250 ─ 大病院の手紙村 ─
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[ 小さな怪奇譚は次章へと続く。 ]
(24) 2018/09/23(Sun) 14時頃
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[ 病院内の喫茶店で軽食を取っていた。 コーヒーを啜り、サンドイッチを齧る。
当然ではあるが、机上に灰皿などなく、 加賀は手持ち無沙汰に、机の端をトントンと叩いた。
加賀は一人であった。 予定は覆らず、女は仕事で来れないという。
昼食と呼べる時間を少し過ぎていた。 女が息子の好物だといったプリンを買ってきたが、 喫茶店のメニューに甘味があるのならば、 ここに連れてきてやればよかったのではないかと、
加賀はちらりと考えたりもしたが、 目の見えないガキの腕を引いて歩くなぞ、 到底加賀にできるとは思えなかった。]
(25) 2018/09/23(Sun) 14時頃
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[ 一人で遅めの昼食を終え、席を立つ。 あまり気の進む話でもなかったが、 仕方なく、加賀は一人で病室に向かうことにする。
そう、仕方なく。と加賀は思った。 一人であの子に会いに行くというのは、 非常に憂鬱であり、腹の底がずんと重かった。
どうして土産など買ってきたのか。 それももはや思い出せそうになかった。
病室の扉は、静かに開く。 滑らかなその音を、その子は敏感に聞き取り、 身体を起こして加賀を待っていた。
名を呼んでやろうとして、 喉に張り付いたように、言葉が出てこない。]
(26) 2018/09/23(Sun) 14時頃
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[ 「 パパ 」とその子が、うれしそうに加賀を呼ぶ。]
(27) 2018/09/23(Sun) 14時頃
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[ 一瞬、部屋の入口に立ち尽くしていた。]
……ああ。 今日はな、プリン買ってきてやったぞ。 食うだろ? 一緒に食べよう。
[ 詰まった息を吐き出すように、加賀は言った。
その子は嬉しそうに頷き、 「 抽斗にスプーンがあるよ 」と言った。 母親が、ある程度のものは揃えているらしい。
木のスプーンをつけてもらっていたが、 使い慣れたもののほうが良いのだろうと、 加賀はそのときようやく思い至る。
慣れた手つきでベッドサイドの抽斗を開け、 その子はスプーンを二つ探り当てた。]
(38) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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[ 蓋を開け、加賀は丸っこい瓶を一つ渡してやる。
器用にそれを食べだした姿に少し安堵し、 加賀は何をするでもなく、それを見ていた。
スプーンを一つ手渡されてはいたが、 加賀は甘いものが好きというのでもなく、 自分の分など買ってこなかったので当然だ。
スプーンを指の間に挟み、 手帳をぺらぺらとめくっていた。 最近はスマホが便利などともいうが、 手書きというのが加賀に馴染んだやり方だった。
しばらくは静かだった少年は、 プリンを一つぺろりと平らげて、 加賀の言葉を待つように、顔の角度を上げた。]
(39) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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[ 一瞬の沈黙のあと、口を開いたのは少年だった。
「 よく覚えてたね 」とその子は言った。 少しの間があき、「 ぼくの好物 」とも言った。
するりと、言うべき言葉は簡単に浮かんだ。]
……聞いたんだよ、ママに。 正直、聞くまでは忘れてた。ごめんな。
[ 下手にすべてを嘘で塗り固めないほうがいい。 と、嘘をつき慣れた加賀はよく知っていたし、
加賀は、自分の子がなにを好んでいたかなど、 もうどんなに記憶に潜ったって思い出せない。
「 パパらしいね 」とその子は言ったので、 加賀の選択は間違いではなかったのだろう。]
(40) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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ほら、貸せ。瓶とスプーン。 洗ってきてやるから。
[ 手を伸ばし、少年の手元からそれらを受け取る。
触れた指先が、その子の体温を拾う。 じとりと湿っているようにさえ思い、 加賀は動揺を懸命に押し隠した。
手早くスプーンと瓶を洗い、 加賀はそれでも病室へとまた戻った。
タオルの類の使い分けなど分からなかったので、 ティッシュを取り、スプーンの水気をふき取る。 その子が饒舌に語るのを聞きながらのことだった。]
(41) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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[ ティッシュを敷いた上に瓶とスプーンを並べ、 加賀はしばらく、その子の話に耳を傾けた。
あちらこちらに話が飛んだが、 今日も今日とて加賀の役割は、 飽きた様子を見せずに相槌を打つことであり、 これならばAIにだって取って代われそうだ。 と思いながら、ひたすらにその子の話を聞いた。
昨日と少し違うのは、話が過去に遡り、 加賀の知らないパパとやらの姿が垣間見えたことだ。
面白おかしく自身の昔話を語るなど、 加賀が依頼人に聞いたパパの姿とはつながらない。 彼らが昔住んだ家に広い庭があったことも、 ……よく、両側から両親を手を繋ぎ、 近所を散歩したことも、加賀には初耳である。]
(42) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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[ ……あの女。と加賀は内心思う。
適当に話を合わせ、微笑み、 時折「 そうだったか? 」と忘れたフリをしながら、 相手の目が見えないのをいいことに、 加賀はずうっと、苦々しい表情を浮かべていた。
あの女の仕組んだ嘘がバレようが、 加賀にはなんの不利益もない──いや、 もう数日分の報酬が惜しい程度のことで、 何も心を痛める必要などないはずであるが、
久々の再会と相成った我が子が目の前にいるとして、 思い出話にひたすら相槌を打つばかりで、 こちらからはエピソードの一つもない、というのは、 あまりに不自然であるように加賀は思った。]
(43) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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[ ……思って、加賀はゆっくりと口を開く。]
……ああ、おまえは昔から、 砂遊びが好きだったよなあ。 たまに公園に連れてってやると、 砂場から離れようともしないで。
つるつるの泥団子を作ってやったら、 喜んでしきりに撫ぜていただろう。
[ 覚えているか、と加賀は声に笑みを含ませたが、 当然、それは首をすげかえた他人の思い出である。 目の前にいる盲目の子のエピソードではない。
幼少のころの記憶なぞ、 いくらでも誤魔化しはきくだろうし、 そんな覚えはないと言われたとて、 忘れてしまっただけだろうと笑えばいい。]
(44) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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[ 案の定、「 そうだったっけ 」と言った子に、 加賀は知らんそぶりで、笑って言ってやる。]
忘れてるだけだよ。 なんせ、小さい頃の話だからな。
[ 「 そうかも 」と少年は笑った。
気づけば日が暮れかけており、 加賀は、乾いたスプーンを手に取り、 ベッドサイドの抽斗に戻してやる。
抽斗の中は、几帳面に整頓されており、 トレイごとにモノが分類されていた。
そういえば。と、少年が苦労なく、 抽斗からスプーンを取り出したのを思い出した。]
(45) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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──…………。
[ ほんの、気の迷いだった。
加賀は手帳にペンを滑らせ、 途中、迷ったようにペンを止めつつも、 千切った頁を、トレイの底に忍ばせる。
「 どうかした? 」とその子が言うので、 加賀は、スプーンを戻しておいた。と答えた。
……瓶は、帰りにゴミ箱にでも捨てよう。
そう思い、加賀は立ち上がり、 「 そろそろ行くよ 」とその子に言う。]
(46) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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もうこの部屋から出られないかもしれない君へ
君がこの手紙を読むことなどないのだろう。 可哀そうだが、君を取り囲む世界など嘘まみれだ。
だが、もし万が一にも君が、この手紙に気付き、 ……或いは、違和感の正体を看破するなりして、 真実を突き付けてくるようなことがあるならば、
その時は、願いの一つくらい叶えてやってもいい。 ふざけた名前の神さまなんぞに縋らなくとも、 おまえの望みの一つくらい、 お父さんが。
(-22) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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[ 千切り取られた手帳の1頁。 文章の終わりだけ、筆圧が弱く、 奇妙に間が空いている、そんな走り書きだ。
とある入院患者の部屋に忍ばせたはずの手紙は、 いつしか貴方の身の回りに、紛れ込んでいる。]
(-23) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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[ 立ち上がろうとした加賀に、その子は声をかけた。 「 パパ 」と呼ばれて、加賀は思わず動きを止めた。
人と話すとき、首を少し傾けるのが、 その子の癖であるようだった。薄く微笑んで言う。
「 たばこ、やめればいいのに 声がなんか、ガラガラしてるよ 」
加賀がぎょっとした顔をしたことも、 その子にはわからないのであろう。口を開く。]
──そうだな。
[ 今度こそ立ち上がろうとした加賀の手を、 その子はやはり今日も握り締め、 「 明日も来てくれるよね 」と、穏やかに言う。]
(47) 2018/09/23(Sun) 20時頃
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[ 思いのほか長居をしていたらしい。
ちょうど、仕事を終えた女が、 入れ替わりでやってくるというので、 院内の喫茶店で待ち合わせをすることにした。
コーヒーをひとつ頼み、 加賀は依頼人がやってくるのを待った。
やってきた女に会釈をし、 少年と交わした会話について報告をする。
女は蜂蜜入りの紅茶を頼んだ。 「 おいしいんですよ 」と彼女は笑った。 「 ここに来るとつい頼みたくなるんです 」とも。
……そういや、この店の名は。 加賀は思い出し、名物みたいなものか。と思う。]
(76) 2018/09/23(Sun) 21時半頃
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[ 温かい紅茶にティースプーンを差し込み、 女がくるくると混ぜるのを見ながら、 加賀は、少年と過ごした時間を語った。]
……その中で、嘘をつきました。 一緒に泥団子を作ったことがあったと。
もちろん、嘘ですから、 彼に何か聞かれることがあれば、 適当に話を合わせていただければ。
[ 女はしきりに礼を言った。
なぜ礼を言われているかもわからなくなり、 加賀はなんだか、眩暈がするようだった。 ……誤魔化すように、コーヒーを口に含む。]
(77) 2018/09/23(Sun) 21時半頃
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[ 女は、紅茶を飲み終えたら、 顔を見に、息子の部屋に行くと言った。
加賀は一つ頷き、 それから、ふと思い出したように尋ねる。]
──そういえば、 彼の本当の父親と、私と。 似ている声をしているんですかね。
[ 女は首を傾げ、「 ……ええ、それなりに 」と、 曖昧な答え方をしたので、加賀は思わず笑った。 寒気がしたのは、思い出した話があったからだ。]
(78) 2018/09/23(Sun) 21時半頃
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[ 最後の一口を飲み干し、女は席を立つ。 加賀はそれを座ったまま見上げた。 加賀のカップにはまだ少し、濃色の液体が残っていた。
ほんの戯れのように、肩頬で笑って加賀は言う。 ……寒いな。と、加賀は掌をこすり合わせた。 じとりと汗でもかいたかのように湿り、滑りが悪い。]
(79) 2018/09/23(Sun) 21時半頃
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……人の保てる記憶の中で、 最後に残るのは、声らしいですよ。
[ ご存知でしたか。と言った加賀に、 女は怪訝そうな顔をして、「 いえ 」と短く答える。 加賀は小さく笑い、依頼人たる女の背を見送った。]
(80) 2018/09/23(Sun) 21時半頃
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/* ふと見返してたら、加賀、 「一緒に食べよう」つってプリン1個しか買ってきてないサイコな男になってる 見えないからいいだろって思ってたってことで……
(-54) 2018/09/23(Sun) 22時頃
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[ もう残り少なかった液体を飲み下し、 加賀は、またトントンと机の端を指先で叩いた。
コーヒーを飲んだとき。腹が膨れたとき。 もう十数年も続けたせいで、 習慣のように身体はニコチンを求める。
──今更、と加賀は思う。 あの時とは違い、もう今更、 他人の子のために禁煙するなど、 加賀には到底できそうにもない。
する必要もないことだ。 ほんの数日、自分の欲求を殺したところで、 染み着いたにおいが落ちるわけでもない。]
(126) 2018/09/24(Mon) 00時頃
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[ 自分は何をしているのだろう。 と、加賀は思う。気分がよくない。
しばらく、空になったカップの底、 何も浮かびも残ってもいないそれを眺めた。
ここに来るまでは。 こんな荒唐無稽なお遊戯に巻き込まれるまでは、 加賀の日常はそれなりに充足しており、 もう会うことのない嘗ての家族のことなど、 思い出すこともなく、生きてきたはずだった。
少なくとも今日、加賀はあの部屋で、 我が子と手を繋ぎ、公園まで歩いたことや、 面白おかしく改変した童話を語り聞かせたこと、
……そんな、ありきたりな昔話ばかりを、 思い出しては、……気分が悪い。寒気がする。]
(127) 2018/09/24(Mon) 00時頃
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[ ……そろそろ帰ろう。
そう思った加賀の視界に、 一枚ものの小さなメニューが飛び込んでくる。
カラフルなイラストを見るに、 どうやら季節限定のメニューなのだろう。
……明日も、加賀はあの部屋を訪ねる。 盲目の子の問いかけに頷いてしまったためだ。
無言の首肯をあの子が拾えたかなど、 加賀には知り得ぬことではあったが、 加賀自身はそれを約束と捉えていた。
加賀はまた手帳から1頁を千切り取り、 すらすらとペンを走らせて、ソーサーの下に敷いた。]
(128) 2018/09/24(Mon) 00時頃
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絵心のある店員さん
ごちそうさま。美味しかった。 長居してすまなかった。
季節のケーキがうまそうなので、 明日も置いてあると嬉しい。
次は、■■■ 甘いものが好きなツレと来る。
(-91) 2018/09/24(Mon) 00時頃
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[ 手帳サイズの紙切れは、 縦横一度ずつ折り畳まれている。
書き損じでもあったのか、 一か所だけ、強く塗り潰された文面。
机の上に置いておくつもりだったソレも、 気まぐれな神様により、誰かの元に届けられる。]
(-92) 2018/09/24(Mon) 00時頃
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[ ──連れてきてやってもいい。
と加賀はどういうわけか思い、 店内を一周見回してから、席を立った。
病院内の喫茶店とあれば、 病人やけが人がいたからといって、 妙な視線に晒されることもないだろう。
どうせ、明日もこの病院には来るのだ。 代わり映えのしない白い部屋よりは、 加賀の気分も少しはマシかもしれない。
連れてきてやってもいい。 と、理由が見つかったかのように、 加賀はもう一度そう思い、会計に立つ。]
(129) 2018/09/24(Mon) 00時頃
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