199 獣[せんせい]と少女 2
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―― 一年前:誕生日 はたけ ――
[ 真桑瓜と無花果と それから陽に向かって咲く花と。
差し出されたおめでとうを抱きしめて>>19]
せんせ、ありがと。 たくさんプレゼントもらっちゃった。
[ 物よりもたくさんの贈り物をもらったと もう一度強く、せんせいの手を握ったのだった。*]
(24) 2016/10/10(Mon) 00時半頃
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――回想:一年前の誕生日と名前の付いた砂糖水 ――
[ それは多分たくさんつまみ食いをして お腹がいっぱいになった後のこと。
食堂に戻ってきたわたしを待っていたのは 『カリュクス』と名前を貼ったコップが一つ>>0:556
その中身が透明だったから メルヤせんせいにお願いした砂糖水だって すぐに気がついた。]
(30) 2016/10/10(Mon) 01時頃
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[ 甘い、甘いコップの中身 花の蜜と似ているのに、たくさん飲める砂糖水。
なくなっちゃうのがもったいなくて 舐めるようにちょびっとずつ飲んでいく。
だから飲み終わるまでには だいぶ時間がかかったけれど。
『プレゼント、ありがと。』
空っぽになったコップの上 ラベルがあったところに新しいラベルをぺたり。
ありがとうの言葉を貼り付けたなら コップを片付けに厨房へ。]
(31) 2016/10/10(Mon) 01時頃
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[ 空っぽになったコップを洗って 中に新しくお水を入れる。
その中には、井戸へ行く途中に摘んだ小さなお花。 メルヤせんせいがいない時を見計らって せんせいの部屋にこっそり置いた。*]
(32) 2016/10/10(Mon) 01時頃
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―― 回想:一年前の誕生日とたまご ――
たまご? せんせ、ケーキつくるの?
[ 目の前にごろごろ転がった大きなたまご>>0:48
これがヘクターせんせいだったら 料理の材料だと思うところだったけど ここにいるのはホレーショーせんせいだったから たまごとせんせいを見比べて目をパチパチ。
けれど、一つ選ぶようにっておそわって ようやく誕生日プレゼントだって理解したから。]
(38) 2016/10/10(Mon) 01時頃
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んー………
[ どれにしようかって 上から見たりしたから見たり。
全部がとても魅力的だから 選ぶのがとても難しかったけど。]
このこにする!
[ 悩んだ時は感覚に頼ろうって 瞼を閉じて、その場で三回くるりと回る。 そして目をつむったまま、選び取った一つのたまごは。]
(39) 2016/10/10(Mon) 01時頃
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せんせい、これ あのときのシーツみたいね。
[ 透明の殻の中、揺れる赤と青。
角度を変えれば赤は青に、青は赤に そして混ざり合って紫に。
浮かべばそれは星のように輝いて 沈めばそれは、花のようにそよぐ
あのとっておきの悪戯を仕掛けた日 デメテルちゃんとわたし、そしてせんせいで 仕上げたシーツの模様に似ているようで。]
ありがとう。
[ 嬉しいなって、手のひらで包んだ。*]
(40) 2016/10/10(Mon) 01時頃
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[ そんな去年の一日の記憶を夢に見たのは きっと今日が、誕生日だから。*]
(52) 2016/10/10(Mon) 01時頃
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―― 現在:神木 ――
[ 一年前と同じように眩しい朝の光。 目眩まで起こしそうな金の色。
今日が誕生日だということも、もう 一年前のように忘れはしない。 日に照らされ、金色の影が落ちる土の上 一歩一歩と、神木の根元を目指していけば。]
―――綺麗
[ 離れていてもわかる白い枝と重なり揺れる葉の音。 何より先にこっちに挨拶をしたかったから。 ほんの少しだけ早める歩み。 そして、目的の場所にたどり着いたなら]
おはよ、メルヤ先生。
[ そこにいた先生に挨拶を。*]
(68) 2016/10/10(Mon) 01時半頃
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―― 回想:水を入れた紙風船 ――
かみふうせんのつくりかたはね しょこのほんでみたの。
[ 感心してるようなせんせいに>>20 わたしが考えたんじゃないよって 首を左右に振って見せて。
隠れ方や投げ方は、オナモミの応用だったり デメテルちゃんとの研究の成果だったり だからわたし一人の成果とは言えないなって
そんなこと考えてたら、油断していたようで。]
せ、せんせい!??
[ おでこに当たって弾けた風船。 濡れてぺったり張り付いた前髪をかき分けたら 逃げてくせんせいの姿が見えて。]
(79) 2016/10/10(Mon) 02時頃
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[ えいやっと、投げた紙風船はせんせいの肩辺りへ。
ぶつかったかどうかも確認しないまま 井戸の後ろに隠れたわたしは次の一撃を製作して。
互いにいくつ投げたかわからないくらい 雨に濡れたどころか、水たまりに寝転がったくらい びしゃびしゃの姿になったけど。]
わかった!それじゃあつぎは なげるよっていいながらなげるね。
[ 『また』の約束>>22に大きく頷いたその後は
メルヤせんせいのお叱りの予感がしたものだから ニコラスせんせいの影に隠れるようにして。*]
(80) 2016/10/10(Mon) 02時頃
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―― 回想:水風船の後 ――
[ 案の定怒られたニコラスせんせいとわたし>>62
予想通りなメルヤせんせいの反応に 友達と一緒なら逃げ出すところ だけども今日、一緒に叱られているのは ニコラスせんせいだから。]
せんせいがぬれたのはね、わたしがなげたの わたしがぬれたのはね、せんせいがなげたの
[ 一応説明はしたけれど これじゃ説明になってないのはわかる。
メルヤせんせいの指示通り 揃って並んで、指先までピンてしたなら。]
(84) 2016/10/10(Mon) 02時半頃
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わぁ、ふかふか
[ 渡されたのは乾いたタオル。 お日様の匂いがするそれに ほっぺたをつけて、しばらく感触を楽しんだ後。]
せんせ、かわいた!
[ 肌や髪についた水気を拭き取って お説教もちゃんと受けようって メルヤせんせいの前に待機したのだった。*]
(85) 2016/10/10(Mon) 02時半頃
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―― 回想:もうひとつの紙風船の記憶 ――
[ 記憶力はあまり良くない方だけど お仕置きされることもそれなりに多いけど それでも、記憶に残るお仕置きもある。
それはそう、ご飯抜きの刑や くすぐりの刑 それに素敵なお仕置きも――――]
(86) 2016/10/10(Mon) 02時半頃
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[ その日、わたしがいたのは井戸の影 手にはおきまりの水入り紙風船が二つ三つ。 いつものように獲物を狙うようにして 誰か通り掛からないかな。なんて狙ってた。
だけどその日はなかなか誰もこなくって もう戻ろうかなっておもった時 こっちに来る影>>0:889に気がついたんだ。
普段なら狙わないヴェスパタインせんせい だけど狙おうって思ったのは
井戸の影にいる時間がちょっと長かったから。 ひとりでいる時間が寂しかったから。
だから、怒られてもいいやって 投げた紙風船は、綺麗に飛んで>>0:890]
(87) 2016/10/10(Mon) 02時半頃
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[ 頭から水をかぶったせんせいの姿に>>0:891 やっぱりやめればよかったって 後悔する気持ちは、飛び跳ねて隠した。
どうせ怒られるなら思いっきり 『こらっ!』ってされた方がいいと思うから。
でも、やっぱり怒られるのは怖くて 本当は不安でしかたなかったけど。
けれどせんせいの反応は わたしが思っていたのとは全然違った。]
(88) 2016/10/10(Mon) 02時半頃
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[ お説教の雨の代わり わたしが浴びたのは、たくさんの水しぶき。
犬と鳥を合わせたような姿のせんせいが 『わんっ!』て鳴くなんて この時初めて知ったような気がするけど。
びしょ濡れになったわたしを乗せて 学校を走りまわったヴェスパタインせんせい0:893
早いスピードには慣れていなかったから 最初は必死でしがみついていたけれど 途中から面白くなってきて。]
えー、おかわりっ!
[ 終わる時、そういったのを覚えている。*]
(89) 2016/10/10(Mon) 02時半頃
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―― 回想:エリちゃんと砂糖水 ――
[ いつもは賑やかな食堂も おやつの時間が過ぎた後は少し、静かになる。
その日のわたしは、少しのつもりのお昼寝で すこしどころか、おやつの時間にも起きなくて 目が覚めた時には、おやつと夕ご飯の間の時間だった。
遊んだりしないで寝てただけ なのにお腹はすっかり空いていて でも、おやつを食べるにはおそいから
ヘクターせんせいに習った砂糖水を作ろうかなって わたしは一人で食堂に行ったんだ。]
(113) 2016/10/10(Mon) 03時頃
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[ メルヤせんせいにお願いして コップにお水を入れたときだったかな エリちゃんの姿が見えたから。
水の中、くるくる消える砂糖の白と 透明だけど確かに甘い、花の蜜に似たそれを 一緒に作ろうって、手招きしたんだっけ。
完成した砂糖水はわたし一人で作るより ずっと美味しいって思ったのを覚えてる。*]
(114) 2016/10/10(Mon) 03時頃
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―― 現在:神木の下 ――
[ かさりと踏んだ下草の音と、靴の底で折れる枝の音。 こうして立てる音さえも、この一年で少し大きくなった。]
うん、眩しすぎて目眩がするくらい
[ 天候のことなのか、それとも別の何かなのか 私にはわからないけれども せんせいのいうとおり、本当にいい日>>90だったから。
空を見上げるせんせいの隣へと近づいて ぽつりと呟く姿を、真似っこするように視線を空へと動かし。]
(136) 2016/10/10(Mon) 04時頃
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[ 強い光にくらりと一瞬、視界が霞む きつく目を瞑ったなら少しの間、自分だけの闇で休憩を。]
ありがと、先生。 調子……具合はね、悪くないよ でもちょっとね、心の中がシンてする感じ。
お腹が空いてるのと似てるけど 何かが食べたいわけじゃないの。
[ 深く頭を下げたメルヤ先生。 先生がそんな仕草をするのは、特別なことじゃなかったかもしれない。
けれども、誕生日の今日だから。 その仕草が、紙風船でびしょ濡れになったときや 一年前の誕生日のことを、遠くに持って行ってしまうみたいだから。]
(137) 2016/10/10(Mon) 04時頃
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[ いつも通りにって、持ち上げた口の端。 もしかしたら、気付かれてしまうかもしれないけれど。
それでもかまわず、いつものように。]
あっ、あのね、メルヤ先生 今年もお誕生日プレゼント あるなら今度は、空が飛んでみたいの。
……鉤爪ぶらーんはいやだよ? [ ケラケラって笑ったけど 先生の顔をまっすぐには見られなかった。**]
(138) 2016/10/10(Mon) 04時頃
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[ 少しだけくらくら揺れた視界。
だから、先生が肩に手を回してくれたなら>>224 そのまま今は甘えておくことにして。
『―――寂しさ、なのかな? へんね、いまは先生も 友達もまだみんな一緒なのに。』
声に出さずに心の中で紡いだ言葉。
その中にある『まだ』に気がつけば 自分の手を一度、強く強く握って。]
(256) 2016/10/10(Mon) 17時頃
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[ 気のせいかもしれないけれど 震えているようだった先生の身体。
わたしの中にある『寂しさ』 もし先生のなかにも それと同じ寂しさがあるならば
嫌だけれども、良いな。なんて 背中合わせ、正反対の気持ち。
寂しいって思う時間は嫌だけれども。 寂しいって思えるのは、悪いことじゃない気がした。]
(257) 2016/10/10(Mon) 17時頃
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[ 今年もプレゼントはちゃんとある。 そのことに心の中でホッと胸をなでおろす。
全部が遠くに行ったような気がしたから。 わたしだけが遠くに行ったような気がしたから。
だから去年と変わらない"プレゼント"という形が まだあることに救われたような気がして。
前よりも少しだけ隠すのが上手になった私。 けれども誤魔化し切れてはいなかったんだって 俯いた状態のまま、抱き寄せられながら小さく苦笑い。]
(258) 2016/10/10(Mon) 17時頃
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……ぎゅっとは、卒業なしで 鉤爪ぶらーんは、卒業ね?
[ 頭を抱く腕に安心してた。
だからその手が離れたとき 私は誤魔化すこともすっかり忘れて 縋るように瞳の赤を先生へ向け。]
背中に乗って飛んでもいい? [ 贅沢かな。なんて*]
(261) 2016/10/10(Mon) 17時頃
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―― 回想:過去最大の悪戯 ――
[ 共犯者の青色と、わたしの赤 二つの色が入ったコップを手にもって そろりそろりと、せんせいの部屋へ。
二つ合わせたら紫色になるって デメテルちゃんのアドバイス>>0:382 もし成功したら素敵だなって 混ぜる分の色水も残しておこうって決めた。
だって、摘み取ったお花から 普通なら、次の命は生まれない
だけど、残ったお花の色が 混ざりあって、新しい色を作るなら それは、次の命につながったみたいで。]
(272) 2016/10/10(Mon) 17時頃
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わたしは、こっちからかくね
[前に悪戯を仕掛けたとき、ホレ―ショーせんせいは 踏んづけてもおきなかったよ。なんて言い足して。
本当はチクチクを仕掛けたときに 起きていたなんて、微塵も思ってはいなくって。 まずは絵をかきやすいようにって せんせいの体をシーツでぐるぐる>>0:614
そうしてせんせいのシーツの上に わたしは赤い色水で、デメテルちゃんは青色で 夢中で花と星を散りばめてから。]
ねっ!すてきなあさだよ
[ 床に腹ばい、ベッドの下に潜り込んだ後 デメテルちゃんの声に>>0:707合わせるようにして 始まりの合図をしたのだけれど。]
(274) 2016/10/10(Mon) 17時頃
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[ 前の時もそうだったけれど わたしは悪戯の詰めがあまいらしい。
せんせいのあげた大きな声>>0:615 それに『足跡』なんて言われたものだから 反射的に自分の足の裏を確認しようとして。]
ゴン!!!!
[せんせいがまだベッドにいたならば すぐばれてしまうくらいに思いっきり ベッドの底に頭をぶつけて。]
……せんせ、いだい
[ 涙のにじんだ眼を手で拭いて のそのそベッドの下から這い出てみたら ちょうど同じタイミングで 自白してくる相棒の姿>>0:708が見えた。]
(275) 2016/10/10(Mon) 17時頃
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[ 痛い目には遭ったけど、成功した悪戯。
胸を張ったデメテルちゃんの隣 わたしも並んで胸を張って見せた後
せんせいの寝ていた場所の空白 そこの白を一緒に埋めたんだ。
せんせいのお寝坊は 逆にひどくなった気もするけれど。*]
(276) 2016/10/10(Mon) 17時半頃
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