! そしてグスタフさんサンドイッチ申し訳ない!
パパをお祝いしてあげたかったの。そんなロル。
(-854) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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/* >パパ お昼で大丈夫だよ!!!むしろ夜でも大丈夫だよ!! 確実に着席できるのは明日の夜22時だと思うし!!!! 最近寒くなってきたからパパも無理しないでね。 身体大事にして寝てね♡
(-860) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時頃
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/* >グスタフ 親子は似てくるものですからね(◜◡◝) おやすみなさ〜〜〜〜い!!
他のペアの行く末をどきどきと見守るミルフィ
(-867) gurik0 2019/10/19(Sat) 03時半頃
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/* パパ……(天を仰ぐ) ひんひん、早めにお返事したかったんだけど コアタイムになっちゃいそう つらつらと愛をしたためまする……
(-924) gurik0 2019/10/19(Sat) 18時半頃
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/* 着席しました。 〆のつもりで書くぞ書くぞ書くぞ。 ウオオオオオオオオオ。待っててパパ!!!
(-945) gurik0 2019/10/19(Sat) 22時頃
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[とくん、と胸が高鳴る。
いきなりパパに頬を舐められるなんて 全然思っていなかったから、 あたしは頬を押さえて固まってしまう。
ちろりと唇から覗く蠱惑的で赤い パパの舌先に、心を奪われて]
もう、パパったら。
[>>199仕方のない人ね、と笑った]
(229) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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おうちのお砂糖はぜーんぶ使っちゃった。
[甘い方がおいしいもんね、と あたしは笑顔を浮かべながらパパに答える]
買い出し? うん、行こ行こ! 砂糖も、苺も買い足さなくっちゃ。 あたしはパパの作る苺ジャムが大好きなの。
[最近は、朝に正気でいられない日も多くって パパの苺ジャムをトーストに塗って食べることが どんなに贅沢な幸せなのかって、 あたしは改めて知ることになったんだ]
(230) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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[それから ふたりだけの小さなパーティをした。
ケーキを切り分けて、クラッカーを鳴らす。 パパのお誕生日を祝いながら、 他愛もない話に花を咲かせた]
ごちそうさま。そろそろでかけましょ。
[今日は大好きなパパの誕生日。 だから、最高の1日にしなくっちゃ]
(231) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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[空はどこまでも澄み渡っていて、 きらきらとした日差しが街路樹を照らしていた。 木漏れ日の下を、パパとふたりで歩く。
パパとあたしは、街の人からどう見られてるんだろう。 きっともう親子には見えないよね。 できたら夫婦とか――家族に見えていたらいいなって そう思うんだ。
パパとあたしは、しあわせな家族。 誰になんと言われようと、それだけは確かな事実で]
(232) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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[ 暗 転 ]
(233) gurik0 2019/10/19(Sat) 23時頃
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