167 ― さいごの手紙 ―
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ナナボシのイアン殿
流星群見るのをユーフォに邪魔されだこだぁながったのだが 河の神様から手紙ば届いたさ これは嘘でも冗談でも筆違えでもネェ 本当のまことのお話だ
住所を変えたんに 10年も前の友人がら 偶然にも手紙ば届いた事もあったし いつか釣った魚も 指輪を飲んどったことがあったし
奇跡はきっと 満ち溢れとるものだ
ナマズ
(-26) 2015/09/03(Thu) 23時半頃
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こんにちは、ベイル・ストリートのジョンソン美容室です。皆様へぜひお知らせしたいことがあり、ご連絡いたしました。
もしよかったら、当店からのメッセージを番組で流していただけませんでしょうか。広告料については、以前にお願いした時と同じでよろしければ、すぐにご用意いたします。どうぞ、ご検討をお願いいたします。
メッセージは以下のようなものです。
(-27) 2015/09/03(Thu) 23時半頃
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『皆様こんにちは。暑い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。ベイル・ストリート771のB、ジョンソン美容室は普段通りの営業中です。パーマネント、カラーはもちろん、ちょっと前髪を整えたい。そんな時にもどうぞお気軽にお越しください。』
(-28) 2015/09/03(Thu) 23時半頃
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昼休み。わたしは食事もそこそこに、余った顧客用の葉書にメッセージを書きつけた。午後の営業まであと十五分。葉書を出して戻って来るには、少し早歩きをしなければならないだろう。
終わりに近づいた夏の日差しに目を細めながら、わたしは通りへと踏み出した。
(19) 2015/09/03(Thu) 23時半頃
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メルヤへ
ああ 私も星落ちる話は知ッとるのさ おめさんが1日、腹を空かせずに済んだ様で安心している
[何行か、筆に迷った様に 塗り潰された痕跡がある 最終的にそれは、上の文と下の分の間に横たわる 呑気な顔をした黒い魚の絵となって 手紙の中を泳いでいた]
もし母さんに会いたぐなったなら 之を使ゥて行くと良い もし狭い処が嫌だったのなら 双眼鏡を持って眺めの良いとこ行くのも良い
私は星と川に挨拶をしに行ぐから
(-29) 2015/09/03(Thu) 23時半頃
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大丈夫だ 怖がるこたァ無いのだ ヌマ爺ぁおめさんの飲んでるのと同じ空気を飲むし おめさんの見た空と 同じ空 見てる そのこたァ 忘れちゃいない
まんがいちにも 宇宙で天の河に溺れたら 釣り上げでやっからな
まんがいちにも なぁンにもなかったら また美味い干物を送ってやる
かわいいメルヤや どうか幸せで
西のヌマ翁
(-30) 2015/09/03(Thu) 23時半頃
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[封筒の中には、小さな干物が1匹 それからシェルターの当選葉書 ヌマタロウ という名の後には 筆で『譲渡』と書き足されていた]
(-31) 2015/09/03(Thu) 23時半頃
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フランク殿
懐かしいものだ 手紙をもらってから思い出したのだ 川の上流の怪奇の話 おめさんが聞きたがって 水に右足突っ込んで 背中から倒れたよなこと
実にいい川だ 汚れも無く 星落ちてくるというのに身投げした身体を見る事もなかった けがしたくないと 人々が思うよなところなのだろう 時々ブーツだの軍手だのは釣り上げるがね
おめさんの本 思えば読んだ事が無かったのは申し訳ない話だ えすえふなんざ 爺の頭には難しいが なんぞ思っとったがね 現に双眼鏡の使い方にも迷うようだが 本屋があいていれば 買ってから 星と川に挨拶しに行こうかと思う
(-32) 2015/09/04(Fri) 00時頃
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おめさんも見ていたか ほんに嬉しいことだ 私の頭の様にちりちりはす抜けてはない 綺麗な星空だったがね おめさんの手紙を書いた気持ちを少し考えたりもしてた 感傷 不思議な言葉だ
不安定な状況だというのに おめさんの手紙の文字は 落ち着いたようだ ある意味 精神は私よりもこなれているやもしれんな
そう 終わる時はみな一緒 愛する川や かわいい親類の娘も 一緒らしく それを思うと もう受け入れたと思ゥだのに 私はゆらゆら揺れてしまうものだ きゃつらに先が無い事が哀しいのか はたまた共にいけるのが嬉しいのか
(-33) 2015/09/04(Fri) 00時頃
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どちらにせよ 今はみな 同じ空気を飲んでいる その 私のなかの みなに 君を取り戻せて良かった 次は忘れる事は無ェがらな
フランク、どうか幸福で
ヌマタロウ
P.S もう何処に行ったのやら 見かけたら挨拶しといてくれ 味のある いい猫だ
[封筒の中には、口をかっと開いたままに乾燥された 大きめの干物が1匹、同封されていて。
そこには猫か何かが齧ったような痕跡が一つ、残されていた]
(-34) 2015/09/04(Fri) 00時頃
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[少ない荷物を纏めていると、 小さな紙がひらり、舞い落ちる。
あの猫が『サイン』を拒んで 暴れまわった時に、つけた足跡が ちょうどよく下に残っていて。
なんだか、笑ってしまって。 ついでに一つ、したためてから
それを風に乗せて、放った。 あの猫に届くかはわからないけれど]
(20) 2015/09/04(Fri) 00時頃
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星墜つる 永き静寂 目の前に
思ひ返す刹那 流星群のよに
ヌマタロウ
(-35) 2015/09/04(Fri) 00時頃
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[川は潮に飲まれつつある。 だが、まだ、姿を消したわけじゃないから。
上へ、上へ、消える前に––––]
(21) 2015/09/04(Fri) 00時頃
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