250 ─ 大病院の手紙村 ─
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全く持って君の言うとおりだね。 何もかも奪われていれば、 こんな毎日を過ごさずに済んだのに。
僕たちは違うけど、どこか似ているよ。
ポケットの僕より
(星が散りばめられた夜空のような真っ黒な封筒 揃いの縁取りが施された便箋には、 前回と変わらず乱れの無い文字。)
(-52) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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/* チップ使用回数確認したら相変わらずアヤワスカのトップのままだった〜最推し〜 そして1年以上使われてないぽい。本当はここ入る時も悩んだんだよなあ…でも新しい子たくさん増えてて浮気してしまった(´ω`)
(-51) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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/* カガさんワタルくんは0回だから最近追加された子なんだろうか。 でも沼太郎も0回になってる、僕の村にも知り合いの村にもいた気がするぞ?
(-53) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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[応えたあなたに返る文は、あの時とは姿が違う。
真っ黒な封筒には、模様として星が描かれ 夜空を彩るように色とりどり散りばめられている。 それは女の子が好む可愛さとは少し外れていても、 明らかに子供向けのものだった。 揃いの便箋には、確かにメモ書きと同じ癖の文字。]
(-54) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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メイちゃんへ
とても素敵な幸せだね。 大人はいっぱい余計なことを考えるから、 ちょっとしたことを見逃してしまう。
メイちゃんのほうがずっと素敵だし、偉いよ。
でも、メイちゃんには昨日が無いの? それは、どうして?
僕には明日が無いんだ。 とても寒い日が来てから、手に入らなくなっちゃった。 僕たちは似てないけど、似ているね。
伊政 怜
(-55) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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[そう記された便箋と一緒に折り畳まれた紙切れには 笑顔の女の子の絵と、「ありがとう」の文字。 あなたに似てはいなく、 相変わらず上手くはない絵の彼女は、 ショートカットで、セーラー服を着ている。]
(-56) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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[二通を書き上げ、封筒に入れて手が止まる。 それぞれの顔も知らない宛先を想った。 二人は何を抱えているのだろうか。 どちらも想像の材料は存在したが、 浮かんだ以上の思考は憚られた。
ふと、思いついて兄の膝に一枚の紙を置く。 書かせようとしたわけじゃない、見せたかっただけだ。 そこに描かれているのは、二人じゃない誰かが描いた二人。]
(58) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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[どこか不思議な送り主は、上手に二人を描いた。 幼い言葉と、大人が描いたようなそれの差から 中学生くらいなのだろうかという勝手な想像。 お礼として返す絵の中の少女は、セーラー服を着た。 思うがままに表現した結果、短くなったその髪。
私も僕も、八国メイの姿を知らない。 似ないままに、似てしまったことも。 それが過ぎ去った過去だということも。]
(59) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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[ 昨日の気まぐれが形作る今日。 ]
(60) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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[ その扉の前に立つとき、何かを後悔する。
扉に手をかけるまでに数秒を要し、 不自然に廊下に立ち尽くす自分に気付き、 加賀はがしがしと頭を掻いた。息を吐く。
一瞬触れた取っ手はひんやりと冷たく、 それが余計に加賀を躊躇させた。踵を返す。
白い廊下を当てもなく歩き、 行き着いた自動販売機で、コーヒーを買う。
やけに味の薄いカップのそれに、 加賀は小さく顔を顰めつつも、さらに一口。]
(61) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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[ 廊下の壁に凭れて不味いコーヒーを啜りながら、 加賀は手持ち無沙汰に手帳を開いた。
例えば、他の予定であるとかを確認すれば、 少しは気が晴れるような気がしたためだ。
適当に開いた頁から、ぱらりと紙片が落ちる。 四角く折り畳まれたソレは、思いのほかまっすぐ、 白い床に向けて真っ逆さまに落下する。
加賀はかがみ、それを拾った。 昨日までに気まぐれに届いた手紙か、 或いは自分の書いた返事が残っているのだろう。
そう思い、拾ったまではよかったが、 どうにもその色に見覚えがない。青い便箋。]
(62) 2018/09/25(Tue) 23時頃
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[ ──また、何かの気まぐれである。
加賀はそう思い、折り目を開いていく。 幸運の手紙か、はたまた奇怪な問答か。 そういうものを予測し、上から目を通す。
消しゴムで簡単に消してしまえそうな濃灰。 加賀は、それを読んで確かに驚いた。
自分に宛てられた手紙だ。とさえ思い、 けれど、そんなはずはない。ありえないのだ。]
(63) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[ お父さんへ。そう綴られた手紙が、 加賀に宛てたものであるはずがない。 あっていいはずがない。
そこに記された文面に、 明らかに加賀ではない誰かにとっての父親を見て、 加賀は自分が抱いた驚きとも異なる感情が、 一体なにであるのかも分からない。]
(64) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[ 昨日買った便箋は、 あの部屋に置いてきてしまった。
何を書くかも決めぬまま、 何かを書きだそうとして加賀は気付く。
あの部屋に戻る。ということを考えると、 どうにも足も、腹の奥底もずしりと重く、 息が詰まるようであり、舌打ちさえしたが、 仕方なしに、来た道を引き返すことにする。]
(65) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[ 何食わぬ顔で部屋を訪ねた加賀を、 今日も、その子は歓迎してみせた。
何の土産も用意していなかった加賀は、 今日は何もないと正直に告げ腰かける。
昨日置いていった便箋を手に取り、 加賀は今日も、会話のかたわら文字を綴る。]
(66) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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誰かの子である君へ
手紙への返事をありがとう。 返事があるとは思わなかったので、 まさかと思い、非常に驚いた。
見抜くべき真実なんて、 ないほうが余程幸せだ。
当然、君が見たいのは、 私の笑顔などではないだろうし、 何と言えばいいのか、悩ましいが、 君の願いが君の手により、 叶えられることを祈っている。
残念ながら、私の言葉は嘘まみれだが、 願ったことは、気の迷いではあれ嘘ではない。 いつか君がお父さんと笑いあえる日が来ることを。
(-57) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[ 署名はない。それはただの白い便箋だ。 紙切れ一枚、黒いペンで綴られた文字。 所々、迷いでも生じたかのように、 黒色が濃く、点となり、滲んでいる。]
(-58) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[ 躊躇いながらも、加賀はそれを書き上げた。
加賀の手帳を介して届いたソレへの返事を、 他人の子の部屋に置いておく気にもならず、 届いた青い便箋と共に、それを手帳に挟み込む。
どうにも、この日の加賀の口は重く、 とにかく少年との会話以外の何かをしようと、 病室の窓を不意に開いた。 からからと、サッシを滑る音がする。
「 なにしてるの? 」とその子は尋ね、 加賀は短く、「 窓の外を見てる 」と答えた。]
(67) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[ 「 ──何が見える? 」と、 その子はどこか楽し気に尋ねた。
加賀の視界に映るものといえば、 さして珍しくもない木々の群れであり、 ほんのりと色づいた葉が風に揺れている。
それだけの、ありきたりな風景である。]
──蔦の葉が一枚。
[ 加賀の口をついて出たのは、 目前の風景とは何ら関係のない言葉である。
少年は、不思議そうに復唱した。 蔦の葉というものを知らないらしい。]
(68) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[ 「 きれいな公園があるんでしょう 」と、 さも知っているかのように、少年は言う。
芝生のきれいな公園がそこにあり、 鴨や、白い羽のきれいな鳥が池にいる。 季節の花咲く花壇が、彩りを添えている。
──と、その子は言ったが、 加賀の目にはそんなものはうつらない。]
(69) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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……そうだな。 犬の散歩をしている人がいる。 花壇の脇はそりゃあいい散歩コースだろう。
[ それもまた、実際の世界に存在しないものだが、 その子はにこにこと笑って頷いている。 言っただろう。君を取り囲む世界など嘘まみれだ。
今更、それを真実に塗り替えることなど、 加賀には到底できそうになく、……気分が悪い。]
(70) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[ また手持ち無沙汰になってしまい、 差し入れの一つもないくせに、 加賀はベッドサイドの抽斗を開け、 確かめるように、トレイの下を覗いた。
そこには、薄黄色の封筒が一通。 封に使われているシールをそうっと剥がし、 中の手紙を取り出して、加賀は笑った。
便箋は猫とは、一体。
それもまた、出した覚えのない──いや、 何の気なしに残した書置きの返事と見えたが、 どうしてそれが、この子の部屋に届くのだろう。
それもこれも、リ・ジアン様の思し召し。]
(71) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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九 風香様
丁寧なお返事をありがとう。
連れの部屋に返事が届いているのを見て、驚いた。 リ・ジアン様の気まぐれは、 うまい具合に作用してくれたらしい。
宣言通り、というべきか分からないが、 件のケーキを頂いたよ。美味かった。 実のところ、私は甘党ではないのだが、 あのケーキはぺろりと平らげてしまった。 連れにも一口やったが、喜んでいたよ。ありがとう。
蜂蜜入りの紅茶が人気メニューらしいね。 私自身はコーヒー党であるのだが、 ここに来なくなる前に、一度は飲んでみようと思う。 加賀
(-59) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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追伸 蜜蜂というわりに、なぜ便箋だけ猫なんだろう。 熊みたく、蜂蜜が好きという印象もないし、 どうにも気になって仕方がない。
(-60) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[ 白い便箋の罫線上に並んだ文字は、 届いた手紙に倣って、前のものより少し丁寧だ。 添えられたイラストもない、簡素な手紙が貴方の元へ。]
(-61) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[ 書き終えた手紙を白い封筒に仕舞い、 封をしようにもシールなど持っておらず、 結局のところそのままに抽斗の底に敷く。
まるで穏やかな日常の一片。 とでも言えそうな文面を書き上げたとき、 加賀の気分は少しばかり良くなっていた。
気を良くして、ベッドの上の子に、 「 飲み物でも買ってきてやろうか 」と尋ねる。]
(72) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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[あなたの再びに返るのは 今度はメモみたいな紙片じゃなく、それ用の封筒だ。 黒い背景に、色とりどりの星が散る子供向けのデザイン。 一際大きく中央に描かれた星の中には、 「一期崎さんへ」とあの時の筆跡で書かれている。
偶然により繋がれた縁は深まっていく リ・ジアンさまの橋渡しによって。]
(-62) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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お返事ありがとう。
それは納得だ。 僕も子供たちからリ・ジアン様のことを聞いたからね。
前の時も気になるところはあったのだけれど、 あなたはこの病院の先生なのかな。 もしかして、とっても偉い人とやり取りしちゃってる? 叶えたいものが無いなんて、 夢が無いのか幸せなのか。どっちなんだろう。 少なくとも、ギブアンドテイクを考えてしまうのは 大人らしい考え方だよね。
(-63) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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心配なら、大切なら気をつけてあげなよ。 僕だったら、叶うものならばなんだって差し出せるもの。 最も、勝手に手紙を持っていく何かの対処法なんて どうすればいいのか分からないけどさ。
リ・ジアン様の姿が分かったら、 また僕にも絵を見せてほしいな。
伊政より
[封筒と揃いの縁取りが施された便箋には、 それなりに長く文章が綴られている。 迷う跡一つ無く、綺麗な状態で。]
(-64) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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不幸の手紙じゃなくて安心しました。 なんて、幸運の手紙も不幸の手紙も 大人に聞いたことしか無いのだけれど。
病院に幸運の手紙なんて、中々合理的だと思わない? ここにいる人は、誰も彼も幸せが必要だ。 少なくとも、お医者様以外はね。 この前から届く手紙も、あまり幸せそうじゃ無い。 でもあなたはタルトを食べて幸せなのかな。
残念ながら僕もあれは食べたことがあるんだ。 お店で会っていたりして。 あのお店は季節で違うケーキを出してるって、知ってた?
少し年上な気がするあなたにも、 小さな幸せが訪れますように。
(-65) 2018/09/25(Tue) 23時半頃
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