233 冷たい校舎村5
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やっぱりこれじゃあ駄目か 開いてくれりゃ助かったものを
[ 窓ガラスを割るのと違って 扉をぶち破るのはこちらも痛そうで
── いやまったく! 手のかかる奴め。] …… 仕方ない 真面目にやってみるから、退いてろ
[ そう言って、自分も数歩下がりつつ 扉を向き直って、勢いを付け────、]
(49) 2018/02/17(Sat) 10時頃
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[ 数度、身体を打ち付けた後に ガコン と、 何かの壊れるような音がして、 安楽一記の身体はほんの一瞬自由落下を知る。*]
(50) 2018/02/17(Sat) 10時頃
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── 一階 空き教室 ──
[ 固く閉ざされた扉を開けば ぐらりと 体重を預けた身体が傾くのも当然。
ほんの一瞬、腹の中で臓器の浮く感覚がして 次の瞬間、床に打ち付けたはずの身体は 想定外の感触をまだ処理し切れずにいる。
…… だから、安楽一記がその部屋で はじめに見たのは、床に敷き詰められたが如く鎖。
道理で倒れ込んだ時に 妙に痛かった筈だと、奇妙に納得を覚える。]
(51) 2018/02/17(Sat) 10時頃
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[ ── それから、鼻につくにおい。
鎖まみれのこの部屋故に、 金属くさいのは当たり前 だなんて 逃避が必要な性格でもないし
またこれか と顔を上げた先、 漸く知った友人の成れの果て>>2:444。]
── ははは 腹の底に何を抱えてりゃ こんな死に方をするんだか
[ 真っ直ぐに立ち上がった安楽一記は 真っ直ぐに鎖の捉える先を見遣って
── なんとなく、100%じゃあなくとも 99%くらいはその筈だ という声を思い出した。]
(52) 2018/02/17(Sat) 10時頃
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[ 其処にいるのは自分だけではない筈だから、
まったく、俺がきれい好きなのを分かっていて こんな死に方をする奴があるものか── とは言わない。
どうせ此れもどこかへ運ぶと言うのなら きっと俺の仕事になるのだぞ── とも。]
…… まァ、しかし 解放されて、良かったじゃあないか
[ 手足のもげた身体など 持ち運ぶのには不便で仕方がなかろうが、
…… この世界。それとも、もっと異なる何かに
最早繋がれてもいない人形ならば、 どこにも連れ出せないということもあるまい。*]
(53) 2018/02/17(Sat) 10時頃
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/* 安楽一記、チップとか予約した時点では別に性格悪くなかったはずなんですけど 入村ロル書いてた時点でも、弟にだけめっちゃ酷いやつってだけだったんですけど、 どこで道が逸れたんだろうと思いながら、ここまで来たら生まれついてひたすら性格悪い奴貫きます
(-16) 2018/02/17(Sat) 11時頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2018/02/17(Sat) 11時頃
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[ …… それから、どうしたんだか。
ご覧の通り、淡々と穏やかに この惨状を受け入れこの後を考えた 安楽一記であったから、
やるべきことを済ますべく、 あっさりと動き出したのだろう。
いくら時計の針が止まったって、 俺達は凍りついて止まれやしないんだし。
幾つか言葉を交わすなり、 場合によっちゃ非難されるなりなんなり、 そういう一幕が確かにあったはず。]
(54) 2018/02/17(Sat) 11時半頃
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[ …… なんにせよ、 二つ目の人形をここに置きっぱなし ── という話にはならなかったろうから、
内心げんなりともしながら、 安楽一記は再び他人の血液に触れたのだ。]
…… 守屋を連れてったのと 同じ教室にでも座らせてくるさ
手足も添えてやった方が? ── いや、冗談。勘弁してくれ
[ 人の手足は体重の半分とも言うし、 一人で運ぶのも易かろう と、 淡々と、後片付けを進めゆく。*]
(55) 2018/02/17(Sat) 11時半頃
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弔いや哀悼などこの世に残された者の為でしかない 死んだ奴がその後の世界を知る由もないだろう つまりは存在しなかった未来 滅んだ世界の見る夢
(56) 2018/02/17(Sat) 12時頃
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自分の視野の外の世界だなんて はじめから存在しないのと同じだろう
(57) 2018/02/17(Sat) 12時頃
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安楽一記にとって、 自分の死はすべての終わり 自身が死んだ時点で世界線はぷつりと途切れ そこから先には何にもない
(58) 2018/02/17(Sat) 12時頃
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その個人に認識できない以上、 そんな未来は存在しないのと同じこと
(59) 2018/02/17(Sat) 12時頃
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ひたすらに主観で進む物語 幸も不幸も見えない結末 後日談などなくて構わぬ
(60) 2018/02/17(Sat) 12時半頃
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[ 犯人は罪を犯した人のことで、 黒幕は影から舞台を操る人で、 たとえば、此処が精神世界の中、 とかいうホラーじみた展開ならば、 実際に校舎にあたしたちは 監禁されているのだし、 別に、間違いでもなんでもなかった。
ただ、あたしが認めたくなかっただけ。 向けられる一通りの言葉には、>>2:419 こくん、と頷きをひとつ返しただけ。 ]
(61) 2018/02/17(Sat) 13時頃
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[ たったったっ、>>11 廊下を蹴る音が小気味いい。 ─── 日向ちゃん、て呼ぶ声に、>>12 ようやくあたしは、その足を止めました。 窓の外はまだ、真っ暗で、雪塗れで、 とっても寒そう、でした。>>6 ]
……うん、ごめんなさい あたしが追いかけたって意味ないよね みんなが帰ってくるの、待つことにする
[ 今度はあたしが、きよしくんに 引っ張られて帰ったんだとおもう。 ]
(62) 2018/02/17(Sat) 13時頃
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[ 帰らないひとを待つのは、 ほんとはあんまり得意なことじゃない。
あの日だってそう、 たった3日離れただけ。>>14 いってらっしゃい、を告げた四つ。 おかえりなさい、は結局言えてなくて、 ……でも、いまはきよしくんも 一緒に待ってくれるならと、 素直に引き下がったんだと思います。 ]
(63) 2018/02/17(Sat) 13時頃
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[ そのあと、二人でみんなの帰りを 教室の中の椅子に座って待っていました。 見えない姿は幾つかあったけれど、 あんまりにも遅くなってもと、 きよしくんと帰ってきた男子に託して、 報告のあった保健室へた向かいました。 きっと、女の子の中ではあたしが 一番最後だったかもしれません。 ]
(64) 2018/02/17(Sat) 13時頃
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[ ベッドにも限りがあるので、 ずるずると寝袋を引きずってゆく。 実瑠ちゃんの姿があったなら、 その隣に潜り込むか並ぶかして、 いないんなら椿ちゃんの横に ごろごろんと転がって眠ったのです。
目覚めは、早い。 まだ静かな部屋の中、 あたしはこっそり抜け出して、 寝袋の中に温もりだけを残しました。 みんなの寝顔チェックをしてから、 保健室の外へと出たのでしょう。>>17 ]**
(65) 2018/02/17(Sat) 13時頃
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/* マネキン部屋に鍵かけちゃってほんとごめんのポーズ
そうだよな窓と扉じゃ強度違うわな……。 急いでいるとリアリティが欠けてたいへんよくない
(-17) 2018/02/17(Sat) 13時頃
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[落とし物の黒いタオルは黒岩君のものらしかった。 黒岩だけに黒いタオル……なんちゃって。]
あ、黒岩君のだったんだ。 じゃあ、中にいるのは黒岩君?
[確かにそれなら納得がいく気がした。 この空き教室と一番縁が深いのは黒岩君だろうから。]
え。黒岩君がいるなら、開けてもらえばいいんじゃ。
[ドアが開かないことを確認した安楽君が、ぶち破るなんて言い出した。 教室の窓に椅子をぶつけたあたしの言うことじゃないけど、なにもそんな物騒なことをしなくても。
もしかして、と黒岩君は既に。と考えなかったといえば嘘になる。 だけど、そんな可能性を考えたくなかった。 黒岩君開けてよ、なんて声をかけたら返事が来ると思いたかった。]
(66) 2018/02/17(Sat) 13時頃
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[だけど、安楽君がドアを蹴っても、 体当たりしても、 中から返事は聞こえなかった。
返事の声よりも先に、安楽君の体がドアを壊してた。]
(67) 2018/02/17(Sat) 13時頃
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── 前日譚 ──
[ ………… 、 そうだ死のうと思い立った。 そのためには準備が必要であった。
方法は慎重に選ばなければならない。 失敗してしまっては目も当てられぬ。
列車に飛び込めば助かるのは 十人に一人と言う。
比較的良い数字にも思えたが、 高校にも徒歩で通っている身。
日常に何ら関係のない場所で死ぬ等 あまりにつまらぬ結末だと思った。]
(68) 2018/02/17(Sat) 13時半頃
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[ 色々と考えたが、結局 高所から飛び降りる事に決めた。
二十メートルあればほぼ死ねると言うが 二十メートルの高さにも心当たりがない。
家の病院から飛んでやろうかとも思ったが、 そこまで家に思い入れもなかった。
…… 学校からというのはどうだろう。
高さは全く持って足りちゃあいないが、 終わりを迎える場所としては面白いような気がした。
幸いな事に、グラウンドの真上を避ければ 正しくコンクリの地面に叩き付けられるだろうし 障害となりそうな樹木や駐車スペースもない。]
(69) 2018/02/17(Sat) 13時半頃
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[ 三、四階の高さから飛ぼうとする場合、 発見が遅れる事が非常に重要になるらしい。
それから、飛ぶ時の姿勢。大雪の日を避けること。
誰も外を歩きたがらないような寒い夜、 遺書もなく屋上から飛んでやろうと決めた。
即死が叶わなかった時や 土壇場で足が竦んだ場合を考えて 或る薬をくすねておいた。
飛ぶ暫く前に飲み下すことにしよう。 気分が高揚していりゃあ少しはマシだろう。]
(70) 2018/02/17(Sat) 13時半頃
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[ …… 家族は俺に寛容である。 目下の問題は、長男が高校生になって 医者になる気など更更ないと言い出した事であり、
其奴が探偵ごっこをしていようが、 死ぬ段取りを整えていようが、
同級生の噂も、与えられた謎のヒントも 計画された終わりも、全て視野の外であるから 彼らの世界に存在等しないと同じこと。
家業に興味が芽生えたのならば幸い と、 すこぅし浮足立って遠巻きに見ているくらいだ。
俺が死に、管理の杜撰さが昭らかになれば その後の家は大変な展開を迎えるのだろうが、
その時俺は死んでいるのだから関係あるまい。]
(71) 2018/02/17(Sat) 13時半頃
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死んでしまえば終いにもなるさ 俺が死ぬってのはつまり、 ………… 世界が滅ぶのと同じこと
(72) 2018/02/17(Sat) 13時半頃
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[ …… 時の止まった今を生きる安楽一記に 夜中にコートを着込んでそうっと家を抜け出し、 目を爛と光らせ屋上へと上った記憶など全くない。
しかし、そう言うのは誰も同じ。 まるで自覚のないような顔をして、 一体誰が死のうなどと言ったと騒ぐ。
面白い世界じゃあないか と言う。 口の中はカラカラに乾いている。
まるでミステリの世界。 強運の星の下生まれた安楽一記の人生に どう足掻いたって存在しなかった事件。
面白い世界であるのは事実としても、 探偵見習い、一刻も早く犯人を見つけよ。 名探偵が如く、高らかに笑い指を突きつけろ。]
(73) 2018/02/17(Sat) 13時半頃
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安楽一記はこんな後日譚を望んじゃあいなかった ── と、一刻も早く自身のその手で証明せよ
(74) 2018/02/17(Sat) 13時半頃
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そうして漸く、整合が取れる 嘘など一つもない世界へ還る *
(75) 2018/02/17(Sat) 13時半頃
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[勢いよく安楽君の体が部屋の中にダイブする。]
安楽君、だいじょう、
[大丈夫かと駆け寄りかけた、あたしの声も足も途中で止まる。 鼻をつくのは昨日も嗅いだサビの臭い。 ドアの向こうには、異様な光景が広がっていた。]
……よくない、よ。
[鎖で覆われた部屋。 鎖に殺された、多分黒岩君だったマネキン。
この世界で死んでも、現実で死ぬわけではないと思うって昨日芽依ちゃんは言ってた。 その言葉が正しいなら、こんな苦しそうな、酷い死に方をして。 それなのに本当には死なないってことになる。
死んでほしいわけじゃなかった。 だけどこんな苦しい思いをして、それなのに死なないなんて、そんなの。]
(76) 2018/02/17(Sat) 13時半頃
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