128 終世に降る雨/ツイノセニフルアメ
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執事 ハワードは、メモを貼った。
2014/07/17(Thu) 00時頃
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― 地下 ―
[胸に刃が届いたと同時、心臓に刺さるは砕けるような痛み。 それは鏡の欠片が散った権利の喪失だけではない。 仮初に繋ぎとめられていた、自らの魂が壊れた痛苦。 発作のように胸を掴んで、礼装に皺を刻み、酸素を求め、喘ぐように喉を反らす。
決して、自由の利く筈のない身体が動けば、違和感は重量を以って精神を磨り潰し、蟀谷を締め上げる。
ハッと眼を開いた視界が捉えるのは低い天井。>>1:*6 額に滲む汗は、紛い物ではない。]
――――…は、……ぁ、
[大きく息を吸い込み、いつの間にか身を預けていたソロ・ソファに背を任せた。そうして、両手の有を確かめると、離れてしまったはずの右腕に気付く。>>0 生前と何一つ変わりない姿。そこでもう一度溜息を漏らして。]
……いやはや、死ぬと言うのも難儀なもので御座いますなぁ。
[他人事のように呟きながら、長い脚を緩やかに組み替えた。]
(+0) 2014/07/17(Thu) 00時半頃
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執事 ハワードは、メモを貼った。
2014/07/17(Thu) 00時半頃
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/* 私はこの男ロラ説にカシオミニを賭けますぞ。
(-8) 2014/07/17(Thu) 00時半頃
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[男は肩から力を抜いて深い溜息を吐く。 腹の上に両手を組んで、痛みを押さえつけるは精神の強固さ故。 或いは、齢六十を越えた辺りから覚悟していた命運のか。
伏せかけた視界の端に濡れた皮膚を持つ紳士を捉えた。>>@0 彼の物言いたげな眼差しに、直ぐに察するは立場を同じくするが為。されど、悪びれる様子もなく、略式の会釈を返した。] 何冊か書物を血に染めましたな。 開いた先が図書室であったとは存じ上げませんでした。 屋敷には幾らか個人蔵書が在りますが、 それで慰められるような書架ではありますまいな。
―――ふむ、
[彼の言葉を聞いて巡らせる視界。 そこには当然、先に権利を喪失した彼が。>>+1]
(+2) 2014/07/17(Thu) 01時頃
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やんちゃが過ぎましたな。 これは姫様のお怒りを買いましょう。
されど、諦観の縁には御座いません。 未だ、ですよ。セシル様。―――未だ、で御座います。
[自身にも言い聞かせるように呟くと、 やがて自身の前に、労うような茶の給仕が手配される。 彼の言葉に穏やかげな笑みを浮かべると、 心得まして。と言葉を奏でたのだった。]
(+3) 2014/07/17(Thu) 01時頃
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/* 地下と地上で時間軸がズレまくっておりますが、 日付変更線付近はあれでございます。 星の磁場がで、御座いましてね…、
(-10) 2014/07/17(Thu) 01時頃
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[未だ、そう未だだ。 まだ、彼女は死に切っては居ない。 死の縁にはあり、鏡も砕け、選択権もない。
けれど、それでも未だ、男が諦めるには易すぎる道。
緩く瞬きを挟んでから、彼に視線を寄越し、 先ほどまで死闘を繰り広げていたとは思えぬ老年が、 茶目っ気たっぷりに、にっこりと微笑み返した。>>+4]
(+5) 2014/07/17(Thu) 01時頃
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嫌で御座います。
[ばっさりと斬り捨てる一言が、彼の諦念を加速させるだろうか。 それでも、存外男に厳しい老執事は、口を開いて続けた。] 私めは、セシル様に共感を持ちますが、 生憎どちらの味方と言われるなら、スージー嬢に付きます故。
[自身の女性の好みが位と気の強い性質だとは、ここ数年ですっかりと自覚している。 当然、並べて天秤に掛けても、目の前の彼でなく、地上で一人残された女性に傾く。]
貴方様はスージー嬢の決意を良しと致しませんか? 生きて欲しいと心から願ったのなら、自らの心に悖ってはなりません。
貴方を叱れるのは、唯お一人で御座いますよ。 師とは道を示し、与えるだけの人物では無いと思っております。
―――…貴方が、スージー嬢に恥じる選択をしたとお思いなら それはきっと、訓えそびれたことがあるからでしょうな。
(+6) 2014/07/17(Thu) 01時頃
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[伊達に寿命近しいと呼ばれる六十の頂は越えていない。 懐から真新しい白手袋を取り出し、左右の指先を隠すと人心地。 人殺しの五指を白で包み、常の平静を呼ぶ。]
私めも人のことをとやかくは言えませぬが。 セシル様に必要なのは、青さかもしれませぬな。
―――…私は、スージー嬢のことを良く知りませぬ。 一つ、心の整理として、お話聞かせて下さいませんかな。
他愛無いこと一つで構いません。 小さなこと二つで構いません。
貴方の心を咎めるは、彼女の涙だけですかな。
[片手をティーカップに差し伸べ、茶器を引き寄せ、曲線に接吻。
既に意識は此方に居るが、亡骸はまだ館の中か。 呼気で湯気を散らし、自身を叱りつけるだろう唯一人の女性を、鏡の向こうに見ていた。]
(+8) 2014/07/17(Thu) 01時半頃
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/* 何故でしょうか。 セシル様と話していると、妙に心が凪まする。 中の方はお知り合いなのでしょうか…? (凄い疎いおじいちゃん)
(-24) 2014/07/17(Thu) 01時半頃
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十二年。彼女の人生の殆どを御存知と言う訳ですか。 それは良う御座いますな。
さぞかし、光り輝く日々でありましたでしょう。 ―――…失って初めて見えるもの、と言うのは、 使い古された常套句ですが、中々真を突いております。
[彼の言葉に耳を傾けつつ、喉に茶を通してみれば、 温度を感じることが出来る。喉から拡がる温もりだ。 自分に残された感覚は、そのまま猶予として換算する。
なにやら道に迷う若人然とした彼に首肯を重ね、>>+7 ソーサーにカップを静かに置いてから、脚を組み替えた。]
(+9) 2014/07/17(Thu) 02時頃
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私めは僭越ながら、まだ諦めておりません。 此処からなら、アヤワスカ神様の声もクリアに聞こえましょう。 戯れ一つで何事も成す、―――その神々しい力。 私は、少し、お話したく思いますな。
深き―――信仰心の果てを。
[最後は独りごちるように呟いて、セシルの声に意識を向ける。 彼の紡ぐ過去の語り部、拝聴するは喰えぬ輩ばかりだが、 築き上げてきた十二年が、彼女の首を縦に振らせたのだと知れば、興味も沸いた。**]
(+10) 2014/07/17(Thu) 02時頃
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執事 ハワードは、メモを貼った。
2014/07/17(Thu) 02時頃
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― 地下 ―
[自身の命は使い果たし、もう未来は無い。 強いて言えば、来世だとかに願を掛けるところだろうが、 死した先を考えたこともなかった。 興味はあるが、そこには意義が足りない。
静かに茶に口をつけ、喉に通らせ、腹に温もりを飼う。 大陸で味わったどんな茶葉とも違えど、鼻から抜けるような清々しさがある。
地下に居ても雨の音は遠くに聞こえ、大地を湿らせ続ける。 舌を潤し、セシルの言葉を肴に変えつつ、自身の顎に指先を添えた。]
――…ヴェスパタイン様の腕をもぎ忘れましたな。 腱を断てていたら良いのですが。
[物騒な声を唇に乗せて、馴染ませるは北の従者。 己の命の糸を断ち切った男の負傷を算える眼差し。>>9 感触はあったが、流石に老衰が激しい肉体。 安然を食んで暮らしていたツケかも知れぬ。]
(+11) 2014/07/17(Thu) 21時半頃
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[その場に両生類の姿をした緑の紳士が居れば、年は取りたくないものですなぁ。と他人事めいて微かに零す声を聞かせたか。 焦りも憂いも少ない老人は、ある種の覚悟をしていた。 何時か必ずやってくる、彼女との永劫の別れを。
されど、最中、耳に届いた彼の主人の声に瞳を細め。>>24]
(+12) 2014/07/17(Thu) 21時半頃
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――――敢えて。
敢えて、選択を最後の愉しみと取って置いているのでしょうが、 アヤワスカ神は残った魂は如何なされる御心算ですかな? 用済みなったものは捨てれば良いとは、 エコロジカルな思考ですが、そんな魂はもう見飽きたかと。
[訥、と漏らす声は、虚空を揺らすようにアヤワスカへと掛かる。 神とは存在する次元が違うのか、意識を向けてみても、 何処か自身の声も、館主の存在も遠くに感じてしまう。
紅い紗の向こうで、ただ在る冥府門の守人。 それでも、この声は聞こえているだろう。]
(+13) 2014/07/17(Thu) 21時半頃
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[浅く呼気を吸い込むと、耳に拾われるかすら分からぬ声を続けた。
例えば、権利を剥奪された後、唯々諾々と死を待つだけなら、 こうして、虚ろな魂に五感を与えることもないだろう。
仮令、悪趣味な幕間を慰める為だけに此処に在ったとしても、 指が動き、視界に捉え、耳に届くなら、口を開かずには居られない。
既に資格を失い、魂すら滅される可能性もあるが、 男は自分の魂よりも大切なものを館の中に残している。]
もし、―――もしも、最後の最後まで、姫様が残りましたら、 一つ、この老人が切望を吐くことを許してくださいますか。 これを希望と評するには、聊か泥臭く、 また、大変に得手勝手では御座いますが、 私めの意地は張るために在るようです。
[柔く微笑を口元に浮かべ、 地上の切迫した空気と一線を画する空間の演出。]
(+14) 2014/07/17(Thu) 22時頃
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[未だ、―――未だ、と再三胸の内で唱える語。
勝算など爪の先ほどもない。 本来ならば、悔いて膝を着き、夥しい自責の念で、 自身の無力を呪わねばならぬのだろう。
だが、それは全ての後で良い。一番最後で良いのだ。
もしも、自分が全てを諦めきれるとすれば、 それはきっと、思考も朽ちて、意識も四散し、 ハワードと言う一個体が無に還る時。
それまでは、如何しても、諦めきれぬ、一つがあった。*]
(+15) 2014/07/17(Thu) 22時頃
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/* 蛙殿が紳士でそわそわしております。
いいえ、私のような若輩者。 皮膚呼吸すら満足に心得てもおりませぬ故。
(-33) 2014/07/17(Thu) 22時頃
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[狼狽を取り成す彼が喋る度に、けろけろと鳴る喉に視線が引かれる。亜人であろうが、大分大地の根源に近しい形。>>@1 丸みを帯びたフォルムは神々の寵愛さえ、つるりと受け止めるのだろうか。]
―――クラリッサ嬢で御座いますか。 彼女は人にはなれませんが、隣人には成れるのでしょうか。 各々の都合を誹るような恥知らずな真似は致しませぬが、 彼女の一挙一動に心を揺らめかすのは、彼の方でしょうな。
[舌の上で言葉を操り、鏡に映る精巧な容貌を覗く。>>@2 二代に渡り、あの親子が求め続けてきたのは、どのような形へと転じるのか。 白い指先で、自身の口髭を緩やかに慰め撫でた。]
(+16) 2014/07/17(Thu) 22時半頃
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[還ってきた言葉は不意。>>*1 反応がなければ、幾度も声を投じる心算であったが、 管理者として据えられし存在は、勤労を抱えるらしい。
魂の行く末を明かす言葉に、興味深そうに首肯を向けて、 成程、と言葉を差し挟んで嚥下。]
少々、意外で御座いますが、摂理と言うものですかな。 私やセシル様は魂までも失ってしまいましたが、 館ではまだ、ただ死んでいる状態と言う訳ですか。
[館主は記録者と告げた。 人の命を掻き消すなど造作もないと考えていたが、 自ら率先して、殺戮を行うほど暴君でもないらしい。 やはり、人とは異なる意識の構築。
相手の僅かな沈黙を待ち、 少し、自身も考えるように間を置いてから。]
(+17) 2014/07/17(Thu) 23時頃
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―――いいえ、言葉を交わす相手を間違えては居りません。 嘆く一秒よりも欲しいものが御座います。 最期の一目よりも願うことが御座います。
戯れに響きますでしょうか。 無力の遠吠えに聞こえますか。 貴方の耳には夜鳴きの風より多くの後悔が届き、 貴方の目には地を打つ雨粒より多くの未練が見えているかと。
輪廻を断ち切り、過去も未来も永劫も全て賭して、それでも、切々と、ただ、深く。
生かしたい人が居ります。
人間の強欲など聞き飽きたと、笑ってくださいますな。 私めも、欲の深いことと、込み上げてくるものがあります故。
[語る口ぶりは、神を敬いながらも、怯えて乞うて居るわけではなかった。>>*2 ふふ、と口元に笑みを浮かべて、双眸を撓めれば、どうぞ、お慈悲を。と、老獪なる狸が腹を打った。]
(+18) 2014/07/17(Thu) 23時頃
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[その為なら。
己の望む、唯御一人の後数十年の短き時の為になら。 生も死も、何もかもを捧げようと、
これっぽっちも惜しくは無いのです。
―――そんな風に、諦観でも希求でもなく、 深く身体と精神に絡まる欲を飲んで、一層笑みを深めた。*]
(+19) 2014/07/17(Thu) 23時頃
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執事 ハワードは、メモを貼った。
2014/07/17(Thu) 23時頃
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はい、我が主のご友人らしく。 彼女の選択が、人間らしいよりも、ジェフ殿を満たすものであると良う御座いますね。
[彼の会釈に、此方をも身を正しての返礼。>>@4 随分と麗しい響きを持つ名を口腔で転がし、改めて己も紹介を。 名も肩書きも知られていたとしても、 挨拶は何事よりも大事と姫に諭してきた身の上である。]
私はハワード・サイレンス・サーストン。 若い時分はアヤワスカ神の敬虔な信者でありました。
リリンラ様の目下とも言えぬ末端で御座いましたが。
[死を拾うアヤの神と同じ牙を持てと、 授けられた二つ名はサイレンスの牙。
神に近づくには所詮、地を這う豺狼。 紛い物でしかないが、確かに数多の魂に この屋敷の門を潜らせ、多忙を強いた時期もある。]
(+20) 2014/07/17(Thu) 23時頃
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[ゆっくりとリリンラの言葉に頷き返し、 この緑の紳士は、聡いながらも人間の機微には疎いらしい。 少しの逡巡を挟んでから、言葉を選びつつ、口を開きなおした。]
隣に居るだけで良いなら、そうかもしれません。 しかして、リリンラ様。 肺呼吸しかしない輩は欲が深く御座います。
人ならざる感覚を有し、悠久の時を生きる貴男方には、 些細な問題かもしれませぬが、リリンラ殿は、 アヤワスカ神の隣に、唯居るだけで御座いましょうか。
どうぞ、機会があれば、雨粒数えるついでにお考え下さい。 もし、幸運が降れば、貴方様の主様の退屈を、 僅かながら埋めることが出来るかもしれませぬぞ。
[そんな茶目っ気を混ぜて、緩く片目を瞑って見せたのだった。*]
(+21) 2014/07/17(Thu) 23時半頃
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/* 姫様は大丈夫で御座いましょうか。(そわそわ) 多分、大丈夫と残してきましたが、 やはり、鏡を頂くべきではなかったでしょうか。
しかし、進行を優先させ、心情を疎かにするは聊か。 けれど、姫様のご健康は何より優先したく。
……我ながら、度し難い欲深さで御座いますぞ…。
(-49) 2014/07/17(Thu) 23時半頃
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多感な時期で御座いますなぁ、 まだ両掌も数えぬ幼子で御座いましたら、融通利かぬことも多いでしょう。
ですが、そうですな。十六ですか。 ―――それは、それは。 さぞかし、難儀を成されたでしょう。
[語りだされるセシルの声に、つい零れてしまうのは笑み。 自身が我が主人と出逢ったのは、熟年を過ぎて後であったが、 彼のように青い時分に出会っていたらと考えれば、途方もなく感じてしまう。それを直に味わった彼が、想い出を振り返り、脳で食むは感慨深い。
彼が乗り気でなかったのは口振りから知れたが、スージー嬢は、自身の見立て通り、人の心を厭わぬ人物ではなかったらしい。 磨かぬ石がくすむのは良くあることで、良き研磨石に出逢うか否かが分かれ道。 彼女が真実、路傍の石ならば、己も青臭い確認などしなかっただろう。
彼の話を冒険譚に聞き入り、耳を傾け続きを促した。>>+22]
(+25) 2014/07/18(Fri) 00時半頃
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ほう、年のことには口出ししませぬが、九つの少女にとっては恐ろしい話でしょうな。 小さな胸に打たれる恋情とは重苦しい楔で御座います。 自ら赤い実を弾けさせるなら、いざ知らず。
[思い出すのは気丈そうな彼の主人の姿。 気の強さを強調されても、自身が思い描けるのは、彼の前で大粒の涙を零し、か弱くも可憐な少女のように気高く在った様。]
―――……、……ふむ。 私は姫様が余り観劇を好まぬので、その手の話には疎く御座いますが、スージー嬢の御心は何処に在りましたのでしょうな。 物書きなど到底出来ぬ芸当ですが、舞台の上とするなら、この無学にもなんとなし察することが在ります。
[本当は、我が君は観劇そのものよりも、着飾らねばならぬ礼節を厭っていたのだが、一旦飲み込み、相槌を適えた。
美しいドレスに身を包み、恐ろしい男へと嫁ぐ少女。 それが、どれだけの幸いであるか。彼へ伺い、推し量るように黙ひとつ。>>+23]
(+26) 2014/07/18(Fri) 00時半頃
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ただ、お一つ。
[ゆっくりと指を一本立てて、彼に見せる。 指先は、示すように館内を、天を指して。>>+24]
差し出がましいことを申しますれば。 生きる世界が異なれば、貴方は彼女に出逢っておりません。
私めはもう、過去も未来も投げ打つ覚悟が御座いますが、 姫様の幸せを十全に考えているかと言えば、否でしょう。 私は重く、辛いものを姫様に背負わせようとしております。
―――…それでも、で御座います。 私は、死ぬ一瞬まで、いいえ、死んでからも。 何一つ、出逢い方も生き方も愛しみ方も仕え方も。
違えればとは考えませんでした。 姫様は私に、光と多幸を下さいました。
―――セシル様、
(+27) 2014/07/18(Fri) 00時半頃
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―――貴方は、何を頂き、何を返しましたかな?
[彼が持つのは理性と言う名の誠意。 まだ年若い彼の主人へ通じるかと言えば難であるが、割り切るには両者若さが目立つ。 つい焼いてしまうお節介は、彼の言葉が良く響き、胸に刺さる為。
其処で言葉を切ると、鉢を回され、沈黙数秒。 そうですなぁ、と立てた指を握りこみつつ、先ずは茶を一杯重ねたのだった。*]
(+28) 2014/07/18(Fri) 00時半頃
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[人以外の顔の変化は分かり難い。 されど、リリンラの奏でるケロとした声が、 笑気混じりに聞こえて、笑みを重ねる。>>@5]
では、お言葉に甘えまして、リリンラ殿。 何分、伝説にも神学にも疎く、 私はアヤワスカ神の何も知りませぬ。 精々が死に垂らす蔓により、魂を数える神とだけ。
[それは人が長い歴史の中で掻き集めた神の姿。 死の縁を覗いて戻ったものは限りあるが、 全てが二重奏の声を聞き、死を数える姿を絵に文字に綴った。
本当は神であるかすら知らぬ。 もっと高次の存在やも知れぬ。
自身より、翡翠色の肌と黄金の瞳を持つ画家の方が詳しそうであったが、人智を越える追求は適度に留めた。]
(+29) 2014/07/18(Fri) 01時頃
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ふむ、良いことを聞かせて下さいましたな。 然様ですか、貴方も元は魂持つ者で御座いましたか。
[納得の声を漏らして、リリンラの言葉より得る智。 彼の憂いの起因が何処かは知れぬが、交渉の先は多いほうが良い。>>@6
ケロリと鳴って噤む彼の広い唇。 それに合わせ、己はソファに背を預け、天井へと視線を向けた。]
――…もし、もしも、私の使い方を間違えねば。 何千回もの声すら知らぬ振り決め込んだ神々は、 唯一度の願いを叶えて下さいますでしょうか。
唯一度、ただ一つ。
その為に縋るが、なんであっても、構いはしませぬ。 払う代償が、―――…なんであったとしても。
[呟く独り言と、合わせた掌。 沈黙を食んで、考えるように指先を顎に宛がうと、深く息を吐き出し―――、沈黙を撒く男の姿は、まるで祈りに似ていた。**]
(+30) 2014/07/18(Fri) 01時頃
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