169 きみがおとなになるまえに
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――ふたり旅――
[手押し車の屋台を見て、はじめ、大層驚いた。 だって、それでは汽車にもそうそう乗れないし、そもそもどうやってキネーンまで来たのやら。 ずっとここから歩きの旅をしていくなんて、芙蓉にそんな負担はかけられない、と思った。 けれど、結局車を押す芙蓉よりも、なんだかんだと自分の足のほうが遅いこともあったし、野宿に便利なことは変わりなかったので、最終的にはそれに馴染んでしまった。
自分と、旅荷以外には、本が増えた。たいして稼ぎもない旅ぐらし、買える数は多くはなかったけれど、それでも着実に、それらの数は増えていった。 朝目覚めて、二人で歩き。足が棒のようになったところで、休む。芙蓉の体力が残っていれば、屋台に乗り込ませてもらって、本を読む。 毎日はそれらの繰り返し。旅をはじめた時は、自分で歩くことすら止められたけれど、それも「したいこと」のうちだったから、少し意地になっても貫いた。]
(+0) 2015/09/25(Fri) 00時頃
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[わたしは、二人でタリンへの道を歩みだしてから、自分で自覚するくらいによく笑うようになっていた。 枷が外れただとか、無二の友と二人旅だからとか、そういう話だけでは、ない。 親に売られ、もう九つと知ればすぐに手術を受けさせられ、歌が得意だったからとショーに放り込まれ、三十年。 その間自分を挟みこむ余地はなかった。有無を言わせず働かされる生き人形。
それきり、わたしのこどもの時間は止まってしまっていたのだと、旅をはじめて気付かされたる。 自由と、それから先取りしていたおとなの思考を得たわたしは、今ようやく"十歳"になりつつあった。]
(+1) 2015/09/25(Fri) 00時頃
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ねえ、芙蓉。 わたし針と糸がほしい。そうしたらここにいる間繕い物ができる。
[屋台の荷台から前方へ、顔を乗り出して声かける。 そんなわがままも――叶うかどうかは別として――日常茶飯事だ。]
芙蓉、わたしそろそろもう少し歩けるわ。降りていい?
[返事も聞かず、ゆるゆる動く屋台から飛び降りる。 時々無茶をして、窘められるのすら新鮮で楽しい。]
(+2) 2015/09/25(Fri) 00時頃
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ねえ、"あれ"、まだ書いてるの?
[夜中、不意に目が覚めて芙蓉の温もりを求めた時、彼女は白い紙に立ち向かっていた。 書き記された文章をなんとはなしに読んで、後悔、のち赤面、きーきーと喚いてやめろと否定したのは、いつの頃だったか。 誰が、誰が好き好んで「成長日記」めいた記録を残されたがるだろう。 あまりの恥ずかしさに感情が振りきれて、怒っているのかなんなのか、自分でもわからないうちに力尽きて、朝を迎えてしまったのを覚えている。
それから彼女が夜の手記を止めた様子は感じない。ならば書き続けているのだろうとは思えど、確認する勇気はなく。 返事がかえる前に「早くやめてね」とくちびる尖らせて、軽く目をそらす。]
(+3) 2015/09/25(Fri) 00時頃
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――――?
[逸らした、その先。 人影が、いちにい、さん。
それは、おとなにしてはいささか、小柄なような――]
(+4) 2015/09/25(Fri) 00時頃
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――旅路――
[汽車に乗ったり、荷台にいるうちは、針仕事をしたり組紐をしたりと、幼いころに母に習った事柄を、思い出しては形にする。 繕いものも、もちろんしたが。次第に、巾着や香袋、守り袋といった小物は、路銀稼ぎの手段にもなっていた。 けれどはじめにねだられた巾着袋はまだずっと、手元に残したまま。香袋も一つ、芙蓉に贈った。 引き出しが一つ、夕顔のものになった。]
いちかけにかけてさーんかーけてー、 しかけてごかけてはしをかけー、
[――作ったお手玉片手にうたっていることも、ままあったのだけど。 こどもが歌をうたうことは、どの街でも多少の足しにはなる。]
(+24) 2015/09/26(Sat) 22時頃
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[「成長日記」を書く手は、結局止めることができなかった。 生きた証なんて別に残っていなくてもいいと、芙蓉の言い分に納得はしていなかったのだけれど、あくまでわたしたちは親子でも仕事の関係でもなく、友人同士であるのだから、自分のやりたいことばかりを通して彼女のやりたいことを止めるなどというのはできれば避けたくて、それ以降癇癪を起こす事はしなくなった。
代わりに、わたしも夜中にふいに目が覚めた時に、芙蓉との旅の記録を書くことにした。 わたしが起きて、芙蓉が眠っている時にしか書けない日記。自分の言葉の拙さもあって、物書きの書いているそれとは比べ物にならない量だけれど、こっそりとそれは引き出しの奥にしまってある。 芙蓉にはまだ、言っていない。]
(+25) 2015/09/26(Sat) 22時半頃
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[だから、早くやめてとは言うものの、やめてほしいと本気で粘ることはしなくなっていた。 やめないのは知っているし、とうにお互い様だからだ。受け流されても、痛くも痒くもない。 ただ、視界に映った光景は――痛いくらいに目を引いた。]
……!!
[手押し車が止まったのをいいことに、荷台を飛び降りるとこどもの影に向かって駆け出した。 小高い丘の上、大きな木の根元。睦まじく遊ぶこどもの姿が、昔の自分たちと重なって、胸が締め付けられる。 あのころのわたしたち、二人でいるだけでも珍しかったのに、それよりも多い数。 大都市のキネーンでも見かけない様子に、興奮が収まらなかった。
こどもが、こどものまま、平穏に暮らせる土地の存在が、確信めいてわたしの中で、膨れ上がっていた。]
(+26) 2015/09/26(Sat) 22時半頃
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