220 ナラティブの木
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― 晴れの日の屋上から、手を伸ばす ―
あぁ、これは……
[手を止めて顔をあげた。 空中に散った汗が、夏の海と同じくらい光って見えた]
あぁ、 喉が渇いた時にはもう、結構へばってるらしいしな
[右手に持った鉛筆をくるりと回して、軽く手をあげて挨拶を。見送って暫く、空を仰ぐ。あんまり見上げていたら、目玉からとろけてなくなりそうだ、と唾を飲み込んだ。
麦藁帽子は、その下に養分を隠した苗床だ。 麦藁は解け、太陽に手を伸ばす。 蔓のように伸びた先は、それこそ人の手のように指を持つ。 出来上がってみれば、どうにも明るい印象は持たれない絵の完成だ。とても見せられたものじゃない。とても、褒められたものじゃない。そして勿論、売れない。これで食べてはいけない。だから迷って、―――心を決めたのだ**]
(+0) 2017/07/12(Wed) 00時半頃
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─ 日常に入り込む、非日常 ─
[都会のビルに囲まれたら薄れるかと思っていた旅の余韻は 予想に反し、色鮮やかに、濃く、残っている。]
……やですよ。 僕は、今の僕で満足してるんで。
[しばしの間は、検討ではなく呆れる時間。 大真面目な提案に、解りやすく顔を顰めた。>>3:+33 短い滞在時間の中で彼と交わし過ごした時間は意外と長く そっけない声に本気の嫌悪が混じっていないことは 多分おそらく伝わっているだろう。
今頃彼はもう、キルロイに戻っただろうか。 それともキルルンから抜け出せずにいるだろうか。]
(+1) 2017/07/12(Wed) 00時半頃
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[排気音に混じる笑気は、耳に届きこそしなくとも 目尻や口元の角度で解るそれに窓を向き、 口元を覆う僕もまた彼らと同じような心地でいた。]
ええ。あなた方も。
[売店、チケットカウンター、搭乗口と>>3:+28>>3:+35 旅の終わりに続く、それぞれの人生に似合いの分岐点。 見送ることも見送られることもない旅は初めてで、 だからまだ、"終わった"気分がしないのかなとふと思う。]
(+2) 2017/07/12(Wed) 00時半頃
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[社内デスクの傍らに積まれているのは『エリ』の代表作。 なんでも最近評判の恋愛小説家らしい。 次に同行するツアーが女性客メインなので 話題作りにと図書館から借りてきたもの。
ノアに教えてもらった本は、まだ入手も叶わぬまま。 休暇だか仕事だか曖昧な日々思い出は一時しまって、 午前から続く未読メールの消化に勤しむ。
以前手配したツアーの感想だとか、苦情から 或いはいつに何がお薦めかを訊ねるものまで様々で こういったものが案外、企画を組むのに 大きなヒントになったりするのだ]**
(+3) 2017/07/12(Wed) 01時頃
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― 麦藁帽子 と 夏の海 ―
[『ブナティラ』での最後の夜。 僕は、夢を見た。
白黒の、色のない夢。 ふわふわと柔らかそうなものが散る砂浜で。 ぽつんと現れたのは大きな麦藁帽子。
なんでそんなところに落ちているんだろう。 帽子はかぶるものだろう。
首を傾げて拾い上げようとした手が止まる。 網目の間から何かが出ていることに気づいたから。 解ける麦藁。枝分かれした蔓が成長し空へと伸びていく。
ああ、あれは男の手だと思った。 背中を向けていた男の顔は、僕からは見えない。 あれは誰だったんだろう。]
(+4) 2017/07/12(Wed) 01時頃
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[──ゆっくりと夢の輪郭がぼやけていき。 塗りつぶされるように、夏の海の潮騒の音に溶けて、
プツリと途切れた。]*
(+5) 2017/07/12(Wed) 01時頃
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― 朝 ―
[二段ベッドの上段で目を覚まし。 洗いたてのシャツとスラックスを身に纏えば、陽の光を存分に浴びた夏の匂いが微かに弾けた。]
ん。少し焼けたな。
[屋上にいたのは長い時間ではなかったが。 腕時計との境が数日前よりくっきりしているのを見て、苦笑する。 けれど紫外線の降り注ぐ中で昼寝をしていた誰かさんほどではない。>>3]
(+6) 2017/07/12(Wed) 02時頃
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[シャツを第一ボタンまできっちり留め、ネクタイを締めれば、忘れ物がないか今一度ベッド周りを確認して。 枕元に妙なものを見つけた。>>6]
……………。 これはさっぱりなのか濃厚なのか。 熱いのか冷たいのか、どっちですか。
[謎すぎて飲むのを躊躇う商品名は勿論のこと。 矛盾しているキャッチコピーに眉をひそめて鞄に突っ込んだ。 犯人は心当たりがある。 不味かった時に突き返せないことだけが残念でならないが。]
(+7) 2017/07/12(Wed) 02時頃
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[昨日と同じように、カフェで軽い朝食を摂った後。 チェックアウトの案内に従って、『F』の鍵をフロントに返し。>>2:*0 宿泊中の食事分なども追加精算をしてから。 改めてぐるりとラウンジを見回せば、ふと思いついた。]
オーナー、伝言ってお願いできますか。 エリアスさんになんですが。
本を読み終わったら あそこの本棚に入れておいてほしいんです。 ”いつでも”いいですから、と。 [指を差したのは、ラウンジの本棚。>>2:35 それはパズルのピースを隠すのを頼むように。 ここにいる間に読み終えられなかったら、彼がまたここに本を置きにくる理由になるように。
あの時だんだん俯いていく彼の様子が、なんとなく息苦しそうに見えたから。>>1:38 なんてことない、ただのお節介だ。 昨日、住所は渡された手帳にも書きこんでおいたし。>>7 彼が理由なんて必要としないようなら、それでも構わない。]
(+8) 2017/07/12(Wed) 02時頃
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それと、オーナーにもひとつ頼みがあるんですけど。 ココアの作り方、教えてもらえませんか?
[昨日のデザートがおいしかったから。 土産代わりに教えてもらえないかと。]**
(+9) 2017/07/12(Wed) 02時頃
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― 回想・帰路 ―
[変に気を遣わない自然な対応>>3:+24に、やはり彼に一度仕事をお願いしたいと心に決める]
あぁ、宜しく頼むよ。
[すげえ雰囲気>>+3:32とはよくわからないが、それとなく力強く頷いた。 キルルン>>+3:33とは珍しいがファンタジー世界の住人のようで良い名前だ。ひょっとしたら自分と同じように別の名前かもしれないが、彼はキルルンということで問題なかろう。 続くノンノンに、古い子供向けアニメを思い出し笑う。笑ってしまったのを誤魔化すように髭を撫でた。
バスを降りて、キルルンの良い旅を>>+3:35の一言にあの日の海を思い出す。
1本しかないバスも、旅の終わりにはいいものだ*]
(+10) 2017/07/12(Wed) 15時頃
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― 日常 ―
[パイプを咥えながら資料や名刺をファイル分けしていると、事務所の電話が鳴った。 また浮気調査の依頼じゃありませんようにとディスプレイを見る。 見慣れた実家の固定電話の番号だ。
久しぶりの探し物の依頼は、足でも生えているのではないかというくらい行方不明になる母の眼鏡。紐で繋いでいて欲しい]
――洗面台か洗濯籠ではないですか?
[まず定番の場所を述べるが、その場所に探し物はないようだ。 そこにあったら電話なんてしないと責められる。頭の上にあるんじゃないですかと口を滑らさなくて良かった。 それにしても、わんちゃんに頼んだ方が早く見つかるとは、酷い言い草である。ワトソンは助手であり、探偵でもわんちゃんでもない。それに匂いで探し物を見つけられる訓練を卒業していない]
(+11) 2017/07/12(Wed) 15時頃
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[犬用マットの上で欠伸をしているワトソンを横目に話を進める]
ところでそちらの天気は……晴れ、ですか。 それではベランダに出る窓の横の、あぁ、ありましたか。
[すでにこちらの声は届いておらず、どうしてこんな所にと一人で喋っているのが聞こえてくる。どうしてもこうしても、晴れた暑い日には自分がシャワーを浴びる前に、ベランダの植木に水をあげるではないか。 はいはいと生返事をしながら話を聞く。郵送した土産の礼から始まり、わんちゃんのいる部屋で煙草は吸ってないでしょうねと注意され、父の愚痴になり、見合いの話に跳ぶと、急ぎの仕事を思い出したと受話器を置いた]
(+12) 2017/07/12(Wed) 15時頃
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[頼まれると断れない質なので、最初から聞かないのが最良の行動である。 本当は探し物以外の依頼だって全て断りたい。いや、上品なご婦人の護衛や不審死の調査は喜んで行く]
何もしていないのに疲れたな。
[先ほどまで咥えていたパイプに葉を詰めるため、ファイルを広げたまま自室に向かう。これでもワトソンを引き取ってからは吸う回数は大幅に減った。
吸い終えると着替えて昼食を買いにいく。 一人暮らしが長くても、料理だけは全く出来ないのは困ったもので、出来たてが食べたければ外出するしかない。 旅行先は良かった。刺し身も良かったが、特に最後に食べたオムレツは毎日でも食べたい。
玄関先で、リードを咥えて忙しなくうろうろしているワトソンを避け、見て見ぬふりして靴を履く]
ふふっ、君とのデートは日が沈んでからだよ。
[背後からのくぅ〜ん、という切ないか細い声に動きが止まる]
…………。
[車のキーとリード手に、玄関の鍵を閉めた**]
(+13) 2017/07/12(Wed) 15時頃
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――― 日常 ―――
[キリギリスは、働き蟻の皮を被り直す。
帰路の果て、課された土産話の成果に 無事、翌日からの職場復帰を許された。 許されたからにはキルロイに戻らなければならない>>+1]
………、 海。
[明くる日の、昼。 照りつける太陽がコンクリートを焼き 空に聳え立つビルは、深く影を落とす。
今更、折角海に囲まれていたのに、海辺に立ち寄らなかったことを思い出した。天気が悪かった、それが理由と呼べる、理由だけれど。 海の遠い都会では、精々、目の前にある噴水くらいだ。]
(+14) 2017/07/12(Wed) 22時半頃
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[アクセスを拒絶されていたメールボックスを片付け 電話を回るだけで、午前中が過ぎた。 残念ながら此処はファンタジー世界>>+10ではない。
―――…残念な話だが。]
塩、 か?
[フィルムを剥がして、摘まむのは昼食のお握り。 ゲストハウスで食べた、シンプルベストのそれと 当然のように味が異なり、指に付いた米粒を眺める。
どれが理由かは分からないが、あれは美味しかった。]
(+15) 2017/07/12(Wed) 22時半頃
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[一緒に、非日常を後にした二人は 何処かで日常に立ち戻っているだろうか。 もしかしたら今日――…日常に戻る誰かも。
他の客の滞在期間はほぼ把握していない。 唯一と言えるジェレミーの滞在期間も 本人の意図しないところで、間違って記憶に刻まれている。]
…… 暑い。
[このままでは、握り飯に汗ッ気が混ざる。 早めに残りを平らげて立ち上がると 大通りに、家具や日用品を扱う見慣れた大手チェーン店。
人間を駄目にするソファが、トップセールス販売中。
つい、お昼時間の残りを。 ウィンドウ硝子隔てて、凝視に費やしてしまった。 ――― いや、流石に買いませんが。*]
(+16) 2017/07/12(Wed) 22時半頃
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[メールチェックの合間に、ポップアップする社内SNSの通知。 『合コンの店決まった?』の短い一文に、 億劫すぎて忘れていた仕事のひとつを思い出す。 ブナティラのカフェバーのような店があれば即決なのだが。
『黒木屋じゃだめすか』
ごくありふれた居酒屋チェーン店の名を出すと、 爆弾の絵文字がひとつ返ってきた。 おーこわ、と思わずキーボードに置いた両手を上げる。]
つーか、この距離なんですから直接喋りましょうよ
[ついでに斜め前にいた、会話の相手に肩を竦めた。 旅行中は写真を撮る以外ほとんど使わなかった電子機器。 無くても案外平気なもんなんだな、というのが正直な感想で その癖、目元は再びディスプレイに、指はキーを叩き 喉の代わりに言葉を発し、脳の代わりに記録する。]
(+17) 2017/07/12(Wed) 23時頃
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[有り触れたIT企業の、有り触れた営業マン。 それが、有り触れた日常の、正体。
変わったことと言えば 最近、盛大な働き方改革が行われたことだ。 漸くと自分も、ホワイトの波に乗れそうな気は―― する。
硝子ウィンドウの向こうには、いくつも時計が並んでいた。 昼休みが終わりそうだ。**]
(+18) 2017/07/12(Wed) 23時半頃
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[なんだかとても眠かった。 旅先に時差などなく、 さして疲れるようなこともしていないのに。
カチカチと緩慢な仕草でマウスを操作し 検索バーに適当な単語を入力しても 適当な答えしか吐き出さず、ならばとタウン誌を捲る。]
……そーいや酒、飲めないんだっけ。
[ビアガーデン特集と銘打たれたそれに あのシャンディガフは旨かったなあ、と思い出し。
なんとなく落ちた独り言を蹴り飛ばすように ここは? とほどよくくたびれた屋台を指差すと 拳を振り上げるジェスチャーが返ってきた。おおこわ、]**
(+19) 2017/07/13(Thu) 00時頃
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[お疲れ様でしたぁ、と語尾をあげ、 バスを降りる客をひとりひとり笑顔で見送る。 弊社定番の日帰りバスツアーを担当するのは久しぶりで いくつかのカンペをすっ飛ばしてしまったが 概ね楽しんでもらえたようだ。 どうかそのまま事故らず帰ってくれよと願う。 提携先のバス会社から派遣された運転手にも挨拶をして。]
ふーーーーー……。
[鼻頭に浮いた汗を拭うために飾りものの眼鏡を外すと同時 張り付けていた表情もぺろっと剥がれ、 疲れた、と言葉にすることすら億劫なため息が零れた。
夏至を過ぎたばかりの今はまだ、夕方といっても空は明るい。 予定通り解散まで運べたと腕時計を眺め頷くと 家、ではなく社へ戻る。 報告書を提出して、参加者の家族から 『まだ帰ってこないんですが』なんて連絡がないのを待つ。 これが一番面倒くさくて、しんどい仕事だ。]
(+20) 2017/07/13(Thu) 21時半頃
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[十七時を告げる、機械的な音程が窓を擦り抜ける。 この時間帯になっても、注ぐ陽の光はまだ暑く 当然のように、夏の日の長さを思い出させた。]
お疲れさんです。
[時短勤務のスタッフが、帰社を告げる。 軽く首のみ動かして会釈をして、画面に向き直った。
規則的にキーを叩き、お得意様に連絡を済ませたところで 冗談半分の、苦言が耳に届く。
曰く、残業申請はないが、構わないのか。 曰く、サービス残業をする心算じゃなかろうか。]
………、 しませんよ。
[表情筋が、苦く笑った。]
(+21) 2017/07/13(Thu) 22時半頃
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[壁に掛かった、時計の針が五を過ぎてゆく。 その区切られた形を見ていると 旅先で拾った、腕時計の形を、思い出した。
あの小さな少年―――… 青年は 時間を気にせず、過ごしているだろうか。 あるいはもう、旅行を終えているのか。]
あと30分で? 終わります、粗方。
[区切り目を付ける努力を始めたのは、良い兆候の筈だ。 エンターキーを叩き、ブラウザを閉じる。
目の前の、画面に広がる背景は、どこかの夏の海。 旅先で、砂場を殆ど踏まなかったことを 丁重に、後悔させて頂いている。]
(+22) 2017/07/13(Thu) 22時半頃
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………
[電源を落とそうとして、ふと思い立ち ブラウザをまた開く。
ブックマークの羅列は、業務に有するもの。 それに紛れているのが 旅行会社のホームページと、あのゲストハウスの。]
消えるわけない、か ……
[写真もデータも残っていないが、記憶は、確か。 突然ホームページが閉鎖することも立ち消えることもなく その存在感を確かめて、安堵する。]
(+23) 2017/07/13(Thu) 23時頃
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[―――― 今度こそ、電源を落とした。 定時退社など、今まででは考えられない。
白いシャツの袖を捲くってから、薄手の上着を羽織る。 何はともあれ、強スーツだ。 持ち帰った花柄シャツは、ベランダで優雅に揺れている筈。]
お疲れ様です。 ……… は、ちゃんと帰りますよ。
[信用ないな、と、肩を竦めて。*]
(+24) 2017/07/13(Thu) 23時頃
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[いつ来るとも解らない不穏な連絡は当然のことながら いつまでも待つわけではない。 報告書を打ち出し、明日の予定を確認して、 ──要するに内勤業務が終わるまでの間だけ。]
あっつ……。
[節電と残業を減らすためか、 一定の時間が過ぎると自動、かつ強制的に切られてしまう 空調は、なかなかの効果を見せていた。 ……団扇で片手を塞がれてはろくに仕事もできないと 続きを家に持ち帰るダメな会社員を量産することに。
とはいえ今抱えている一番の仕事は 来月〆切の社内コンペの企画書と合コンの幹事だけ。]
(+25) 2017/07/13(Thu) 23時頃
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航空会社の人間と合コンって、 それってもう、接待じゃん……。
[既に最後の一人となったオフィスに、詮無い愚痴が響く。 せめてまったく関係のない業種だったなら、 何かと興味深い話が聞けるかもしれないし 日々アンテナを巡らせている旅行代理店の腕を見せようと もう少し気合いも入るのだろうが、正直重圧しかない。
それでも、何かしの仕事に使えると思ってしまえば こうして面倒な幹事も引き受けてしまう。 繁忙期前に取らされる夏休の一部消化を 企画に利用する宿泊先候補の下見と兼ねてしまったように。]
(+26) 2017/07/13(Thu) 23時半頃
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[暑いし腹は減ったし、 これ以上汗だくになる前にとビルを出る。 夜風の温さは先日味わったものより軽いのに、 何故だか息苦しさを感じてボタンを一つはずし、髪を崩す。
ワンルームの社宅には帰りを待つ者どころか ほかほかの米すら待機していない。 「ブナティラ」にいる時はよかった。>>+13 何も考えずとも、適当に美味いものが食べられた。>>+15]
パスタ、肉、ビール……。 いや、そろそろカレーかな。
[しかも、とびっきり辛いやつ。 グリーンかバターチキンかそれとも……脳内のリストを捲り ひしめく人の波を泳ぐようにかき分け、夜を歩く。]*
(+27) 2017/07/13(Thu) 23時半頃
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[月光が、薄らとビルの群れに、影を落とす。
携帯端末の、青白い光は、目に悪い。 ――― 天気予報を確認した。 眺めていた、天気図は、此処の予報ではなく、あの。**]
(+28) 2017/07/14(Fri) 00時頃
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― 出発の朝 ―
ちょ、ちょっと待ってください! 今携帯出します。
[料理初心者に1分で覚えろなんて無茶振りすぎる。>>*0 悠長に書き写すには時間が足りない。
慌てて鞄の中を探ってスマホを引っ張り出し電源を入れれば、年季の入ったノートをパシャリ。 口頭で告げられた補足をふんふんと頷きながら、折れ曲がったりボコボコしている紙面にピントがなかなか合わず、結局6枚撮り直し。
ここでの土産を、しっかりと保存した。]
はー。ココアってこんなに手が込んでたんですね。 ありがとうございます。
[レシピの伝授に加え、改めてご馳走になったココアへの、感謝を伝え。 スマホをスラックスのポケットに押し込んだ。]
(+29) 2017/07/14(Fri) 00時頃
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