84 ― 手紙 ―
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[昨日、ジョージはレターセットを使い切りました。 ジョージはその手紙に御伽噺を書きました。 嘘ではありません。 夢に見るような、望むこと。素敵なこと。 けして本当にはならないこと。 それらを少しだけ、紡ぎました。 いっぱいは書けませんから、 綺麗な便箋が一枚、余ってしまいました]
(+7) 2013/05/28(Tue) 22時半頃
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[思い切って開いたもう一通。 ああこれがパパの文字なんだ、って 僕はパパと同じものが好きなんだ、って
そうジョージの目は語っていました。 すぐにお返事を書こうと私を手にして、そして 最後の便箋に一文、書いたのです]
(+8) 2013/05/28(Tue) 22時半頃
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ママはもうずーっと前に死にました
(-13) 2013/05/28(Tue) 22時半頃
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[ぽつんと書かれたその文章を、ジョージはずーっと見ていました。
机の上には封をしたあの子あての手紙。 本が一冊。 それに便箋一枚と私。 それだけ。
机の中には何もありません。 部屋の片隅には、ジョージがちゃんと一人で持てるくらいの、小さな鞄が転がっていました]
(+9) 2013/05/28(Tue) 22時半頃
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[ジョージを呼ぶ声がします。 こんなに嬉しそうな叔母さんの声は初めて聞きました。 息子がテストで良い点でも取ったのかしら?
……違うことくらい、私はもう、わかっています]
はい!
[大きく返事をして、ジョージは鞄を抱えます。本を入れて、私を胸にさして、封筒に手を伸ばして 最後の便箋一枚は、くしゃりと丸めてポケットに入れました]
(+10) 2013/05/28(Tue) 22時半頃
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[家の中には誰もいません。 叔母さんは手続きとかで一緒に行ってくれるそうです。外で待っています。 従兄弟は学校です。
一階に下りて廊下を進むジョージの耳に、ぴちゃん、と水音が届きました。どうやら蛇口がちゃんとしまっていなかったみたい。慌ててジョージは流し台に近寄ります]
(+11) 2013/05/28(Tue) 22時半頃
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……溶けるかな
[指先を濡らして、ジョージは呟きました]
なくなるかな なかったことに、ならないかな
[御伽噺です。 魔法みたいなお話です。 文字にした出来事が、紙が溶けて消えるみたいに、なかったことになるなんて]
(+12) 2013/05/28(Tue) 22時半頃
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[けれどね、ジョージ。 綺麗に整えられた便箋は、そう簡単に溶けないの。
ああほら、冷えて固まって、きっととても重くなってしまった。
もう行きましょうジョージ。 貴方が手紙を受け取ることはもうないでしょうけれど。私はずーっと傍にいるから。
手放さないでね。 私が代筆した想いを、忘れないでね]
(+13) 2013/05/28(Tue) 23時頃
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[ジョージに向けて綴られた言葉がこれからも生まれても、暫く私がお返しすることは出来ないでしょう。
その代わりに、見た目だけは整った文字で、そっけない手紙が戻ってくるかもしれません。
ジョージはもういないから、手紙は金輪際出さないでくれ、って。
ジョージの名前を見るのも嫌なのでしょうね。 受け取って転送することだって、思いつきもしないのでしょうね。 ジョージ、ねえジョージ。 どうか、幸せになってね。 どうか、どうか――]
(+14) 2013/05/28(Tue) 23時頃
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