190 【身内村】宇宙奇病村
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― 生物学系雑誌『Foundation』XXX号 ―
[『特集:不思議な隣人たち』ボムビークス種研究の第一人者、Vanallen教授へのインタビューより]
――ボムビークス種の特徴についてお話しいただけますか。 はい。大きな特徴として『繭』と呼ばれるものにて出生、成長していく事と、性別が後天的に決定される事が上げられます。 『繭』は二つありますが、まず彼らが出生する小さな繭の話から。 半径20mほどの楕円形で、表面は保温性の高い繊維で覆われています。内部は培養液のようなもので満たされていると考えられ――ああ、何と言っても宇宙に一つだけしか存在しないものですので、内部を開けて見るわけにもいかないため外部からの分析結果による予測となりますが――まず、繭の中に一定の周期で核が発生します。それは中央から外側へ向けてゆっくりと移動しながら細胞分裂を繰り返しhuman型を形作り外周部に到達する。そうすると、表面の繊維に包まれるような形で出生されるのです。 そうして出生された後、三年が経過すると表面から繊維が自壊し始め、ようやく彼らは小さな繭の外へと出ることが出来るのです。
(+6) 2016/05/20(Fri) 20時半頃
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さて、小さな繭から出てもまだ彼らは外の世界に触れる事はできません。次に彼らは大きな繭と呼ばれる施設で生育されることになります。 小さな繭を中心として建てられた、人類がボムビークスを育てるための施設。徹底的に管理された環境で彼らは成長していくこととなります。なぜそこまでするかというと、大きな繭から一歩でも外に出ると彼らはすぐに病に侵され死んでしまうほど体が弱いのです。育成の過程で免疫をつける処置をしなければ、大きな繭の外に出ることはできませんし、大きな繭がなければ彼らは繭が自壊した後に死滅する運命でしょう。 彼らの育成には多大なエネルギーを必要としますが、それに消費したものよりも多くの物を返してくれます。その脆弱な肉体と引き換えに彼らは高度な知性を持っています。我々がいわゆる天才と呼ぶ者達と比べてても遜色のない知性を持っており、科学者として名を刻んでいる者も多く居ることはみなさんもご存知だと思います。
(+7) 2016/05/20(Fri) 20時半頃
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彼らが我々にもたらした研究結果や技術はそれこそ金額に換算するのも馬鹿らしいほどの物となっています。差別主義者や彼らの能力に嫉妬する者は『人類に庇護されなけれ生きることもできない寄生虫』などと言ったりもしますが、共生や互恵関係と呼ぶのが正しいと思いますね。 また、彼らは我々人類にとって非常に美しい、愛らしいと感じさせる容貌をしています。色彩の薄さも彼らの神秘性を増すのに一役買っており、『生きた芸術品』と呼ぶものもいるくらいです。もちろん、それが良いことばかりではなく、誘拐されて出生数の少ない希少性も相まって、特に成人前の場合は高額で取引されたり、宗教団体に神代として祀り上げられているなんて事もありますが。 過去の彼らは現在ほど肉体が脆弱ではありませんでした。人類の庇護を受けるに従って、より庇護を受けやすい形に適応していったのが現在の彼らです。 もっとも、彼らがより人類からより手厚い庇護を受けられるように適応していったのか、それとも彼らが人類の庇護なしには生きられないように人類が適応させたのか、どちらなのかはわかりません。当時の記録にアクセスする権限がありませんので。
(+8) 2016/05/20(Fri) 21時頃
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――教授はどちらだと思われますか? それを公の場で言っちゃうと大変な事になりますからねー(笑) さて、話は変わりますが彼らが性別を持たずに生まれてきて後天的に性別が決まる、というのはよく知られた話ですね。 彼らは同種では交配することが出来ず、外部にパートナーを求めるわけで、その過程でパートナーに合わせて性別が定まるわけです。具体的に何が性別の確定に影響をあたえるのか、その際心身にどのような変化が起こっているのかは現在も研究中となっておりますが、彼らは子供の遺伝子にあまり影響を与えない事がわかっています。知能が高かったり、外見が良かったりなんてことはありますが、基本的にはパートナーの種族特性を引き継ぎます。ボムビークス自体は『繭』から出生するわけで、自らを繁殖する必要がないのかもしれませんね。
(+9) 2016/05/20(Fri) 21時頃
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では、なぜ彼らは性別を選択するのか。彼らは、繭の情報の一部をバックアップとして他種族に刻んでいるのでは、という仮説が立てられています。彼らは、性別も生物としての本能も関わらない真実の愛を求めているのだ、なんてロマンチックな説もありますね。僕もこの説嫌いじゃないです(笑) ああ、そうだ、僕独自の研究ですが。彼らの恋愛観についてお話しましょうか。彼らは年上をパートナーに選ぶことが多く見られ、これは彼らが繭から出生し両親が存在しないことに起因して…… ・・・ ・・ ・ (ページ上部に、Vanallen 教授と彼に肩を抱かれ恥ずかしげにピースサインをする白衣を着た小柄な女性の写真)
(+10) 2016/05/20(Fri) 21時半頃
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― 夢のなか ―
[Pavr=opetyに向かう船内。 医務室にて作業をしながらアシモフと語り合う。その内容は『繭』を見るためにXi=Lingをアシモフが訪れた時の話。 一作業を終えた後は、整備室へと向かいミツボシのメンテナンスを行う。タイミングを合わせて顔を出しに来た、ヤンファの語るOllovaの研究結果を聞きながらミツボシの少しずれた相槌を楽しむ。 食堂へ向かう途中、会話をしてるワクラバとエスペラントに遭遇。ワクラバに封筒を手渡しして、三人で食堂へ向かうことを提案。 食堂ではイースターとナユタも混ざり、食事を取る。キノコとプリントークで盛り上がった。 食後は倉庫へ向かう。大きな水槽の前で彼女は待っていて、Pavr=opetyの海やそこに生息する生物について語り合う一時を過ごす]
[そんな夢を見た]
(+11) 2016/05/20(Fri) 21時半頃
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[とくん。 そんな音を聞いた気がする。 その鼓動の音は甘い夢から引き戻す。 夢から醒めた夢の中。 だけれども、こちらの夢はただ見るだけのものではなく。 明晰夢に近いのだろうか、意思が動きとなって反映される]
[ゆっくりと体が浮上していく]
(+12) 2016/05/20(Fri) 22時頃
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[初めは、しっかりとした大人の方だという印象でした。 行きの船の中での印象もそれから変わることはありませんでしたが、一緒にお茶をしながら話した時、少し不思議な感じを受けた事を覚えています。 それが始まりだったのかもしれません]
[大きく変わったのはあの時でしょうか、食堂で『女らしさ』の話をした時。 問いかけに答える彼女の目に翳ったのは、何だったのでしょうか。 その時にボクの中でこの女性のそばにいたい、支えてあげたいという気持ちが大きくなっていったのです。 研究の協力者としてボクが選ばれれば良いなとか、そんな他愛もないことを考えたりして。 話の流れの中で彼女にボクの事を好ましいと思っているかを聞きました。 少し冗談めかして、悪い答えが返ってこないように、卑怯にもそんな聞き方で]
(+16) 2016/05/20(Fri) 23時半頃
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[『君を好ましく思っているよ。とってもね』]
[ボクの中で何かのスイッチが入った、そんな感覚でした。 そう応えてくれるだろうと、予測していた答え。 それでも、心臓が大きく脈打つのがわかりました。 胸の奥がじわりと熱くなるのを感じ、それが高まる鼓動と共に全身に広がっていく。 そういう意味の好ましいではない、ということが理解っていながらも心身の異常を抑えることはできませんでした]
(+17) 2016/05/21(Sat) 00時頃
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[もしボクが男の子になったら。 あんな告白じみた問いかけをこの船旅でするとは、その直前まで自分でも思っていませんでした。 船旅も終わり、そのままそれぞれの星に帰る。 もしまた会えたのなら、そんな風に思っていました。 そう思っていたはずなのに、ボクは彼女に自分の気持ちを押し付けたんです。 それは危機的状況に見舞われていたからでしょうか、それとも未知の病による影響でしょうか]
[でも、それは、心の奥に秘めていた本当の気持ち]
(+18) 2016/05/21(Sat) 00時頃
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[浮上していくにつれて、周囲の色は薄まっていく。 ふと不思議な感覚がして、動きを止めた。 誰かがいるような、そんな感じが。 見渡してみても自分以外居ないし、もし誰かがいたとしてもこれは自分が見ているただの夢だ]
[それでも、鈍い水流に沈められないように逆らう。 例えそれが独りよがりな考えだとしても。 もしこの場にいるのが彼女ならば、一人で寂しくないように。 彼はその場にふわりふわりとたゆたっていた]
(+19) 2016/05/21(Sat) 00時半頃
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[頬に温かい物が当たる。 それは緩やかな水流に乗って、届けられた。 薄桃色の流れの先へ、目線を向ける。 探していた姿が、そこにあった。 ゆっくと流れに逆らって、近づいていく]
[近づくにつれ、彼女の顔がはっきりと見えてくる。 寂しさの混じった、その表情が。 先ほど頬に当たった暖かさを思い出す。 寂しさを抱いて泣いている女の子が、目の前にいる。 だから――]
[両手を伸ばし柔らかに、抱きとめた。 まるで、彼女を包み込むかのように]
(+26) 2016/05/21(Sat) 21時半頃
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