250 ─ 大病院の手紙村 ─
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[ ささやかな奇譚が、日常を蝕んでいく。 ]
(18) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 加賀は、今日も一人で部屋の前に立っていた。]
(20) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 敷地内禁煙。という張り紙は、 もう何度も目にして知っていたのだから、 たどり着くまでの過程で一服して来ればよいものを、 加賀はそうはしなかった。小さく息を吐く。
部屋に入るのに躊躇うなど、 いよいよ加賀は、自分でも何がしたいかわからない。 自分が何を欲しているのかも、何も。
これは、加賀が引き受けた依頼の一つだ。 浮気調査や家出人の捜索と何ら変わらぬ、 加賀の日常の一端でしかないものである。
……今日は、手土産はなかった。 昨日の、何もかもが気の迷いだった。 依頼に、そこまでは含まれていない。 薄気味の悪い子をかわいがる理由もない。]
(21) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 扉は、相も変わらず滑らかに開き、 加賀は硬い床を踵で叩き、ベッドサイドに立つ。
加賀が声をかけるより先に、 その子は耳を加賀に向けるように首を傾け、 「 パパ? 」と嬉しそうに言った。]
……よく分かったな。
[ 加賀が驚いたように言うと、その子は、 「 足音が 」と。加賀は少し面食らう。 「 それに、ママはこんな時間に来ない 」
……仕事をしている人間が見舞いに来るには、 確かに違和感のある時間帯である。なるほど。]
(22) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 少年とのとりとめのない話も、 連日、会話ばかりしていれば底をつく。
過去二日よりも沈黙の多い時間を過ごし、 加賀は何気ない動作で抽斗を開いた。 そうっとトレイを持ち上げる。
昨日の気の迷いを、そう、気の迷いだった。 あんなもの、気が付くやつがあるとすれば、 傍らの子でなく、母親たる女であるのだろう。 ならば回収してしまえばいいと加賀は思った。
──しかし、 そこにあるのは素気のない手帳の頁などではなく、 きちんと封のされた手紙であったからして、 加賀は、少しの間驚愕して動きを止めた。]
(23) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 手を伸ばし、それを拾い上げれば、 他にも一通、手紙らしいものが敷かれていた。
あの女か。と加賀は思ったが、 それにしては二通というのはおかしい。
そのどちらをも加賀は拾い上げ、 何事もなかったかのように、その子に向き直る。
気もそぞろに相槌を打ちながら、 加賀は順に手紙を開いた。一通目。
差し出し人も分からぬその手紙。 便箋や記された文字からして女だろうが、
奇妙なその文面に加賀が思い出したのは、 昔流行ったチェーンメールであり、 思わず、クスリと笑みをこぼした。]
(24) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 何人かに回せば恋が叶う、願いが叶う。 ──などという暇つぶしまがいの噂話。
いつの時代も、加賀はそんなもの、 信じたことなどなかったはずであるが、
なるほど、リ・ジアン様のお導き。 こういう使い方もあるのか。と、 どうやらこの奇妙な現象にも慣れつつある。
なんにせよ、もらって気分の悪い手紙ではない。 返事を求めるその文面に応えるように、 加賀は手帳にすらすらと文字を綴る。]
(25) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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merと名乗る人へ
幸運の手紙をありがとう。 君がしがない入院患者だというなら、 私はしがない見舞客とでも名乗ろう。
入院生活は退屈か。 私の見舞いの相手も、もう長くここにいるらしい。
つい一昨日、初めてここに来たので、 君の手紙は役に立ったよ。
ちょうど相手は甘いものが好きな男の子だ。 今日は喫茶店に連れて行ってやろうと思う。
退屈な生活を紛らわすものがあれば、是非教えてくれ。 菓子以外、土産の一つも思いつかないんだ。
(-6) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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追伸 ところで、merというと母や海の意味がある。 と記憶しているが、果たして君はどちらだろう。 前者であるなら、さしずめ私の署名はpereとしよう。
(-7) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 折り畳まれた手帳の1頁。 子供らしさの欠片もない、 文字を書き慣れた大人の文字で綴られた手紙。
気まぐれな神様のお導きのまま、 君の元へと舞い戻るのは、きっと少し先のこと。]
(-8) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 一人、笑いを零した加賀に、 その子は控えめに「 どうかした? 」と尋ねた。
なんでもない。と答えながら、 加賀は千切った頁の角を揃えて折り畳み、 ポケットの中に仕舞おうとした。
──そこに、覚えのない手触りがあり、 指先でつまみ出せば、それもまた紙片である。
皺の寄ったメモ切れ一枚。 加賀には縁のない、愛らしいキャラクターが躍る。]
(27) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 奇妙に思いながらも、 自分の書いたものと入れ替わりに、 つまみ出したそれと、抽斗にあった手紙を、 手帳にでも挟んでおこうと思ったのだ。
手帳の後ろの頁から千切りとっていくのが、 加賀の常の習慣というやつで、 そこではない、途中の頁に手紙を挟もうとして、
そこにもまた、見覚えのない紙を見つける。]
(28) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ それは愛想のない白の紙切れではあったが、 端に穴が開いていることから察するに、 ルーズリーフか何かの類なのであろう。
きっちりと角を揃えて二つ折りにされたそれを、 加賀は、本当に何の気なしに開いたのだ。
──不可解な文面。 加賀は我欲には忠実であったが、 それは結果としての話であり、 一々それらに名を付け、分類をし、 理性的に取捨選択を施した訳でもない。
薄気味の悪い。と、加賀は思い、 そこに手紙二通と、メモ一枚を共に挟もうとして、
加賀は、二日前の気の迷い、 いつしか加賀の元から消えたソレを思い出す。]
(29) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ どうやらその、可愛らしい紙切れは、 明らかに加賀に宛てられた返事であった。
気の迷いであった。 間違いなく、それは間違いであった。
それは、何かを血迷った男の、 当てのない神頼みであって、 誰かに返事を求めたワケでもなかった。
消えたはずの紙片。それへの返事が、 忠実に手元にあることに、加賀は寒気を覚える。]
(30) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 気付けば、その子も沈黙していた。 加賀が黙りこくっていたのだから当然だ。
病室はしんと静まり返っており、 それは、到底よい沈黙とは言えない。
反射的に、何かを綴ろうとした手を止め、 加賀はベッドの上で静止している子を見やった。
恐る恐る、と言ってもよい目をしていたが、 盲目の子がそれに気づくことは、恐らく、ないはずだ。]
(31) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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[ 「 どうかした? 」と、再度その子は言い、 今度は、躊躇いがちなどではない声音であった。]
……いや。 そうだ、喫茶店にでも行くか。 昨日ママと行ったんだけどな、
[ 平静を装って、加賀は口を開いた。 一度話し始めてしまえば、言葉を紡ぐのは簡単だった。
提案すれば、その子が少しは嬉しそうな顔をし、 「 ……行く 」と答えるので、加賀は安堵した。
手を引くべきなのか、加賀は逡巡したが、 その子は迷いなく、子供用の白杖を手に取った。 そんなものがあることさえ気づいていなかった加賀は、 少し面食らいながらも、彼が立ち上がるのを見ている。]
(32) 2018/09/24(Mon) 11時半頃
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メニュー、読み上げたほうがいいか?
[ 隣の子に向けて加賀は尋ねたが、 その子は大体覚えていると答えた。
二人で、院内の喫茶店に来ていた。 少年は慣れた様子で院内を歩き、 加賀は、少しの誘導をしたのみであった。
向かい合って座るべきか、 隣に座ってやるべきなのか迷い、 加賀は結局自分の判断で隣に座ったが、 その子はそのことに何も言わなかった。
戸惑っているのは加賀ばかりで、 落ち着かない様子の加賀とは裏腹に、 その子の態度は堂々としたものだった。]
(47) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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[ ぱらりと手持ち無沙汰にメニューを捲り、 加賀は思い出したように、 季節の商品だけ知らせてやることにする。]
じゃあ、ええと。 ああ、期間限定のメニューがあるらしい。
……洋ナシのタルト。 洋ナシと苺がのっているらしいな。
[ それにするか。と加賀は問うたが、 その子は首を横に振り、プリンにすると言う。
加賀はそれ以上何も言わず、 片手を挙げて店員を呼んだ。]
(48) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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プリンと……洋ナシのタルト。 コーヒーと、……おまえ、飲み物は?
[ 「 紅茶。蜂蜜入りのやつ 」とその子が言い、 オーダーはそれですべてだった。
甘いものとあわせて甘い飲み物を飲むなぞ、 加賀には理解のできない行いであったが、 口を出すのも野暮と考え、何も言わなかった。
提供までの待ち時間に、 加賀は手持ち無沙汰に、手帳を開いた。
先ほど見つけたいくつかの紙片が、 一緒くたになって挟まれている、その頁を。]
(49) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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[ 先ほど開封しなかった手紙の中身に、 加賀はそのときようやく目を通した。
──はじめになくした、紙切れ。
手紙でさえなかったそれに、 律儀に、封筒にまで入れられて、 ”手紙”として綴られた返事。
差出人だろう。記された名に、 加賀は当然、見覚えも聞き覚えもなく、 何かを信じるような文面に、 ちくりと胸が痛むような気さえする。
隣の子は、行儀よくそこに座っており、 加賀がよそ見をしていることも知らないのだろう。]
(50) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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[ ドリンクとケーキのみのオーダー。 提供まで、さほど時間はかからなかった。
その子への提供の際に店員が、 ここに置きますね。という旨のことを言った。]
よく、ここに来るのか?
[ 店員が去ったあと、加賀は尋ねたが、 その子は「 最近はあんまり 」と濁す。
……傍らに白杖が置いてあるのを見て、 気を回してくれたのかもしれない。 顔見知りとは限らない。と、加賀は思う。
その子を知っている人間に会う。 というのは、どうにも居心地が悪いと感じる。]
(51) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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[ 商品の提供を受け、その子は、 左手でそうっとプリンの容器を包みこみ、 器用に右手で中身を掬って食べだした。
加賀はそれを眺めながら、 いったん手帳を避け、フォークとナイフを手に取る。
彩りよく並べられた果実の隙間を通すように、 加賀は一口分を切り分け、口に運ぶ。
程よく酸味のきいたタルトには、 さして甘党でない加賀も舌鼓を打った。
もう一口、と切り分けたところでふと、 隣に座る子の手が、容器を包み込むように持ち、 スプーンで淵をなぞるようにしながら、 その中身を順調に減らしていくのが目に留まる。]
(52) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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[ ──ああ、そうか。 加賀は腑に落ちなかったものが、 すとんと納得のいったような気になる。
崩れやすいタルトを、 加賀はまた一口分切り分けた。
それを、空になった容器に入れてやる。 「 何? 」とその子は不思議そう言い、]
……一口やるよ。うまいぞ。
[ 加賀は短く答え、コーヒーを啜る。
その子が驚いたような顔をしたあと、 嬉しそうに、スプーンを握った様子を、 それを、加賀は横目で眺めている。]
(53) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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[ 結局のところ、どうしたいのかなど、 加賀には到底分かりそうにもなかった。
情が移ったのかと問われれば、 加賀は即座にそれを否定するのだろうし、 部屋から連れ出してみれば、 数分後にはそのことを後悔したりもする。
手帳に挟んであった数枚の紙切れ。 それを取り出し、加賀は返事に迷った。
その子は、ちびちびと紅茶を飲んでいる。 それを、無遠慮に眺めてみる。
何度見たって、その子をかわいいとは思えず、 かさついた首の皺だとか、妙に小さな親指の爪、 頭に対してやけに大きい耳朶でさえも、 見れば見るほどいびつに思え、受け入れ難い。]
(54) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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[ じとりと掌が汗ばむ。
注がれる視線も知らず、 その子は賢明に喉を動かしている。
何かから逃れようとするように、 加賀は一気にカップを傾け、コーヒーを口に含んだ。 それは思いのほか熱く、思わず小さく叫んだ。
その声を拾い、「 大丈夫? 」と傾けられた首。 その子の胡乱な目を見たとき、 加賀は、次に綴る言葉を決めた。]
……や、大丈夫だ。 飲み終えたら、部屋に戻ろうか。
[ そう言いながら、加賀はペンを取る。]
(55) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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良識のある誰かへ
馬鹿げた願いに、さぞ驚いたことだろう。 驚かせてすまなかった。そして助言をありがとう。 どうするべきなのか考える良いきっかけになった。
薄情なやつだと思われるかもしれないが、 天に祈ることはしてみても、 自分でどうにか、とか、 やはり、そこまでしてやる気は起きないのだ。
所詮は可哀そうなだけの他人の子だ。 余計な手出しをする気はないが、 嘘をつき通す努力だけはしてみよう。
良識ある貴方なら、違った判断を下すのだろうか。 後味悪く思うかもしれないが、貴方も忘れてくれ。
(-15) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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[ 気まぐれに行きついたものと同じ紙切れ。 十字についた折り目は少しいびつだ。 先のものより、少しは丁寧な文字。
支離滅裂な、それでも手紙の形を取ったソレは、 やはり、気まぐれな神によって届けられるのだろう。]
(-16) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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[ ペンを置く。 それをまた手帳に挟み込むと、 加賀は、傍らの子に声をかけ立ち上がった。]
……ああ、少し待ってくれ。 売店によってもいいか? 買いたいものが。
[ その子を待たせて、 加賀はシンプルな白い便箋を購入した。
その間、その子は加賀の帰りを、 廊下の隅で忠実に待っており、 加賀はそのことに少し心を痛ませながら、 「 待たせて悪い 」と言ったものだが、
常のように少年が首を傾け、 左手で、ひしりと加賀の手を掴んだものだから、 また、加賀の背をぞわりと悪寒が這う。]
(56) 2018/09/24(Mon) 18時頃
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[ 罫線だけが入った白い便箋を広げていた。 端の千切れた紙切れじゃ、 あまりに不相応であると思ったからだ。
ベッドに戻った少年の傍らに腰かけていた。 その子は、思い出したようにまた語る。
「 誕生日に、ケーキを買ってきてくれたよね 」 「 けど、キウイが入ってて、ママと喧嘩してた 」
当然、加賀にとっては初めて聞く話であり、 適当に、よく聞く話に当てはめて応える。]
(108) 2018/09/24(Mon) 22時頃
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……キウイと、パイナップルも駄目だったか。
[ 「 そうそう 」とその子は機嫌よく頷き、 加賀は、今度は大げさに安堵することもなく、 さらりとはったりをきかせることができた。
正誤でなく、堂々と言うのが大切なのだ。 嘘の基本ともいえる心得を今更に思い出す。
先ほど、改めて文字として認めたからだろうか。 少し、気分はマシになっていた。
加賀の役割は、期間限定の影武者であり、 それ以上のことは、加賀の立ち入る領域ではない。 そこまでお人好しではない。と改めて自認し、 これでいいと自分に言い聞かせるような心地である。]
(109) 2018/09/24(Mon) 22時頃
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