95 天国に一番近い島
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―昨晩―
[古老達を除き、誰もいなくなった集会所の戸を叩く音がする。 返事を待たないまま、来訪者はその戸を潜った。]
…で?
[なにがしかの決定が下されたらしい、場を男は見やる。 古老の中でもトップ…長老が、重々しく口を開いた。]
『決定は下された。 本日より、伝統に則り、処刑を執り行う。』
[男は何も言わない。 そんなのは、解っていた。 彼らが黙って殺されるのを待てる筈がない。 老人というものは、伝統に固執することしか出来ない。 それ以上に、人間は…弱い。]
(5) 2013/09/09(Mon) 07時半頃
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『処刑は、明日昼、処刑台にて行う。』
[続けられた言葉には、やはり無言を。 しかし男の目は、鋭い光を放つ。 男の視線と、長老の視線が無言の内に火花を散らした。 暫くの間の後、男は口元にいつもの緩い笑みを浮かべる。]
…因みに… 誰だ?
[しん、と静けさが降りる。 ぴりぴりと張り詰めた空気の中。長い長い時間が過ぎた。]
(6) 2013/09/09(Mon) 07時半頃
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『…グレッグ・アーベル。』
[答えたのは、別の古老であった。 男の視線がそちらへと向く。]
…俺は、外部の人間疑えっつったよなぁ?
[低く、笑みと共に呟かれる言葉。 答えた古老は冷や汗を流す。]
『外部の人間の調査には、時間がかかる。 それとは別に…非力な女子供が犯人像として上がったのだ。』
[気丈にも答える古老に、男は緩い笑みを向け続ける。 しかし瞳は獲物を見つけたケモノのようなそれだ。]
グレッグが、非力な子供? 馬鹿を言え。 普段から荷運びしてる、大の男だぞ。
(7) 2013/09/09(Mon) 07時半頃
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[男が言うには滑稽かもしれないが、少なくともそこらの男に負けない程度の力はあるはずだった。]
…要は、理由つけて殺したいだけだろ。 怪しまれてる奴を。
[男の視線は投票箱へと行った。 この投票は、何のことはない。 ただの人気投票なのだ。 一番怪しまれている奴、一番消えても文句が出ない奴。 それを、探るための。
男の拳が震える。 しかし…この島における絶対者は。 間違いなく、この老人どもなのだ。 現に、そのやり方で今までやって来ているのだ。]
(8) 2013/09/09(Mon) 08時頃
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…処刑は、決定なんだな? [低く、絞り出すように、尋ねる。]
『あぁ。島の総意だ。』 [そう重々しく答える長老が、いっそ滑稽であった。]
…了解した。 [男はひらりと手を振ると、集会所を後にした。集会所には、思い沈黙が宿る。 しばらく後…]
『…長老。』 『なんだ。』 『処刑台は、整備が不十分です。あの男に、任せるのでは…』 『任せた。』 『…は?』 『あの男は、間違いなく、やるだろう。 …それが、盟約なのだから。』
(9) 2013/09/09(Mon) 08時頃
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―深夜―
よーぅ、グレッグ。
[家に帰ってきたグレッグを、呼び止める声がする。 グレッグはその聞き覚えのある声に振り返っただろう。 どんな反応を示したか、それを知る者は…]
悪いなぁ、グレッグ。 …またな。
[男の他には、もう居ない。]
(10) 2013/09/09(Mon) 08時頃
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―回想―
[それは、一瞬だった。 男がしたのはただ。 銀のナイフを一振り、それだけ。 しかしその刃は、正確に少年の頸動脈を切り裂く。 一気に血圧の下がる脳は、痛みや恐怖を認識する前に、意識を失ったことだろう。 吹き出す鮮血を、男は正面から受け止める。 その血に染まる顔に、表情は無い。]
…。 [倒れようとする体を軽く抱き止め、その命の流れを受け止める。 急速に失われていく熱、妙に重たい体。 それは、男の良く知るものだった。]
…悪いなぁ…グレッグ… [しかし、それは、はじめてのモノでもあったのだった。]
(11) 2013/09/09(Mon) 08時頃
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[男は少年の躯を抱き上げ、そのまま運び去る。 少年の死を見ていたものは、男の他には紅い月だけであったろう。
そして、朝になれば、処刑台の足元に寝かされた少年の躯を、誰かが見つけたことだろう。 調べれば、少年の家の前に残る、血痕も…]
(12) 2013/09/09(Mon) 08時半頃
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―深夜過ぎ―
[少年の躯を処刑台へと寝かせた後。 血染めの服はいつしか乾いている。 それを纏ったまま、男は墓場へと向かう。 誰にも姿を見られなかったのは、いっそ奇跡であったろうが、それは男がこの島の構造を熟知しており、また、“仕事”に長けていた故であろう。 墓場の奥、長く誰も来た様子の無い墓の前で、足を止める。 その質素な墓石に背中を預け、男は地面に座り込んだ。 懐をまさぐり、ひしゃげた紙箱を引っ張り出す。 中から曲がった煙草を一本取り出し、火をつけた。]
…ふー…。
[鉄臭い臭いが鼻の内側にこびりついているようだ。]
(16) 2013/09/09(Mon) 19時半頃
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[かつて、殺戮衝動に取りつかれることを恐れ、自ら命を絶った恋人の墓に背を預け、湿気た煙草を燻らせる。 何の贖罪にもならないが、それが男の常だった。 懐から、古びた手帳を取り出す。 月明かりの下、パラ…と捲られたページには、1ページにひとつ、名前が記されていた。 ゆっくりと、順に捲り…さらのページに至る。 そこに、一つ名前を書き足した。]
…。 [彼が、苦しまずに逝けたなら、良かったと思う。 しかし男にそれを確かめる術はない、ただ…祈るしかないのだ。]
(17) 2013/09/09(Mon) 19時半頃
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[煙草の火が消えた頃、男は立ち上がる。 そして、自分の住み処へと、ゆっくり体を揺らしながら帰る。
着ていた服はもう使い物にならない、脱いだなり躊躇わず竈で焼いた。 それから肌を染める朱と鉄の臭いが消えるまで、シャワーを浴びてから、ベッドに身を投げ出して泥のように眠ったのだった。]
(19) 2013/09/09(Mon) 20時頃
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―俺んち―
[目が覚めた時には、もう随分と日が高く昇っていた。 男にしては珍しい…非常に珍しいことである。 カーテンの無い窓から差し込む日が、目に痛い。]
…。 [ベッドに横になったまま、ぐ、と右腕を前に伸ばす。 見上げた手の甲に、結婚は微塵も残ってはいなかったが、種の色が重なって見える気がした。 それを疎ましいと思う気持ちも、もう随分前に失ってしまったけれど。
何かをつかむように、空で拳を握りしめ、それを胸元へと引き寄せる。 開いた掌には、当たり前に何もない。 男の胸の内にも、何もなかった。 殺したのが誰であれ、同じなのか俺は… そう思えば苦笑しか零れない。]
(58) 2013/09/10(Tue) 07時頃
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よっこらせっと。
[体を起こしてベッドから降りると、戸棚からパンを取り出して齧る。 これを買ったのは昨日だったか、一昨日だったか。 多少買い足した食料も、あまり蓄えがあるわけではない。 水道水で胃に流し込み、もう一度シャワーを浴びてから、身支度を整えた。 流石に好き勝手伸びている髭は剃った。]
…さぁてと。
[集会所に、行かなくてはならない。 しかし、その前に… 酒が飲みたかった。 男は昼間だというのに、BARへと向かう。]
(59) 2013/09/10(Tue) 07時頃
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―BAR―
[扉を押せば、カランという音が耳に心地よく響く。 CLOSEの札がかかっていたかもしれないが、そんなものを確認する男ではない。]
よーぅ、邪魔するぜぇー。
[店には、誰かいただろうか。 もしもエフェドラがいたらお任せで、エフェドラがいなくてもシーシャがいたらシルバーバレットのカクテルを、頼む。 どちらもいなかったら、おとなしくカウンター席で待っていることだろう。 そもそも店が開いていなかったのなら、店の前でしばらく待ってみる。]
(60) 2013/09/10(Tue) 07時頃
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―回想―
[呼びとめに応じ、振り返った少年。 その瞳には、不審など微塵もなく。 こちらを兄貴分と慕ってくれた少年は、ただただ純粋にこちらを見た。
少年が、最期に口にしたのは、ソフィアの事。 しかし男はそれには答えなかった。
“ターゲットと会話をしてはいけない”
それは鉄則の掟。 もっとも、男はそんなもの度々破っているのだが。 だから、少年の問いは、聞こえなかったことにしてナイフを振るった。]
…悪いなぁ、グレッグ。 [勿論己の死など知らなかっただろう少年。 しかし少年は、最期まで、幼馴染の少女の事を思っていたのだった。
そのことを、少なくともこの男は知っていて、そして忘れないだろう。]
(61) 2013/09/10(Tue) 09時頃
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/* そもそもホレーショーが処刑人ってのが共通認識事項じゃないんだけどなぁ… 見ていた人しか知らないし、シーシャとテッドが見てただけでも状況考えれば多い、しかも彼らは誰かに話したかって言うと…
(-62) 2013/09/10(Tue) 19時半頃
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―街中―
[バーで酒にありつけたか否か、暫くして男は街中を歩いていた。 何となく…鋭い視線を感じるのは気のせいではないのだろう。 男が処刑代行人…何らかの理由で処刑がうまくいかない場合、始末をつける…をする条件に、島に定住を許された一族であることは秘密とされているが…どこかから漏れたに違いない。 男自身、充分注意していたかと言えば怪しいものだ。]
…。 [しかし、真偽を確認しにくる者はいない。 それはつまり、半端な噂ばかり流れているのだろう。 きちんと説明された存在ではないのだから、当たり前と言えば当たり前か。]
まぁ…仕方ねぇな。 [殺したのは事実だ。そこを否定する気はない。 しかし自分が死んだら処刑はどうなるのだろう…そればかりはきになった。]
(73) 2013/09/10(Tue) 19時半頃
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/* リッキィの殺し方と対比できると良いなぁ。 無駄無くさっくりなるべく楽に。
(-73) 2013/09/10(Tue) 21時半頃
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/* 処刑はなー当たっても良いんだが、進行難しくならんかね。
あとテッドの蘇生は、血族人狼の被害者しか無理なんじゃないかと漠然と思ってたり。
(-75) 2013/09/10(Tue) 21時半頃
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/* シーシャがツンデレ過ぎて中の人ツラい(良い意味で)
(-77) 2013/09/10(Tue) 22時頃
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