218 あした、ぼくはきみになる
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[ ──── もしかしたら。
もう一度、この奇跡が起きたなら、とは。 …あたしだって、思わない訳じゃなかった。
だけどそんなの、無責任すぎる。 怪奇の当事者は、あたしじゃないんだもん。 そのくせ浦美里の皆を救えないか、なんて。 ムシがいいにもほどがあるでしょ?
だから、あれ以上紡ぐ言葉が見つからなくて。 明野の言葉>>!3:110にも、反論はできなかった。]
(!0) 2017/06/10(Sat) 07時半頃
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[でも、でもね。
『 知らない事は幸せなんかじゃない 』 零れ落ちたようなその言葉>>3:!119には、 私もそう思いますって返したかもしれない。
──── 女のコってね。 確かに肉体的にはひ弱な子が多いよ。 だけど鳥籠の中で何も知らせず囲ってても、 不満でぶつくさ言っちゃうイキモノだもん。
知ってどうするかは、当人が決める事。 その上で、知りたくなかったって詰られるなら。 その時はその時。しょーがないじゃん。
…少なくとも、あたしなら。 蚊帳の外で知らされない事の方が怒るだろうな。 そう思うわけですよ。]**
(!1) 2017/06/10(Sat) 07時半頃
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[夢の中か、其れとも現か]
[空気を震わせる鳥の鳴き声が 聞こえた気が した>>0
それは、”1度目の時”とは少しだけ違う声 さざめく羽音と、嘴の音]
[遍く 聲]
(!2) 2017/06/10(Sat) 11時半頃
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んみゅ……
[私、は目を覚ます 映るのは木造の天井。いかにも日本家屋って感じ]
え、ふぁ、え!??
[がばっと起き上がった私の腕 普段のものよりやっぱり長い 黒のインナー。頭元置かれたスマートフォンは ふうちゃんがデコってくれた青の海と猫ちゃんたちの もの、じゃない 積まれた画材、おっきい書棚、スケッチブック等々 片づけられたシンプルな この部屋は見覚えがある。それは。流君の]
(!3) 2017/06/10(Sat) 11時半頃
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ま、た入れ替わったの?私達
[一体どうしてだろう。そう思いながら首を傾げる 未だこの世界が3年後、とは知らない私は もー!!!って感じでお部屋でじたじたするのだ
だって!だって!今日は夏祭りなのよ? お姉ちゃんからのおさがりの浴衣も 綺麗なガラス細工の簪も、黒い下駄も ”私”が着ることはなくて……]
せ、せめて明日なら…… ふええええん、お祭り行きたかったよぅぅ
[君の心、わたし知らず そんな事を叫びながらごろごろもだもだしてたら ノックせずににゅってパパさんがやってきた あ、おじゃましてます?]
(!4) 2017/06/10(Sat) 11時半頃
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ぱ、パパさん!おはようございます! 朝ごはん食べますかっ
[と、私はごろごろしてた布団から起き上がり そう、パパさんに尋ねたところ
「今日はもう1人の流のようだね」
って、貴方は暢気に笑った]
(!5) 2017/06/10(Sat) 11時半頃
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ふぇ?パパさんは知ってるんです? 私たちの入れ替わりのこと
[と、尋ねつつ。私のお腹がぐーって鳴った とりあえず朝ご飯食べよっかって、 パパさんが言うから。私ははーいって言って
今日はパパさんが作ってくれた、トーストとゆで卵 これなら絶対失敗はないと、昔流君のお母さんに 教えてもらったらしい……でもねパパさん
ゆで時間が足りなさ過ぎて、白身がどろんって 割ったら出て来ちゃったよ、パパさん 食べたらやっぱりにゅるにゅるした触感だった パンはちょっぴり焦げてた。トーストの焼き時間 失敗しちゃったとはパパさんの談]
(!6) 2017/06/10(Sat) 11時半頃
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[貴方は、はっはっはって笑う 私もくすくす、笑っちゃう 流君のお家はあったかい御家だな、って思う
私も、パパが家にいつもいてくれたら こんな感じなんだろうかな]
(!7) 2017/06/10(Sat) 11時半頃
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―― 私の両親のこと ―
[水戸部祥子は、4人+1匹の家族の次女である 平凡な家庭。お金持ちでも貧乏でもない 田舎暮らしの一家。だけど、 私はパパの顔をほとんど、写真位でしか見たことがない
私が赤ちゃんの頃。もう覚えてないけど おばあちゃんが御病気になったんだって 治すためにはお金が沢山必要らしくって もっと稼ぐためにって、 パパは御手当てのつく単身赴任を選んだ
結局。おばあちゃんは私が小学校の頃に死んじゃったけど 優しくしてもらったのは覚えてる 治療費とやらは結構高額だったから パパは私やお姉ちゃんの進学費用やらも貯めるために 単身赴任を継続しているのだ]
(!8) 2017/06/10(Sat) 11時半頃
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[だから、私はあんまりパパの思い出はない 夏祭りだって。ママやお姉ちゃんが連れてってくれたし ちょっと大きくなってからは 3軒隣のかなちゃんといっておいでって お小遣いを渡されて出掛けるのが常だった
だから、こうして流君の事を心配してだろう お部屋を覗きにきたりとか 朝食を作ってくれたりとか そういうの、見て。いいなぁって思う]
(!9) 2017/06/10(Sat) 11時半頃
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[私は、単身赴任から偶に帰ってくるパパと 顔を合わしても2言3言しかかわさない どんな人なのか、わからないからってのも大きいし 疲れてるならそっとしとかなきゃって そんな自己保身も働いてた
でも。私、明日になったら多分元の私に戻るんだろうし 今度パパが帰ってきたら、 ――……お話聞いて?って言ってみようかなぁ?]
(!10) 2017/06/10(Sat) 11時半頃
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[そんなことを考える私は
”今度”がないことを知らなかったの*]
(!11) 2017/06/10(Sat) 11時半頃
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[何となしに付けていたテレビ ニュースで、今晩花火大会がある、ってあったので 私はおお、って顔でそれを見る]
パパさん、由良の花火大会ってどんなものですか?
[って尋ねたら。昔流君と 一緒に花火大会に行った事を話してくれた>>1:!6 割とデカいお祭りらしい、昔から
ちいちゃな頃の流君はそりゃもう可愛かったんだって 自分のアトリエに潜り込んで 絵を描くのを見てたんだとか
私は微笑ましく其れを聞いて、 楽しい朝食の時間を過ごしてたのです*]
(!12) 2017/06/10(Sat) 12時頃
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[ 小鳥の囀りで目が醒める。 変わらぬ天井に、片方の掌を掲げる。 …… あたしの、指先が見えるだけ。 電波時計も、昨日からの今日を示しとる。 あたしに出来ることは、なんもない。 はー… と、深く息を吐き出して、 シーツをぐしゃぐしゃにしながら、 布団の中に小さく包まるばっか。 ]
( ────… どっこも行きたない。 )
[ せんせが家庭訪問でもしてくれたらええのに。 煙たい香りの漂うその白衣ん中に、 飛び込んでしまえたらええのになあ。 叶わんことは分かっとるから、 もぞもぞとお布団から抜け出して、 あたしは、いつもの本屋へと向かうだけや。 ]
(!13) 2017/06/10(Sat) 12時頃
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[ 髪をひとつに結い上げて、 お店のロゴの三つ葉印の入った 緑のエプロンを身に纏う。
短調な声で、挨拶は続くばっか。 いらっしゃいませー。 お買い上げありがとうございますー。 またのお越しをお待ちしとりますー。 非日常は嘘やったみたいに、 変わらぬ日常が過ぎてくばっかり。 ]
(!14) 2017/06/10(Sat) 12時頃
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[ ───── ぽよりまち、
あたしが行ってみたいんは、そこ。 今日はバイトで行けんけど、 あしたとか、来週の土日とか、 どっかで、行けたらええのになあ。 …… って、思ったのよねえ。
ひとのおらんときに、 あたしはまた、写真集を広げて見た。 壊滅したあとの町と、 すべてが生きとる町と、 比較される並ぶ写真に、奥歯を噛みしめる。 ]
(!15) 2017/06/10(Sat) 12時頃
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[ 辛うじて、被害のなかった学校の校舎と、 緑の豊かなお山の写真を、 指で辿りながら、 一瞬の非日常を思い出していた。
時折、外を歩く浴衣姿の女の子たちが、 視界の端を横切るんが見えたんなら、 あたしはまた、はー… と息を吐き出して。 ]
…… 花火、見たかったなあ。
[ レジ横のスペースで、頬杖をつきながら、 何もできんと、おった。 ]*
(!16) 2017/06/10(Sat) 12時頃
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[パパさんは、私が町を見て来たいと言ったら お小遣いをくれた。良い人だ!! 私は一端流君のお部屋に帰って バッグとかどこかなーって探そうとして
ふと、日記を見つけた。君の、日記>>173]
(!17) 2017/06/10(Sat) 13時半頃
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[最初の描けた。に、感動して
でも続いたので私は頬を膨らませる]
いいじゃん!!パパさんとお話しするの楽しいもん パンケーキ食べてもいいじゃない。食べたかったんだもん お金に関しては、まぁ、ごめん、うん 3年の勉強なんてわかるわけないよぅ! しかも数学だし!!
……ごめんかなちゃんらに昨日の事、言っちゃった
[小言に。怒ったりしょんぼりしたりあわてたり してたけど――でも。何か字、焦ってる? 何だろう。乱れてるっていっていいんだろうか ノートや、私の日記に書いてあった君の字よりも]
(!18) 2017/06/10(Sat) 13時半頃
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[それに、最後の>>3:180――どういう、こと?]
(!19) 2017/06/10(Sat) 13時半頃
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[私はとっさに、日記を通学鞄に突っ込んで 貰ったお小遣いは君の財布に突っ込んで
家を飛び出した私は 駆ける、かける――……町を駆ける]
(わたし、死ぬってどういうこと? わかんない わかんない
何でどうして、こんなことかいてあるの)
(流君がそういうの、根拠も無しに 描く人ではなさそうなのは分かる だから、わかんない、わかんないの)
(!20) 2017/06/10(Sat) 13時半頃
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[息を切らし、全力で走り 一昨日、迷子になった本屋の前で立ち止まる
周囲には浴衣を着た子もいる。カラコロ、時折なる下駄の音 その中で鞄持ったまま。泣きそうに1人佇む私は
嗚。通りすがりの、異邦人だ*]
(!21) 2017/06/10(Sat) 13時半頃
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[ 次の日の朝は、思ったより早く起きた。 いつも通り起きて、ご飯を食べる。
髪を整えて ネクタイを正す。
流石に昨日は丸一日部活をサボったから 先輩からのお叱りのメールが来てた。 だから、今日はやっぱり、 祭りの前に部活に顔を出すことになったんだ。 ]
(!22) 2017/06/10(Sat) 16時半頃
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[ ボールの音と、床の擦れる音。 何も変わらない日常がそこには広がっていて、 その心地よさに、僅かに息を漏らした。
変わらない、平々凡々な日々が あんなにつまらないと思っていたそれが、 落ち着く場所になるなんて、 皮肉だよね。 ]
『 お前さぁ、そんなにサボると 今年の大会でれなくなるぞ? 』
いいんですよ。 おれ、来年ありますから。
[ 先輩とできるのは、今年が最期だけど。 だからこそ、こうやってボールを放って 悔いが残らないように……─── ]
(!23) 2017/06/10(Sat) 16時半頃
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[ ───…… すとん ]
[ 投げたボールが、ネットをくぐる。 落ちたボールは、床を跳ねる。 視界が急に、クリアになった気がしたんだ。
そうだよね。 最期だもんね。 あの子には、あの街には
─── 来年はないんだよね。 ]
すみません、俺ちょっと、 猛烈に頭痛くなって具合悪くなったので 早退させてもらいます。
[ 鞄をひっつかんで、 ユニフォームのまま体育館を飛び出した。 ]
(!24) 2017/06/10(Sat) 16時半頃
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『 早く来て 』
[ 七尾に素早くメールを送る。 それから俺は、マップを開いた。
調べる場所は決まってる。
無駄かもしれない、無意味かもしれない。 だって、あの子がまたここに来ているなんて、 思うはずないじゃないか。
それでも、このまま見過ごすのは。 俺が いやなんだ。 助けたいのも、笑っていてほしいのも、 全部全部、俺のエゴ。
だから、俺が 君が、 悔いの残らないように─── ]**
(!25) 2017/06/10(Sat) 16時半頃
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[ ぼんやりと、そう、ただぼんやりと。 あたしは、レジに肘をついとった。 そんときやったかなあ、 ひとりの人影が見えた。
それは、あたしの知っとるようで、 ……… 知らんひと。 ]
(!26) 2017/06/10(Sat) 17時半頃
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[ 大雨でも降り出しそうな、>>!21 そん横顔に、あたしは眉を顰める。 本屋の外の棚を整理するつもりで、 自動扉を潜って外へと出る。 ]
…… 流、く、 ─── しょうこちゃん?
[ 鞄を手にしたその男の子に、 あたしは、声をかけた。
…… 入れ替わり。 奇跡が何度も起きるなんて、 そんなこと思わんかったのに、 あたしは、その腕を掴んだ。 ]*
(!27) 2017/06/10(Sat) 17時半頃
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─ 校門前 ─
[ 待ち合わせ場所に七尾が来る間、 携帯を使って調べ物をしていたんだ。 正直、悔いが残らないように……なんて思っても やっぱり、動くのは怖いよ。
昨日、俺が言ったことだって 間違いなく、俺の本音だから。
1つの町の、人々の命を背負うなんて、 俺には重すぎるんだよ。 俺だけじゃあない、 俺たちみたいな、子供が背負うには だね。 正直、そんなもの背負いたくない。 全部投げ出して、忘れてしまいたい。 ]
(!28) 2017/06/10(Sat) 23時頃
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[ でもさ、そんなこと。 最高にかっこ悪くて、ダサいから、 たとえ俺が、主人公になれないとしても、
今ここで頑張ったなら、 準主役級…… は、むりかもしれないけど、 少なくとも、街人A あるいは 生徒Bからは 脱却できると思うんだよ。
だから、助けたいって思ったのは、 別に君のためじゃあない。 ただ、俺は。 明野 「丞」だから。 名前に恥じない行動をしないといけない。
全部、俺のためって、 そう思ったらほんの少しだけ、 心が軽くなった… 気がする。 かも。 ]**
(!29) 2017/06/10(Sat) 23時頃
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