84 ― 手紙 ―
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[手に取るのは、淡いピンク色の手紙。 無邪気で元気な花の色を思わせるその便箋は、文面から読み取れる少女の姿にとても似合っている]
偉そうなことを言ったのだから、あたしも、ちゃんと向き合わないとね。
[そう呟いて想うのは、今は遠い国にいるであろう別の少女の言葉。 新たな場所へ向かうまで、どれだけの恐怖に打ち勝たねばならなかっただろう。 それなのに最後まで、相手のことを考えて、幸せを祈って]
あたしの、幸せ……。
[考えることを投げだして、ただ今の日々を守ることだけでよしとし続けて。 それはそれで、自分は幸せなのだ。けれど、それでも]
(10) 2013/05/29(Wed) 20時半頃
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ポーチュラカさんへ
自分が本当に望む道を、見つけることができたあなたを、友人としてとても誇りに思います。 いつも朗らかで、気取らず、常に周りを気にかけていた、優しいポーチュラカさん。 あなたの選ぶ道はきっと、いつかとても強い光となって貴方を包むに違いないわ。
きっとこれからも、迷うことも、苦しいことも、あると思うけど。 ずっとずっと、応援しています。相談だって弱音だっていつでも聞くわ。だって私もいっぱい聞いてもらったものね。
ポーチュラカさんの頑張りに恥じないように。 私も今から、きちんと踏みだしてみようと思います。 ありがとう、ポーチュラカさん。
あなたに特別の感謝と親愛を込めて
[宛名の横には、飛び立つ天使の後ろ姿。その片手にはしっかりと、もらった勇気、四つ葉のクローバーを握りしめて]
(-11) 2013/05/29(Wed) 20時半頃
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[そして次に読む手紙は、あの風船の手紙に、最初に返事をくれた人から]
たとえ離れてしまっても。
[そう呟いて思うのは、妹と過ごした日々だけでなく、今までやりとりをしてきた数多の手紙たち。 そのどれもがひとつひとつ、今までの自分を支えてくれていた]
(11) 2013/05/29(Wed) 21時頃
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セシルさんへ
あなたのバラードが聞けたらいいなと、窓辺で耳を澄ませてみました。 風がいつもより優しかった気がするのは、気のせいじゃないと思いたいわ。
うちは男の子3人、やんちゃ盛りばっかりだから、 姉は特に手を焼いてるみたいね。 でも大変は大変だけど、元気がないより安心かしら、なんて思ったりもします。 うちの姉とお兄さんが会えたら、どんな話をするのかしらね。 それぞれの弟妹の話でもちきりになっちゃう様子が目に浮かぶわ。
(-12) 2013/05/29(Wed) 21時頃
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お兄さんが、あなたを忘れることなんて絶対ないわ。 少しずつ変わっていくことはあるかもしれない。想いの抱き方を、変えていかなきゃいけないことだってあるかもしれない。 でも、恐れる必要はないはずよ。……だって私がそうだもの。 離れてしまっても、私は家族のことを、どんな形でも愛してるわ。
あなたたち兄弟に、祝福の光がありますように それでは、また
レティーシャ・ヨハンソン
P.S. 私もこれから、セシルさんのことを思って歌うわ そして貴方の歌が、あなたのお兄さんにも届きますように
(-14) 2013/05/29(Wed) 21時頃
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[宛名の横に描き添えるイラストは、今日はいつもの天使ではなく。互いに微妙な距離を置いて意識し合う、二匹の黒猫の姿]
(-15) 2013/05/29(Wed) 21時頃
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[窓辺に寄って、黄色い花びらを指先で撫でる。 ほんの少しだけ、勇気をください]
前を向いて、歩き出しても、 変わらないものもきっとあるでしょう?
[変わることは、失うことだけではない。 自分でそう書いたのだから。背を押してもらったのだから]
(12) 2013/05/29(Wed) 21時頃
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ミナカタさんへ
可愛いタンポポのお手紙をありがとう。 ちゃんと、届いてますよ。 お手紙に時効って、あんまり考えたことがなかったので、 本当にあるのかなって改めて考えてしまいました。
ミナカタさんはどんなお仕事してる人なのかしら? 忙しい中でも仔猫の心配をする、優しい人なのね。 それとももしかしたら、その仔猫はミナカタさんの心が少しでも安らぐように、神様が遣わした子なのかもしれないわ。 仔猫ちゃんが私の家までお散歩にこないかしら、なんて想像してしまいました。
変わらないことは、意外と少ない。本当にそうですね。 私の周りでも、いろんなことが変わりました。 手紙をやりとりしていたお友達が、海外へ行ってしまったり、仕事で新しい場所へ挑戦に行ったり。 やりとりが出来なくなってしまった手紙は、それは時効をむかえたことになるのかしら。
(-16) 2013/05/29(Wed) 21時頃
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でもね、私、そうは思いたくないの。 古い手紙は、宝箱にしまった宝石。蓋を開けたらまた輝きだすの。 ミナカタさんがお返事をくれたから、あの日風船で飛ばした手紙はもう一度輝きだしたのよ。
ごめんなさい。私が変わったこと、もうひとつあったわ。 天使に憧れる子供が、大人にならずに本当に天使になってしまった。 でも許してもらえるなら、信じてほしい。 この手紙の中で、「レティーシャ」は生きてるの。 間に合わなかったんじゃなくて、もう一度輝いたの。 そのことだけは、
[その先、何か書きかけて、空白のまま]
(-17) 2013/05/29(Wed) 21時頃
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お手紙を拾ってくれてありがとう。 お返事をくれてありがとう。 ごめんなさい。でも嬉しかった。それは絶対に、本当よ。
[宛名の横には、風船をもった天使。そしてその隣に猫とタンポポ。 謝ることすら自己満足と知りながら。懺悔と、感謝と、祈りを込めて]
(-18) 2013/05/29(Wed) 21時頃
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[それから書き上げた手紙。 あまりにも支離滅裂で、とても読み返せたものではない。 だけど精一杯の想いをこめて、そのまま手紙の封を閉じた]
さぁ、もう逃げ場はないよ。
[そう自分に呟いて笑う。 机の一番下の引き出し、ブリキの大きな箱を取り出す。 蓋を開けてひっくり返すと、未開封の何通もの手紙。 どれも同じ差出人から、自分宛てのもの]
(15) 2013/05/29(Wed) 21時頃
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……まぁ、熱心なことで。
[かつては反発しか感じなかった、祖母からの手紙。 自分ひとりでも家族を守れる。その意地が、祖母の声を拒み続けた]
相変わらず、高圧的なおばあ様だこと。
[封を開けてひとつひとつ読み進めると、やはり苦笑いが浮かぶ。 ヒステリックな言葉や娘夫婦への罵り、そして孫への命令口調。 けれど今になって読むと、その裏に読みとれるものもあり]
……やっぱり心配、してくれてるんだよね。 寂しいんだよね、きっと。
[ちゃんと向き合わなきゃね。そう呟いて。
返事は手紙にしようか、電話にしようか。 それとも直接、祖母の家に出向いてしまおうか。 そんなことを思いめぐらせながら、溜めこんでいた手紙を読み進めていった**]
(16) 2013/05/29(Wed) 21時頃
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[そして、宛先にその人がいないことを、知らずに出した手紙]
(-19) 2013/05/29(Wed) 21時半頃
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ジェフリーさんへ
お返事が遅くなってごめんなさい。 今日はちょっと涼しい一日でしたね。半袖寒くないかしら、なんて心配しています。 私は子供なのでへっちゃらですけど、なんてね。
作詞はしたことないなぁ、と思っていたのだけど、 ひとつ思い出しました。ありました、私の作詞。 でも笑わないでくださいね。その歌は「お片付けの歌」です。 弟や妹があそんだものを出しっぱなしにしている時に、 一緒に歌ってあげる歌。 おかたずけー、おかたづけー、あそんだあとはー、おかたづけー。 これを延々と繰り返すだけの愉快な歌です。ふふふ。 やっぱり笑っちゃってください。 でもこうやって歌うと、弟も妹も自分から楽しそうに片づけしてくれたのよ。歌って不思議ね。
たくさんの人に感謝されるお仕事をしていたって、とても素敵なことですね。 そして今のお仕事で、たくさんの人に楽しみと勇気を与えている。 あぁ、私もそんな人になりたいな。
(-20) 2013/05/29(Wed) 21時半頃
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新しい本が出たら、私もすぐに読みますね。 ジェフリーさんの描いた小鳥と一緒に、私の勇気のお守りにします。
Acceptez tous mes voeux de respect et d'amour レティーシャ・ヨハンソン
P.S. 小鳥の絵は、そうね、豆のような形を描いて、そこに目とくちばしと羽と足をつけて、こんな感じかしら?
[追伸の下に小鳥の絵。シンプルな線で構成されたイラストは、それがナイチンゲールだかなんだかわかったものではないけれど、それでも手紙の中で楽しそうに歌っている**]
(-21) 2013/05/29(Wed) 21時半頃
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