72 桔梗恋獄
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[紡がれる皆方の言葉に返す言葉は、もうない。 そして、いつも向けていた半目も、もう向ける必要がない。 ただ、唇の端を持ち上げて見せただけの微笑。 その表情で、相変わらずな彼を見送る。]
次は私か。 随分待たされたな。
[その直後に現れた悪魔の言葉に淡々と返した。 自分で良かったと思い。 自分に進んだということは、上村は亡くなったのだな と事実確認。]
(60) 2013/02/23(Sat) 09時頃
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私がデザートと云うことは、私で仕舞か? 待たされた分、痛んでいるかもしれないが お前の口に合うことを願うよ。
[この悪魔に喰われるのは癪だと思うような矜持も、 すでにありはしないのだ。 矜持というのは、そもそも自分自身を好きか、 生きたいという思いがなければ意味を持たない。 そのようなものだと思う。]
(61) 2013/02/23(Sat) 09時頃
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嗚呼、やっと解放される…――。
[心底安堵したように小さな吐息を零した。 自分が居るのは此処ではない。 そんな感覚は、何も会社だけではなかった。
《生》そのものが今見ている夢のようなもの。
それでも受け付けられた概念の中、生きてみた。 もがく中で、生きる意味《初恋》を、 無理に見つけて掴んでいたようだけれど…――。]
(62) 2013/02/23(Sat) 09時頃
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/* >>62 受け付けられた× 植えつけられた○
(-34) 2013/02/23(Sat) 09時頃
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[それも、手放したのか、放たれたのか、既にない。 再び生きる理由を見つけることも、 生きていればできるのだろうが、 面倒だ……と思う辺り、生きるのに向いていない。]
そうか、まぁ、生きたいと思う人が 生き残ることが叶うなら良いなと思うばかりだ。
[自分で仕舞でないという悪魔の言に、無感動に返す。]
(67) 2013/02/23(Sat) 09時半頃
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――…自分自身で生を絶つのも 他者にそれを請うのも 私という存在に植えつけられた概念が 美しくないと拒否していたものだからね。
[そして、肩を竦めて見せる。 その答えが、筧出 円が人であるという証だったろうか。]
それも、此処まできたら今更か。 叶うならば、出来るだけ早く喰らってくれると 有り難いんだがな……と一応願っておこう。
[好みの味に関する言葉を耳が拾えば、 ふっと唇の端で笑い、真っ直ぐに自室へと歩き出した。]
(68) 2013/02/23(Sat) 09時半頃
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[動かし始めた足を、ぴたりと止める。 悪魔に振り返り、首を傾げて見せた。 さらり――揺れる金糸の感覚はいつも通り。 けれど、首にかかる圧迫感がない。 嗚呼、第一ボタンを止め忘れていた……と思いだす。 されど、いつかのように、止め直そうともしない。 欠落した何かを、埋める努力すら諦めたように。]
――…いや、特にないな。
[リクエストに関する部分のみ、短く返して 再び前を向くと歩き始めた。]
(78) 2013/02/23(Sat) 10時頃
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[部屋に入る前、少し先に先ほど 不破が立ち尽くしていた部屋を見る。
そこに甫嶺が居たとしても、 自分からかける言葉は持たない。
不破の想いは届いただろうか。 早坂にレーシックの資料云々の約束は守れそうにないな。 そんな想いが微かに浮いて、 パタリ――扉を開けて閉める動作に沈んだ。]
(79) 2013/02/23(Sat) 10時頃
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[部屋に入ると、ベッドに腰掛ける。 仰向けに寝ることはせずに、瞼を閉じた。
死ぬ前の走馬灯。
思い起こす数々のことは、 けれど生きたいと思う執着に繋がるようなものは 何もなかった*]
(87) 2013/02/23(Sat) 10時頃
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[あれほど嫌われたいと願った
【皆方 甲助】
との思い出さえ静かに走馬灯の中、翔けて行く*]
(-41) 2013/02/23(Sat) 10時頃
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― 16号室 ―
[そういえば、上村にコーディネートを頼んでいたな。 そんな風に走馬灯の中、先に逝った者のことを 思い出していた頃合い。]
――…。
[廊下から聞こえる声に、 ゆるりと閉じていた瞼を持ち上げた。 僅かに眉間に皺を寄せ、細い息を吐き出す。
感傷に浸るほどの感傷は、きっと無いには等しいけれど。 最期の時は、静かに過ごしたいと願うのと同時。 悲鳴のようないくつかの声に後悔なく……とも望む。 その2つの想いから、座っていたベッドから腰を浮かした。]
(136) 2013/02/23(Sat) 21時頃
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[結論は、己から聴こえる喧噪より距離を取ること。 遊戯室あたりに行けば、此処に居るよりは静かだろうか。
ドアノブに手を差し出した時に、聴こえるノック音。 ひょいっと片方の眉が上がる。 今更、自分に会いにくるような人物は思い当たらない。]
――…何か御用ですか? 今、開けます。
[それでも律儀に扉を開いてしまうのは、癖のようなもので。 ゆっくりと開いた扉の先。見えた顔に、僅かに目を見開いた。]
(137) 2013/02/23(Sat) 21時頃
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はぁ……私は構いませんが…―――。 いいんですか?
[一服と云われて、紫の眼が瞬く。 首かしげて見せるのは、 視界の端に映る光景の所為があった。
声音は厭うという色ではない。 日頃、おそらく皆方以外に見せていた反応と同じ。 何に対していいのか?とハッキリと告げないのは、 そういうことである。
知っていて知らない振り。 相手が触れられたくない箇所だろうことは、 極力触れないように。]
(144) 2013/02/23(Sat) 21時頃
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そうですか。
[顔を見に来たと云われて、 嬉しそうにするでもなく嫌そうにする訳でもなく 一つ頷いて見せ]
煙草吸うなら、此処でいいですか? それとも、遊戯室まで行きますか?
[至極淡々と問いを一つ向けた。]
(150) 2013/02/23(Sat) 21時半頃
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では、此処でいいですかね。 どうぞ…――。
[此処の方が何かあった時に、皆方が出やすいだろう。 その言葉は、心の裡にだけあるもの。 招き入れるように踵を返し、部屋の奥へと向かう。]
自分のことですか? 嗚呼、もうすぐ死ぬってことですか。 聞きましたよ。 私は、悪魔のデザートになるらしいです。
[と、備え付けの簡易の応接セットへ向かう途中、 掛けられた言葉に振り返る。 鏡写しのように、少しだけ首を傾げるのは、 貴方も聴いたから顔を見にと思ったのではないですか? と言葉なく伝える仕草。]
(162) 2013/02/23(Sat) 22時頃
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[応接セットに向い合せに座り、 目の前の人が煙草を取り出すのを見れば、 営業の癖だろう、すかさずマッチを擦り火を差し出す。]
このマッチ、変に凝ってると思いませんか?
[ちらりと見せる頼りないマッチ箱には、 桔梗山荘と書かれた文字と、薄れて見えない電話番号がある。 云われた言葉を、一度そんな話題で流して]
――…過去形ってことは、今は違うんですかね。
[少し言葉を探すような間を開けて、言を放った。]
(170) 2013/02/23(Sat) 22時半頃
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おや、すみません。
[差し出された煙草を受け取り口に咥える。 それは、たまにしか吸わない円には、重いもの。 けれど、それを顔に出すことなく、紫煙を肺に燻らした。]
夢の中にしては、小細工がきいてると 私は苦笑したんですけどね。 まだ、煙草吸われるようでしたらどうぞ。 私には、もう必要ないので、もらってください。
[マッチ箱の反応に、それこそ苦笑して肩を竦め]
元々、あまり生きてるって実感がなかったからですかね。 先ほど少し知れた気がしましたけど、 けれど、やはり何が何でも生きたいと思うほどの何かは、 私の中には無かったみたいで……。
(182) 2013/02/23(Sat) 23時頃
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無いということすら気が付かなかった時には 戻れませんしね。
[皆方の言葉の応えに合っているのかいないのか 判らない言の葉を織る。 それは、先ほどのように、皆方を責めるような声音ではなく ただ、淡々と事実を述べるだけの音。
見本誌云々は、この段階に来ても知らぬままで。 でも、今知ったとて、何が変わるものでもないだろう。 それこそそれは、遠い昔のこと。]
(183) 2013/02/23(Sat) 23時頃
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[皆方の反応に、矢張り自分の言葉はピントがずれていたな と、思えどもそれだけの話。]
どうですかね…――。
[タラレバを云っても仕方ない。 そんな風に答えて、同じように少しの間の沈黙。 ゆっくりと吸い込む紫煙は、身体をむしばんで、 片手が気が付けば胃を抑えこんでいた。
嗚呼、多分、そろそろ時間なのだな、と思う。 密やかに口の中に広がる鉄さびの味。]
皆方さん、ありがとうございました。
[何に対しての礼か、自分でも判らないまま、 逝く前にと言葉告げて、タバコの火を消した。 それは、見送るつもりがないならば、去り際を知らせるもの。 表情も、心の裡も、酷く凪いで…――。]
(200) 2013/02/23(Sat) 23時半頃
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[けふっと一つ咳き込む。 邪魔かと問う人に、答える言葉はない。
浮かべた苦笑が、ただお好きなように…… と、言葉がわりに告げる。
それから、どうなったかは、さて…――*]
(209) 2013/02/24(Sun) 00時頃
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