245 三百物語村
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あれ、そういえば……。
[何かお薬をすすめられたような気もしたのだが]
──うーん、誰だったのかしら。
(22) Eugene 2018/07/07(Sat) 17時頃
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こう雨ばかりだと、山の方に住んでる人たちは大変なんでしょうねえ。
……あ、そういえば。
(24) Eugene 2018/07/07(Sat) 17時半頃
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この間、確か52才の誕生日を迎えた方から聞いた話を思い出しました。
──その方のお母さまの実家はある地方の山奥にあったそうで、小学低学年の頃までは、毎年お盆に何日か泊まりに行っていらっしゃいました。
(26) Eugene 2018/07/07(Sat) 17時半頃
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ある夏、その村の小学校跡の運動場──その年の春に、生徒数の減少で廃校になっていました──で遊んでいると、知らない女の子が、遊ぼう、と声をかけてきました。 その子の胸には、“××ゆき”と書かれた名札が付けられていました。
(27) Eugene 2018/07/07(Sat) 17時半頃
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ゆきちゃんの名札には、その方より一つ上の学年とも書かれていました。 「何して遊ぶの?」 「花いちもんめしようよ、他の子もいるよ」
ゆきちゃんは、校舎の方を指さします。なるほど、一階の教室の窓からいくつか顔がのぞいていました。
(28) Eugene 2018/07/07(Sat) 17時半頃
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「遊んでくれるって!」 校舎に向かってゆきちゃんが大きな声で叫びます。すると、窓の顔が引っ込んで、間もなく十人くらいの子どもたちが校庭に集まってきました。
そうして、彼らと一緒に花いちもんめを始めたのですが、すぐ不思議な事に気がつきました。 ゆきちゃん以外の子どもたちも全員名札をつけていたのですが、名札に書かれているのが姓+名前の子と姓だけの子の二手に分かれていたのです。 その方─仮に智子さんとしましょうか─と同じ年の子は4人いましたが、全員名字だけの名札でした。
(29) Eugene 2018/07/07(Sat) 18時頃
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しばらくそうして遊んでいると、空に黒い雲が広がってあっという間に薄暗くなってしまいました。今にも空から雫が落ちてきそうです。
「雨が降りそうだよ、帰らなきゃ」 智子さんが促したのですが、どうした事かみんな困ったような悲しそうな顔をしていました。
「お天気よくなったら、明日か明後日かにまた遊ぼうよ」 そう言っても困り顔のままです。
(30) Eugene 2018/07/07(Sat) 18時頃
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「そうだ、お名前教えて?」
智子さんは、様子が変だなと思いつつ、同じ年らしい男の子の一人にそう尋ねました。
「…………」 でも、悲しそうに首を横に振られただけでした。 「帰るよ。またね」 なんだかもやもやした気持ちのまま、智子さんはお祖父さんの家にもどりました。
──翌朝、夜遅くにものすごい量の雨が降って、小学校の跡地が土砂崩れで埋まったと聞かされました。
(31) Eugene 2018/07/07(Sat) 18時半頃
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「他のお家は大丈夫なの?××ゆきちゃんのところとか」
心配になった智子さんは、昨日遊んだその他の子たちの名前もあげて伯父さんに尋ねたのですが、伯父さんは、そんな子たちは知らないと怪訝そうな顔で答えます。第一、そんなに子供が村にいるなら廃校になんかなるものか、とも。
すると、そばでやりとりを聞いていたお祖母ちゃんが、 「確か、何年か前に村を出た××さんの家で、小さいうちに亡くなった子が“ゆき”って名前じゃなかったか」 と言い出しました。 お祖母ちゃんに他の子の名前を聞かれて、思い出せる限り答えると、名札に姓名がきちんと書いてあった子は、小さいうちに亡くなった同じ名前の子どもがかつてこの村にいた、と言われたのでした。
(32) Eugene 2018/07/07(Sat) 18時半頃
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──さて、そうなるとわからないのが、名字だけの子どもたちですが。
後年、智子さんは何かの折りに年ごとの出生数をグラフにしたものを目にして、彼らがどういう存在だったかわかったような気がしました。 智子さんの生まれた年は、古くからの迷信の影響で出生数が前後の年と比べてかなり少なくなっています。 「あの子たちに名前があったら、あの年の出生数はもう少し増えていたのかもね」 智子さんは、そういう事だと思っているそうです。
(33) Eugene 2018/07/07(Sat) 18時半頃
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参休は、ろうそくの火を覆いを使って消した。
Eugene 2018/07/07(Sat) 18時半頃
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「手鏡に映る自分の顔をじっと見つめて」
……ハンカチが乾いたようですね。濡らしてきます。
[頭にのっけた青いハンカチを手にとって、洗面所へ**]
(34) Eugene 2018/07/07(Sat) 18時半頃
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