265 魔界娼館《人たらし》
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…あなたは、《花》にも命令をしないのですね。
[ そこはとても、 心に入ってくるのだ。]
(-90) 2019/05/17(Fri) 10時半頃
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[ 放り込まれるようにして導かれた部屋は、先ほどの白檀の間とまるで正反対の、暗い色調に満たされていた。 それでいて、葬送の場のような静謐さはない。 設置された器具たちが声高に恐怖を煽るかのようだ。
肉体を愛でる方法はさまざまだとか。
"彼"が、わたくしに何の資質を期待しているのかはわからないけれど、わたくしの目は、この部屋の中で、武器になるものを探していた。*]
(-91) 2019/05/17(Fri) 10時半頃
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君のその、高根の花な風情を喜ぶ客も多いと思うよ。 仕えたくなるか、折りたくなるかはそれぞれだろうけど。
[高貴かつ近寄らせまいとする態度は、多くの魔物を惹きつけるだろうと予言する。事実、自分その気質をこそ愛でたいと思っているのだ。]
命令はしないけれど、することはするよ? 君を《花》として、もっと魅力的にしたいもの。
[それが望みだと告げて、宙を滑り彼に近づいた。]
(-92) 2019/05/17(Fri) 11時半頃
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[部屋の中を見回せば、壁に作りつけられた棚の上に様々な小道具が載っているのに気付くだろう。 革や木の枷。束ねられたロープ。細い竹を束ねた短鞭。その他、何に使うのかわからないようなものまで。
だが、彼がそちらへ近づくより先に、指を挙げて己の一部を呼んだ。 彼の服のポケットからするりと飾り紐が伸び、彼の足に絡みつく。 もう一端は寝台の柱に絡んで、釣りあげるように彼を引き寄せた。]
皆へのお披露目前に、君の体を整えよう。 君がちゃんと自覚を持てるようにね。
動くと危ないから、固定させてもらうよ。
[指を鳴らせばさらに三本の紐が滲むように空中に現れる。 紐たちはそれぞれにうねり飛んで彼の手足に絡みつき、柱と繋いで彼の体を仰向けに開かせた。 仕上げとばかり幅広の帯が現れ、彼を腰のあたりで寝台に括りつける。]
(-93) 2019/05/17(Fri) 11時半頃
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[準備の整ったところへ漂い寄り、彼を見下ろした。]
贈った服は気に入ってくれた?
誰かがこんなことを言っていたんだよね。 「服を贈るのは、脱がせるためだ。」って。 わたしも、そう思う。
[彼のズボンに指をかけ、足先へ向けて下ろしていく。 大して力を掛けたとも見えないのに、生地が細い悲鳴を上げて裂けた。 程なく、裂かれた服の残骸が舞い落ち、彼の下半身を露わにする。]
(-94) 2019/05/17(Fri) 11時半頃
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下着は付けない主義だったっけ? それとも、わたしを待っていてくれた?
[淡い色の茂みに触れ、埋もれている柔茎を指先で持ち上げる。 顔を寄せ、その先端に口付けまでした。*]
(-95) 2019/05/17(Fri) 11時半頃
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あの時? ……いや、言うほど優しくした覚えなんかねえぜ。
[自分がしたことと言えば、他の魔物達と共にステージの上で彼女を抱いたことぐらいだったと思う、が]
仕事とはいえ、無理させて体壊しちまったらここにいりなくなっちまうだろうしな。 それは困るだろ? 俺が気遣うったらその程度だよ。
したいこと?そりゃあ、お互い気分が乗ってりゃ、あんたの事、もういっぺんゆっくり抱いてみたくはあるが… 随分疲れてるだろ、今日は。
[そういう場所なのだから金を払って抱き、対価に抱かれる場所。それだけのことのはず。ただ、あまり真っ直ぐに聞かれると、客ではありながら、少しばつが悪くはあった*]
(-96) 2019/05/17(Fri) 13時頃
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客が 仕えたくなる?
[ それは考えたこともなかった。 魔物というのは、自尊心と支配欲が強いものだとばかり思っていたから。
"彼"は前にも、「君は今のまま、魔物を惹きつけ続ければいい」と言っていた。 事実、それがわたくしの"武器"なのだろうか。
それを教える"彼"の真意はわからない。]
(-97) 2019/05/17(Fri) 14時頃
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[ 吟味している余裕もなかった。 わたくしがおとなしくしているつもりはないと見抜いていたのか、"彼"が何か発動させるような仕草をすると、わたくしの足首に飾り紐が絡みつく。 残りの四肢にも蛇めいた筋が巻きついた。
浮いてさえいなければ、こんな簡単に引っ張られることはなかったろうが、摩擦のない現状、あっという間に、寝台に架けられてしまう。]
…ッ
[ 痛みはない。 だが、こんな屈辱的な姿勢をとらされるだけで、息は乱れた。]
(-98) 2019/05/17(Fri) 14時頃
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[ 悠然と漂ってきた"彼"が格言めいたことを言いながら、一度、袖を通しただけの上等な服を裂く。
布地の悲鳴がわたくしの心を誇張して反映しているようで、いたたまれない。
下着の件については弁明しないでおいた。 それを脱がす楽しみを"彼"から奪ってしまったのだとしても、悔いはない。]
(-99) 2019/05/17(Fri) 14時半頃
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[ "彼"の指でやんわりと触れられて、改めて花にも雄蕊があることを意識する。 軽く淫靡なあいさつに、悶えが目覚めさせられてしまう。
客にもこうするのだという手本を示しているのだろうか。 否、"彼"は《花》としてのお披露目前に、君の体を整える、と言っていた。
どういうこと か。
指を握り込めば、傷から血が滴る。*]
(-100) 2019/05/17(Fri) 14時半頃
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[血の匂いが強くなって、彼の手に視線が行く。 赤く汚れた手を取って、舌先で舐めた。]
あとでティムからもらった薬を使ってみるかい? 今は血だけ止めておこうか。
[手を開かせて、これもどこからか取り出した布を巻いておく。 白い布はすぐに赤く染まったが、それ以上染みは広がらないようだった。]
(-101) 2019/05/17(Fri) 15時頃
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[彼の耳を撫で、彼の目の前で指を鳴らす。 手品のように現れたのは、薄い刃を持つ剃刀だった。 指先でくるりと回してから手の中に納め、彼の足の間へ戻っていく。]
そうだ。 君も、自分がなにをされるか見たいよね。
"光は留まり、その姿を映し出す"
[途中、思いついたように言って、寝台を支える柱の間を指さす。 言葉と共に薄い霧のようなものが現れわだかまった。 ぼんやりと渦を巻くそれが、次第に明瞭な像を結んでいく。 それは寝台に展翅された彼の姿だった。]
(-102) 2019/05/17(Fri) 15時頃
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[いつの間にか足元には別の小道具も現れていた。 液体の入った小さなボウルとブラシのセットだ。 剃刀を一旦横に置いた後、ボウルとブラシを手に取って、鼻歌など歌いながらボウルの中身を泡立て始める。]
冷たかったらごめんね。
[なんて一言をおいてから、泡を纏ったブラシを彼の足の間にあてがい、細かく動かしながらさらに泡を立てて広げていく。 敏感な部分も柔らかな場所の裏側も後ろの窄まった部分にも、まんべんなくブラシを当てて泡を乗せていった。]
(-103) 2019/05/17(Fri) 15時頃
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[ ここで治療する気はないらしい。 わたくしを仕立て上げるのは、血よりもなお、そそるらしかった。
彼の手には、今や剃刀があり、不定形の反射鏡が、わたくしの焦燥を煽るために像を結ぶ。
ボウルに盛り上がったきめ細かな泡は、石鹸のそれではない。 メレンゲにも似た泡のかたまりが下腹部に乗せられる。 柔らかなブラシがそれを伸ばし、陰部をくりかえし掠めていった。]
(-104) 2019/05/17(Fri) 15時半頃
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[ "彼"のしていることが何の前準備だか、さすがに予測はつく。
何が楽しいのかは、理解できない。
不安とやるせなさばかりが募る…と思っていたのに、 巧妙な刺激に、拘束されていても腰が跳ねてしまう。 さきほど接吻けされた先端が白を頂く塔となって屹立していた。*]
(-105) 2019/05/17(Fri) 15時半頃
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[綺麗に泡に飾られた中心に、肉の塔が立ち上がる。 その先端をくるくると撫でてからブラシを置いた。 改めて、剃刀を手に取る。]
さあ、綺麗にしようね。
[端から丁寧に、肌に刃を当てていく。 立っているものもつまみ、柔らかく垂れている袋も引っ張って伸ばし、どんな細かなところも見逃さずに剃り上げていく。]
(-106) 2019/05/17(Fri) 15時半頃
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[最後に泡と毛を拭い落し、濡れた布で綺麗に拭き清める。 それで完成だった。]
見てごらんよ。つるつるできれいだ。 君の可愛いところが全部よく見える。
ほら、ここも。 皺の一つ一つまで丸見えになったよ。
[足の間を指で押し開き、慎ましく窄まっている箇所へ息を吹きかけた。*]
(-107) 2019/05/17(Fri) 15時半頃
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[ "彼"は自分の手を泡まみれにして、容赦なく、嬉しげに、 時折、偶然の産物のような快楽のおこぼれを感じやすい場所に与えながら、 わたくしの身体を《花》として加工してゆく。
不可逆的な処置ではない。 けれど、他者に見せることを前提として改変されているという認識が、わたくしを縛る。
実質的に、奴隷の烙印と同じようなものだろう。
ちゃんと自覚を持てるように、と"彼"は言った。 その目論見は、成功しつつあるといえた。 諦観もまた自覚のうちであるならば。]
(-108) 2019/05/17(Fri) 16時半頃
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[ わたくしは、小刻みに震えていた。
無力感が底辺を流れていはしたけれど、正直なところ、わたくしは、おそらく生まれて初めて体験する恥毛剃りの危うい気持ち良さに吸い込まれそうだったのだ。
髭をあたるのと似ているようで、まったく異なる。 剥き出しになった毛本の感覚器が"彼"の指の滑りをダイレクトに伝えてくる、その快感たるや。]
(-109) 2019/05/17(Fri) 16時半頃
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[ そもそも、施術そのものが、一個の作品めいていた。
四肢を拘束するのは無骨な革紐ではなく、手の込んだ飾り紐で、薄い刃が肌を滑って恥毛を切断するかすかな音も、後戻りできない進行を知らせて昂奮を募らせる。 クリームめいた白い泡の下からあらわれるのは生まれ変わったような肌という構図。]
…見ずともわかります。
[ 完成したと"彼"に促されて、返す言葉は恬淡としたものだったけれど、汗の匂いは甘い。*]
(-110) 2019/05/17(Fri) 16時半頃
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[まさか、これだけで彼が喜ぶなんて思わないだろう? けれども彼の肌は上気し、微かに汗ばみさえしていた。 指先に伝わる震えも、甘やかなものだ。
それは感じる場所をつまんだ時だけではない。 仕上がりを確認するために、肌を撫でた時にも反応がある。]
君はやはり、《花》となるべく生まれついたんだよ。
[滑らかに整えられた場所の感触を楽しみながら言う。]
初めて見た瞬間から思ったもの。 君を愛でたい。育ててみたい。 どれほど美しく咲くのか見てみたいって。
(-111) 2019/05/17(Fri) 17時頃
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[浮遊の粒子の力を借りて、彼に重さを掛けることなく覆いかぶさる。 顔を挟むように両手を添えて、唇を軽く啄んだ。]
あとは、君の内側も整えていこうか。
触れられただけで感じるように。 入れられれば乱れて蕩けるように。 縛られ、打たれても、甘く啼くように。
そうだ。 お仕置きをする約束だったよね。
[微笑んで、指を伸ばし振る。 彼の手首から伸びる飾り紐が、柱からほどけて落ちた。*]
(-112) 2019/05/17(Fri) 17時頃
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[ "彼"の思い込みに口を出すことはしなかった。 ただ、"彼"の物言いはいつもどこか呪詛めいていると思う。 優しく言い聞かされ続けているうちに、刷り込まれてしまうような。]
初めて… ですか。
すみません、わたくしは覚えておりません。
[ 最初に声をかけられた場面は思い出せる。 そのときにはもう知らない相手ではない=常連客だという認識だった気がしたが、出会いはどのタイミングだったろう。 どうして"彼"の名前はすぐ記憶からこぼれ落ちてしまうのだろう。]
(-113) 2019/05/17(Fri) 17時半頃
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[ "彼"が身体の位置を移動して上をとる。 奪われた接吻けは軽く、無重力というよりも夢の中のできごとのようだった。]
お仕置き… あなたが?
[ さっきから"彼"は再三、それを口にしていたけれど、 わたくしは、"彼"が、わたくしの態度を女将に申し立てて処罰を促すのだとばかり思っていた。 それで女将が、やはりわたくしは《花》向きではないと考え直してくれればいいと 、そんな気持ちであったのだ。
だが、"彼"のいう「お仕置き」は「縛られ、打たれても、甘く啼くように」からシームレスで導き出されるものであるらしい。]
(-114) 2019/05/17(Fri) 17時半頃
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[ 手首の拘束を解かれれば、わたくしの上体はゆっくりと落ちる。 とっさに彼の髪なり耳なりを掴もうと、怪我していない方の手を伸ばした。]
──… 悪魔
[ ただそれだけをつぶやいて。*]
(-115) 2019/05/17(Fri) 17時半頃
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いいよ。 思い出さなくて。
だって君は、これから生まれ変わる。
[過去などいらないと囁く。]
(-116) 2019/05/17(Fri) 17時半頃
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[落ち行く彼が手を伸ばす。 それは水に沈むにも似て緩慢で、 救い求めるにも似て切ない。
唇が紡いだ言葉が耳に残る。]
そのとおり。
[肯定し、彼の背を掬い上げ、 伸びてきた手を掴んで引き剥がす。
その時、不意に身体を浮かせる力が弱まった。]
(-117) 2019/05/17(Fri) 17時半頃
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[落ちる、と悟った瞬間に彼の残りの縛めを解き放つ。 短い距離を落下しながら彼を抱き寄せ、巧みに重心を操った。
彼を受け止める形で背中から落下する。 2人分の重さを受け止めて、寝台が軋んだ。*]
(-118) 2019/05/17(Fri) 17時半頃
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[ 背を抱かれ引き寄せられる。 顔が近い。
だが、次の瞬間にはふたび失墜していた。 今度は"彼"も一緒だ。
悪魔にもままならぬものはあるようだった。]
(-119) 2019/05/17(Fri) 18時半頃
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