204 銀花の咲く路、灰白の世界で君を想う
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[――恋愛は、苦手だ。 それが片思いならなおさらだ。
叶うことなら、平穏な人生を送りたい俺にとって。 相手の一挙一動に、動揺して。 心臓が激しく動く感覚は、結構しんどい。
なのに思うことをやめられなくて。 気付けば結構な時間が流れてた。
クリスマスパーティへの参加を決めたのは、それが理由。 いいかげん、胸の奥に秘めた思いと決別してもいい頃だ。
もっともそれは、告白なんてまっとうなものではなく。 卑屈な俺らしく、何とも後ろ向きな手段によるものだけど。
―――最初から片思いだって、言ってるだろ。 叶わないって知ってるんだ。 どうか、俺にこの恋を、諦めさせて。]*
(5) 2016/12/18(Sun) 10時半頃
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[――本当は、諦めたくなんて、ない。]
(-1) 2016/12/18(Sun) 10時半頃
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― 12月23日:公園 ―
[朝から妙なことに巻き込まれてしまった。 ちくちくと針を動かしながらため息をつく。
駅から大学へ向かう途中にある小さな公園。 いつもは視界の隅に入れるだけで通り過ぎるけど、今日は少し違った。
小学生くらいの男の子が一人で立っていた。 学校はどうした、学校は。とも思ったが。 あれか。もしかして今日は国民の休日と言うやつか。 大学生には関係ないのが悲しいところ。
ならば珍しくもなんともない。 そのまま通過しようとして―――できなかったのは。 男の子が、今にも零れそうなくらい瞳に涙を溜めていたのと。 その手に、腕のとれた猫のぬいぐるみがあったから。
……別に男の子が心配なわけではない。 ぬいぐるみが気になっただけなんだ、俺は。]
(6) 2016/12/18(Sun) 11時頃
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何してんだ、お前。
[園内に入り、ぶっきらぼうに声をかけ、高みから見下ろした。 俺は目つきがよくないから。 最初はずいぶんと怯えさせてしまった。
しばらくして、男の子がようやく口を開く。]
―――“まぁちゃんのぬいぐるみを、壊してしまった”
[話を要約すれば。 まぁちゃんというのはこいつの女友達らしい。 見ればわかるけど、友情以上の感情もあるんだろう。]
(7) 2016/12/18(Sun) 11時頃
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[いつものように一緒に遊んでいたら。 まぁちゃんとやらが、少し早いクリスマスプレゼントに貰ったぬいぐるみの話ばかりするものだから。 何故かむしゃくしゃして、ぬいぐるみを無理やり奪い取ろうとしたところ、布が避けて綿が零れる事態になったということだ。
まぁちゃんは壊れたぬいぐるみを置いて、泣きながら去って行ったらしい。]
……… お前、少しは素直になれよ。 でないと人生いろいろ失敗するぞ。
[不器用すぎるだろ。
俺もたいがいあれだけど。 人のふり見てなんとやらは、今はみないふり。 仕方がない、と肩をすくめ。]
(8) 2016/12/18(Sun) 11時頃
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貸せよ。 俺が直してやる。
[その時の男の子のキョトンとした顔は なかなかに傑作だった。
ソーイングセットは鞄に入れっぱなしだし。 修理くらいならできるだろう。 何より男の子の頭にくるくらい馬鹿な行動が、 誰を思い出して、放っておけなかった。 ぬいぐるみを受け取って、近くのベンチに腰を下ろす。]
(9) 2016/12/18(Sun) 11時頃
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ほらよ。もう壊すなよ。
[そんなに時間は掛からなかったと思う。 修理が終わったぬいぐるみを、男の子の顔面に押し付ける。 壊れた箇所をぺたぺた触って「本当に直ってる…」と茫然しているのを捨ておいて、後はとっとと立ち去ろうと。 そんな背中に飛んできたのは、幼い言葉。
―――なんでにーちゃんは男なのに、 さいほーできるんだ?]
……別にいいだろ。
だってそのお陰で、 まぁちゃんのぬいぐるみを直して、 ごめんなさいって言えるんだから。
(10) 2016/12/18(Sun) 11時頃
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[それで男の子が納得できたかはわからない。 確認しないまま、公園を後にしたから。]
はぁ。
[ため息とともに出てくるのは、白い息。 気付けばクリスマスパーティはもう目前。
“やーい。律のオカマ野郎 縫物やぬいぐるみが好きなんて、へんなやつー”
どこからか響いてきた声に、 苦虫を噛み潰したような顔になる。 いつかの、不愉快な記憶。>>0:101 相手の顔なんてもう覚えてない。 なのに、囃し立てる声だけは今もなお鮮明で。]
(11) 2016/12/18(Sun) 11時頃
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……うるせえよ、馬鹿。 出てくんな。
[あの時にも「別にいいだろ」ってはっきりと言えたのなら。 俺は、もう少し自信をもって生きられたんだろうか。]**
(12) 2016/12/18(Sun) 11時頃
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[喧嘩してしまった男の子と女の子がどうなったのか。 少し先の未来で、誰かに顛末を聞かされることはあったかもしれないけど。 真っすぐに大学へ向かって歩いていた俺が、 現時点で知ることは無く。
流石にポリエステルは厳しかったから、買ってから鞄に入れたままのもう少し丈夫な糸を使ったけど。 それでも強度は大丈夫だったか。 ジーンズステッチとか、購入しておけばよかった。 などと気になるのは、自身の未熟さばかり。
……もしかしたら、俺が本当に心配しなければいけないのは 糸の強度なんかじゃなくて。
綺麗なお姉さんに優しく諭してもらった男の子と。>>18 綺麗なお兄さんに優しく手を引いてもらった女の子が。>>35
それぞれ別の相手に淡い思いを抱いてしまうこと、だったかも? ――なんてな。]
(38) 2016/12/18(Sun) 17時頃
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/* KAWAII
名前貰えてよかったね、ひろくん
(-21) 2016/12/18(Sun) 18時半頃
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(眠い)
[ぬいぐるみ制作も佳境に入ったものだから つい昨日は夜更かしをしてしまった。 おまけに夢見が悪かった。
一匹の犬と栄介が俺の周りをぐるぐる回っている。 何故か奴らは少しずつ数を増やし。 混じり合い、溶け合っていく。
最終的に完成したのは、栄介の顔をした犬。 ―――いわゆる人面犬ってやつだ。 大量のそれらが一斉に俺に向かって吠え立てる。
あれは悪夢だった。 うるさいし。]
(61) 2016/12/18(Sun) 19時半頃
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[さらに可愛らしいサンタクロースの存在は知らなくとも。 どうしても幼い頃の自分を思い出せる、あの生意気な子供は。 果たしてまぁちゃんに謝れたのか。
そんな様子でぼんやりと歩いていたもんだから、 受信したメールにも>>56 こちらに向かって駆けてくるふわもこ、もとい猫の存在にも、気付くのが遅れた。]
――は?
[俺は猫は好きだ。 と言うか基本的に動物全般好きだ。 だから「止めて」の声に、とっさに猫を抱きとめた。]
(64) 2016/12/18(Sun) 19時半頃
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(あれは……)
[猫を抱いたまま、前方を確認する。 先ほど叫んでいた女の人。 見覚えがあった。
図書館でよく見る人。 渡り廊下でニモと話していた人。 天文サークルの、写真に写っていた人。
ええと、違う。そうじゃない。]
(65) 2016/12/18(Sun) 19時半頃
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うづき、先輩…?
[彼女と共有した記憶は殆どないけど。 その外見から得られる印象は鮮烈で、強く残っていた。 彼女が近付いてきたのなら、 この猫先輩のですか? 何て言いながら差し出そうとして―――]
(66) 2016/12/18(Sun) 19時半頃
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いたっ
[鋭い爪が、俺を引っかいた。 一筋の赤い線が、頬に流れる。 同時に鈍い痛み。
(……ああ、そうだ。)
[思い出した。
俺は猫が好きだけど。 猫の方は、そうでもないんだった。]*
(67) 2016/12/18(Sun) 19時半頃
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― 少し後に送られたメール ―
タイトル:余ったやつでいい
[本文は、空白。>>56]*
(68) 2016/12/18(Sun) 19時半頃
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/* ニモちゃんと里咲ちゃん両想い? 百合っぷるかな、かわいい〜
(-29) 2016/12/18(Sun) 20時頃
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/* せっかく友人縁故貰ったんだから 栄介君と恋バナとかしたいけど
こいつの性格からしてできるか怪しいぞ
(-33) 2016/12/18(Sun) 20時頃
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いや。こちらこそ… 本、見つけてくれて…
[どうやら記憶違いではなかったらしい。 内心で安堵しつつ。 どうにも歯切れが悪くなるのは、 本のタイトルがタイトルだったからか。 最も先輩は気にしていないかもしれないが。]
始田先輩…
[ようやく苗字の読み方を知った。 不勉強を晒すようなので、口には出さない。]
(87) 2016/12/18(Sun) 21時半頃
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…………ぁ
[清潔な布が汚れてしまったことに、若干の申し訳なさを抱く。 素早く貼られたので、絆創膏の柄には気付かない。
猫は始田先輩の猫ではないらしい。 それなのに大人しく抱かれている光景に 羨ましさを覚えたが、顔に出ないよう努力する。]
(88) 2016/12/18(Sun) 21時半頃
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いや。 こっちこそ、ハンカチ汚して…
あー… 一年の樹村 律、です。
確か天文サークルの人ですよね。 明日のパーティー俺もいるので、よろしくお願いします。
[数か月ごしの自己紹介。
白い髪に紅の瞳。 微笑みながらこちらを見上げる先輩は。 現在誠意制作中の、うさぎの“みーたん”を思い出させて。>>1:67 知らぬうちに、ほんの僅か、口元が緩んだ。]*
(89) 2016/12/18(Sun) 21時半頃
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[俺にしては、と注釈は付くが。 和やかに会話して。 猫も親猫の元に帰って。
めでたしめでたし――で終わるはずだったが。 記憶力の優れている先輩は、きちんと本のタイトルを覚えていたようだ。>>98]
……え
[順調と言えば、順調だった。 ハマりにハマって、大中小、あらゆる色形のあみぐるみを量産した。 ようやく落ち着いて、 ぬいぐるみへと手を伸ばしたのが最近のことだ。 ただ、それをそのまま言うことはせず。
明らかに不自然なくらい、間をあけて。 ゆっくりと口を開いた。]
(104) 2016/12/18(Sun) 23時頃
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……俺があみぐるみの本借りてたって 内緒にしてもらえませんか。
[すぅとほのかに暖かみを帯びていた瞳は、冷えた色に変わる。
“――…男のくせに”
耳の奥で、過去の記憶が反響し合い。 耳鳴りのように襲い掛かる。 無関係な人ならまだしも。 この人は、明日のパーティーの参加者だ。 そこで話題に出されでもしたら。 それは、俺にとって紛れもなく恐怖で。]
(105) 2016/12/18(Sun) 23時頃
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……昔、 男のくせにぬいぐるみなんかって馬鹿にされて あんまり知られたくないんですよ。
[それは、もしかしたら。 先輩のサークルメンバーを侮辱する台詞だったかもしれない。 あそこには、そんなことで馬鹿にする人は、いないのかもしれない。 でも、俺はそれを知らないから。]
(106) 2016/12/18(Sun) 23時頃
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そういえば始田先輩、クリスマスプレゼント 決まりました? 俺全然思いつかなくて、わりと参ってます。
[隠す気のない、露骨な話題転換。 話は終わりだと言わんばかりに。
笑顔を作るのは苦手だけど、 精一杯の明るい顔で。]*
(107) 2016/12/18(Sun) 23時頃
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マフラーいいと思います。
[失敗したなと思っても、後の祭り。 栄介だったら冷えた空気に明るさを取り戻す術をしっていたかもしれないが 俺にはとても無理な話。 ぎこちない雰囲気の中、それでも会話を続けて。
先輩は誰にも言わないと約束してくれた。 それは俺が望んだ答え。
「そんなことないよ」>>110 もしそう言われたら――…どんな反応を返していただろう。]
(122) 2016/12/19(Mon) 00時頃
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気持ち……
[今から手作りなんて間に合わない。 ならば店でてきとうに、無難な物を選んで購入するしかないけれど。 そうして手に入れたものに 俺の気持ちってやつは、籠っているんだろうか?]
子猫、助けたのは始田先輩ですよ。 俺は先輩の上げた声に、咄嗟に振り向いただけ。
それじゃ。 ………。
[出かけた言葉を呑み込んで。 あとは無言で、駆けて行く背中を見送った。]
(123) 2016/12/19(Mon) 00時頃
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ごめんね、て。 悪くないのに、謝るなよ…
[一人になれば、 先ほど飲み込んだ言葉がするりと零れ落ちる。]
本当に、 謝らなきゃいけないのは
[“ごめんなさいって――――”>>10]
(……あいつは、ちゃんと謝れたかな。)
(124) 2016/12/19(Mon) 00時頃
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[いつだって。俺の方なのに。]**
(125) 2016/12/19(Mon) 00時頃
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