190 【身内村】宇宙奇病村
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[コンピュータールーム通路の緊急隔離シャッター。それを降ろすことで、ハッチの外にもうひとつの小さな密室を設けることができる。まずコンソールルームからハッチの手前に侵入し、シャッターをおろす。できあがった密室にオゾンを吸入。内部のオゾン濃度が十分に上がった状態で、ハッチを開き、ヤンファを救助。脱出する際は、その逆を行う。コンピュータールーム内のオゾン濃度が自然に安全値を下まわるよりかは、はるかに早い。しかし、どうしても時間はかかった。
救助したヤンファは、意識不明の重体。全てはアシモフの治療に託された。]
(6) 2016/05/18(Wed) 01時半頃
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[エスペラントもワレンチナに倣い、シルクに呼びかけてみる。 しかし応じない。]
…… 心配じゃな。様子を見にいったほうが良いかもしれん。
[エスペラントは傍らのワレンチナを見上げた。**]
(7) 2016/05/18(Wed) 01時半頃
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― 現在 / 医務室 ―
Moon river, wider than a mile〜♪
I'm crossing you in style some day〜♪
[寝台が並ぶスペースに、控えめな音量で音楽が流れている。ワクラバは、隈の浮かんだ目で、寝台の上に横たわる2つの保護膜を見つめていた。中で眠りについているのは、ナユタ。そしてシルク。
ワクラバは、手元に携えたクリアバインダーを開き、なかに収められた手紙を1枚、1枚、丁寧に捲ってゆく。最後のページに収められた手紙(>>2:137)は、文章が途中できれている。そこから先に、どのような文字が綴られるはずだったのか。繰り返し読んでも、答えは見つからない。]
……いいぜ、なんだって答えてやるよ。キューティ。 なんだってな。
[保護膜のなか、シルクはただ静かに寝息をたてている**]
Old dream maker, you heart breaker〜♪
Wherever you're going〜♪
I'm going your way〜♪
(8) 2016/05/18(Wed) 02時半頃
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『じゃあ……もしも僕が、男の子になったら。 きみはずっと、僕と一緒にいてくれるの?』
[目の前には、瞳に涙を溜めた恋人がいる。 彼女は何も言わずに、ただ肩を震わせている。 ワレンチナは眉尻を下げ、諦めたように微笑んで見せた。]
『うん……いいよ。大丈夫。……さようなら。』
[言って、席を立つ。彼女は声を立てずに泣いた。]
(泣きたいのは僕の方だ―― 先に好きだと言ったのは、君の方じゃないか。 今さら。今更だ。
"やっぱり女の子同士で付き合うのは間違ってた"だなんて。)
(*0) 2016/05/18(Wed) 10時半頃
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[幼い頃から、女の子らしいものを欲した事がなかった。 かといって、嫌悪もなかった。単純に、それよりも好きなものが多かっただけだ。
学会の重鎮を両親に持つエリートで、かつ性別を感じさせないワレンチナは、幼い頃から周囲の少女達にこう持て囃されてきた――『王子様』。
そんな王子様に初めての恋人ができたのは、14の時。相手は取り巻きの一人だった。女同士。けれどもそんなことは障害でない。今日日LGBTは珍しいものでもなんでもないし、社会的にも認められている。しかし、最初は遊び半分だったワレンチナが彼女に対して幼いながらも真剣な愛情を抱き始めた頃、夢見がちに目を潤ませていた少女の表情には、逆に陰りが射し始めた。 二人の付き合いは、そう長くは続かなかった。]
(*1) 2016/05/18(Wed) 10時半頃
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[初めての恋人と別れた後、ワレンチナはしかし再び女性と付き合った。そうしてまた、ダメになった。 そうして、その次は男性の恋人ができた。ワレンチナは自身が女性であることの喜びを、初めて感じることができた――が、それなりの時間を共に過ごした後、どこにでもありがちな理由で、彼とも別れた。 そうして悩み、次はまた女性、男性、女性、男性……。
そんな事を繰り返すうちに、ワレンチナは性別というものを気にしなくなった。 僕が女だろうが男だろうが、僕はただ、恋をする。男にも、女にも。遊びと割り切った関係さえ持つ。 それでいい。それが僕の、『在るがまま』の姿なのだから。
そうして、長いことそのようにして過ごしてきた。 自由に、飄々たる『王子様』として。]
(*2) 2016/05/18(Wed) 10時半頃
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[そして。 突然投げかけられたシルクの言葉は、ワレンチナの深く柔らかな部分を緩やかに刺した――最も、それが奇病の感染した瞬間であるということに、ワレンチナは無論気がつくことはない。 けれども、何れにせよ。
『もし、ボクが男の子になったら』。 『交際相手もしくはそれに類するものに』。
それはワレンチナにとって、一番古く、消えない傷をなぞる言葉だった。未だ幼かった自身の、それでも真剣だった初恋において、戸惑いと葛藤とを打破せんと溢れた、祈りのような言葉だった。
それを投げかけた、男でも女でもない――それ以前に、まだほんの子どもだったシルク。 けれども、そうして。 ワレンチナは、無意識にシルクの事を『彼』と呼んだ。]
(*3) 2016/05/18(Wed) 11時頃
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[「オゾン中毒?!!」 ワクラバが担いできたヤンファを見てそうアシモフが困惑したのはもう2日前のこと。あの時はナユタのことを集中して考えたくて、船内の通信をほぼシャットアウトしてたせいで事態の詳細を知らなかった。
彼女は運ばれてきた時点で、既に生死の境だった。多量のオゾンを吸引して生きていられるわけがない。 やれることは多くない。まず迅速に肺と肌、血液の洗浄を行う。並行して心臓を保たせる。彼女のいじられた体がどれだけ耐えられるかわからなかった。呼吸が止まる。
処置が全て終わっても、彼女のバイタルは弱まっていくばかりなのはわかっていた。あとできることは、彼女の現状のまま保存しておくこと……。]
(9) 2016/05/18(Wed) 11時頃
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(馬鹿馬鹿しい)
[想像してしまったのだ。弾かれるように。 他種のパートナーを得る事で性別を決定し繁殖するボムビークス種、そのシルクが自身を女性のパートナーとして選び、成人し、自分と子を成す。その未来を。]
(あんな、子ども相手に)
[無論、これまで生活を共にしてきた期間の中で、シルクを異性として意識したことなど全くなかった。 自身と同じように、曖昧な性を生きるボムビークス種。その若き天才児の選ぶ未来がどういったものか、ただ単純に楽しみだった。名も知らない花の生長を見守るような、そんな心地だった。けれども。]
(僕は、期待したのだ。 自分の性について、浅ましい期待を。)
[胸が痛かった。この痛みは何のための痛みか? しかし妙な事に、思考は非常に冴え冴えとしている。]
(*4) 2016/05/18(Wed) 11時頃
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[ワレンチナは、溜まった涙を振り払うように瞬きをした。 金の睫毛に小さな水球がまとわりつき、やがてふわりと宙に放たれてゆく。]
(このやりきれない気持ちをどうしたらいい?) (シルク、君のことを。自分自身のことを) (ひとり。誰かひとりだけに、吐露するならば)
(相手は、そう――――)
(*5) 2016/05/18(Wed) 11時頃
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― 現在、食堂兼レクリエーションルーム ―
[食堂へ入ってきたワレンチナは、真直ぐイースターに歩み寄ると、机の上に何か平たい紙の包みを置いた。 念を押すように指先でついとイースターの目前に滑らせたそれからは、仄かに甘い香りが立ち上っている。タブレットのようだ。食堂で見かけたことのないパッケージで、どうやらワレンチナの私物らしい。]
……相変わらず、この状況を打破するために僕が出来ることは何も無い……のだけれど、君にバーチャルでない味覚を提供出来るということに気がついた。
気に入りのショコラティエで買ってきた、最後の一枚だ。 良ければ君に食べてほしい、イースター。 茸じゃなくて申し訳ないけどさ。
(10) 2016/05/18(Wed) 12時半頃
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[ナユタに次いでヤンファとシルクが昏睡状態に陥った今、この船の命運を握っているのはイースターと言える。彼女のプレッシャーは計り知れないものだろう。 そして今のワレンチナが彼女のために出来ることは、気休めのような拙い気遣いだけだった。
チョコレートを差し出すと、ワレンチナはそのまま踵を返した。よどみない足取りで、真直ぐに廊下を進んでゆく。ソールの修理は済んでいる。]
『――シルクさんが返事をせんのか?』 (しない。しないんだ、先生。)
『心配じゃな。』 (心配だよ。)
(何もかもが心配で、不安でたまらないんだ。 どうしたらいい?先生。)
(11) 2016/05/18(Wed) 12時半頃
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― 医務室 ―
[ワレンチナは迷うことなく医務室のドアを開けた。医務室には先客がいる>>8。一瞬はっとして立ち止まった。]
ワクラバ。
[寝台の横のワクラバは、手になにか資料のようなものを持っている。無闇に側へよるのが躊躇われ、ワレンチナは入り口に立ったまま声をかけた。]
取り込み中か? なあ、よければ少し……話さないか**。
(12) 2016/05/18(Wed) 12時半頃
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/* あっしまった イースターにレス番いれそびれた…… というか自分がきょう死ぬとわかっていると、なるべく全員と接触したいけど〜〜〜むずかしいな〜〜〜むずかしいよぉ
(-9) 2016/05/18(Wed) 12時半頃
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[医務室の奥、壁を開くようにすると、使う予定なんてまるで無かった縦型のポッドがいくつか並ぶ。薬液に満たされたその中の一つにチューブの接続されたヤンファが浮かんでいる。]
(13) 2016/05/18(Wed) 13時頃
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/* ていうか最初ワクラバとシルクが共鳴だと思ったけど、ちがったんだなぁ。 誰と誰が共鳴なんだろ?ていうか占いも霊能もわかってない(みんなわかってるの??)現状、イースターが魔女っていうこととしかわからない……もはや役職とかどうでもよくなってきてはいるものの……ウーン全員と接触する時間が足りない
(-10) 2016/05/18(Wed) 13時頃
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― 実験室 ―
[アシモフは居場所を実験室に移していた。ちょこまかと動き、と思えばデータを見てじっと何分も身動ぎせず。元から赤い目は更にぎらぎらと血走り、ずっと険しい空気を纏っている。この三日間、ほとんど寝ていない。]
……何か、何か見つかるはずだ。 何か、見つけないと。
(14) 2016/05/18(Wed) 13時半頃
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/* どれやろっかなー。 よりどりみどり・・・
(-11) 2016/05/18(Wed) 14時頃
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[追憶に勤しんでいた意識が、不意にかけられた声(>>12)で現実に引き戻される。目を向けると、医務室の入り口に立つワレンチナが見えた。]
よぅ、ワレンチナ。 ······ありがてぇ。 丁度こっちも誰かと話してぇとこだ。
[クリアバインダーをそっと閉じた。目下の危機が去ったいま、時間が経つにつれて、胸に巣くった不安と悲観は大きく成長していく。ワレンチナの表情を目にして、胸がよりいっそうキツくしめつけられた。ヤンファの忠告通り、孤独は生き物を弱くする。見知った顔と言葉をかわせるのは、それだけでもありがたい。ワレンチナも似た心境なのだろうか。]
場所、うつすか? それとも、ここがいいか?
[ワレンチナは、医務室に用があったのだろう。見舞いの邪魔にならないよう、ワクラバは、シルクの寝台から数歩下がった**]
(15) 2016/05/18(Wed) 15時頃
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-食堂兼レクリエーションルーム-
[ワタシの役割はヤンファ様を待つことだと定義されました。 誰も彼も一人にしないことだと定義されていました。 雑用、ワタシは自分の役割をそう決めました。
しかし、運び出されたヤンファ様を見たとき、ワタシはその役割の何一つとして全う出来ていないことを知りました。ナユタ様も、シルク様も、ヤンファ様も、一人でお眠りになりました。
食堂に入り、椅子に座ってみましたが、もう照れの機能は働きませんでした。ただ、あの星で一つの物としてあったときのように、寂しさという機能を感じていたのです。
ヤンファ様が嘘をつかれたように、ワタシは嘘をついています。 ワタシは皆様の仲間でありません。それどころか、あの病気をこの船に持ち込んだ張本人かもしれないのです。
打ち明けなければ。 ワタシは何度もその音を発生させようと試みました。しかし、名も知らない機能が邪魔をするのです。声にならないのです。
シルク様、ヤンファ様、ワタシはやはりメンテナンスをしていただくべきでした。 ワタシはきっと、壊れているのです]
(16) 2016/05/18(Wed) 16時頃
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[ワクラバがバインダーを閉じるのを確かめる>>15と、ワレンチナは少しだけ寂しげに微笑んで見せた。それから歩を進め、シルクの寝台の前に立つ。保護膜の中で眠るシルクの表情は穏やか――とまではいかなくとも、ほんとうに、ただ眠っているだけのように見えた。隣で眠るナユタも同じで、それだけが今のところ、頼りなげな救いのように思えた。
けれど。ヤンファはどうだろう。 一人、皆の為に犠牲となったヤンファは。 今は閉ざされている奥の空間では、アシモフが必死に対応をしてくれているはずだ。ワレンチナはきつく下唇を噛む。]
……うん……ここじゃないほうがいいな。 僕らがうるさくして二人が目を覚ましてくれるならさておき……いずれにせよ、君と二人きりで話したかったんだ。人に聞かれると照れる話でね。
[冗談めかして肩をすくめてみせるが、その表情から陰りは消えない。 そうしてワレンチナは今一度シルクの顔を見つめたのち、ワクラバと連れ立って医務室を出た。]
(17) 2016/05/18(Wed) 16時半頃
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― 倉庫 ―
[ワレンチナ真直ぐ迷う事無く倉庫へ向かった。 そうしてほの赤く輝く巨大な水槽の前に立つ。 水槽はPavr=opety星の海水で満たされ、無数の白い星のような極小生物Remdaが踊り、その中でPavr=opetyの水棲生物達がたゆたっている。 ワレンチナは水槽を見つめたまま、ワクラバの方を向かずに口を開いた。]
……落ち着くんだ。昔からね。 水族館が好きだった。……カニだとか、クラゲだとかがさ……。
[ひとつ、息を吐く。ワレンチナの視線は、クラゲに似た水棲生物に注がれている。]
単刀直入に聞くんだけどさ。 ワクラバ、君って、シルクのことをどう思ってた?
将来『彼』が――自分と結ばれる可能性を。 想像したことが。あった**?
(18) 2016/05/18(Wed) 16時半頃
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/* あ〜〜ミツボシ占いか!そうかそうか 倉庫住まいでしょ〜立ち聞きしにきてくれないかな〜
(-12) 2016/05/18(Wed) 16時半頃
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― 実験室 ―
……整理だ。整理しないといけネい。可能性は絞られてるはずだ。既知の病ではないということは既に明白なわけデ。つまりおそらくは風土病、それもPavr=opetyの風土病だ。感染源は特定できない。ぼくたちの準備も防護服も万全だった。つまり感染元はこの船の中か、そうでなければこれもまた未知の感染方法ってことになる。二人が同じ症状で倒れていることで感染症であることも予想できる。しかし対応策がまだわからないためこれは隔離することでしか対応できネい。まるで前時代だ。くそ。バイタル、内部数値全て正常の範囲内。急激な変化も見えない。つまり急速に死に至る病ではない。 シルク、君の意見を聞かせてくれないか……。
[データを見つめたまま一人言葉をずるずると喋り続けて、思わず助手に話しかけようとしてしまう。]
……。
(19) 2016/05/18(Wed) 18時半頃
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― 倉庫 ―
[促されるまま、ワレンチナのあとに続いて巨大水槽の前に立つ。ほんのりと赤い液体が水槽を満たし、なかでは海洋生物たちがのんびりと浮かんでいる。 なんだかひどく懐かしい。
水族館。おそらくそこがワレンチナの原点なのだろう。おおかた水槽のメンテナンスについての相談といったところか。そう考えた矢先、耳にした予想外の質問に、思考が一瞬停止する。]
······そいつぁ、“つがい”にってことか? シルクと·····俺が?
······アカデミックな知見を聞きたい、 ってわけじゃなさそうだな。
[なるほど。確かに本人の前ではできない、照れる話だ。 生々しい話は嫌いじゃない。いつだったか、ワレンチナがそう口にしたことを思い出す。]
(20) 2016/05/18(Wed) 20時半頃
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オーケー。俺とお前の仲だ。 ここだけの話ってことで頼むぜ?
[フェイスガードの奥で頬の筋繊維がビリビリした。 いつもの不快なストレスによるものとは、一味ちがう。]
想像したことがない、と言や······そりぁ嘘になるよな。 あのシルクが大人になって、女になって、腕のなかにいる。 あのクリスタルみてぇな眼で見つめられて、 『兄さん』と呼ばれる。
まぁ、男冥利につきるよな。こうやって想像するだけでも、満ち足りた気分になるぜ。
だかな······そうじゃねぇんだ。 いや、それもあるんだがよ。 なんていうかな。俺にとってシルクは······ もっとでけぇんだ。
女になろうが、男になろうが······ だれとつがいなろうが、そこは変わらねぇ。
(21) 2016/05/18(Wed) 20時半頃
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(無能だ)
[実験室の分厚い机に額をこすりつけてアシモフは己の無力を嘆いた。恨んだといってもいい。]
(こんな。ぼくらの脳みそじゃこのへんが限界だってことか。所詮ネズミだ、小動物だと。知的生命体とは言えないと、こんな宇宙の辺境まで来て言われなければいけないのか)
(ヤンファだって治しきることができなかった。期待されていたのに。ワクラバはぼくを頼ってきたっていうのに)
[薬液に浸かってただギリギリの生命を維持しているだけの彼女を想う。自分の力が足りていれば何とかなったろうか。この小さな体で手間取った時間が取り返しのつかなさを生んだろうか。設備があれば、最善の道具が揃っていれば。]
(ナユタも、シルクも起こすことが出来なければ、ぼくがここにいる価値は)
(22) 2016/05/18(Wed) 21時頃
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[――そして、功績を挙げられなければ故郷の同族達は。仲間達の体よりそれを考えてしまった。功績が欲しい。自分を誇りに思い頼って送り出してくれた家族たちのために、功績が欲しい。 そのために、彼らを治さなければならない。そう考えてしまった自分を恥じる余裕も無かった。]
(23) 2016/05/18(Wed) 21時頃
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(だけど)
[こすりつけた頭を更に強く押し当てる。圧力で鼻が潰れそうだ。 ナユタとシルク、あの二人の体はもうわからない。投げ打ってしまいたい。耳につけられた『01』の印が音をたてる。]
健康な体をどう治せって言うんだ……!
(24) 2016/05/18(Wed) 21時頃
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[ワレンチナの横に立ち、水槽の中で揺れるクラゲをみつめる。]
こっからは先は、有料だぜ。 聞かせろよ。お前はどう思ってんだ? シルクのことをよ。
(25) 2016/05/18(Wed) 21時頃
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