[そして、カウンターに座る2人の客のうち、小太りの男は腕組みをしている。]
「わざわざ足を運んだのに、何の収穫もない、話題のデザートも食えない。
憂鬱だ、まったく……。
どこを覗いてもありきたりな土産物ばかりで、面白くもない。
近頃のこの街は若者ウケを狙いすぎなんだ。
ああ、憂鬱だ。もっとこう、どことなく懐かしさを感じさせる逸品は無いものか。」
[一方、その隣の筋肉質の男は、溜め息混じりに珈琲を見下ろしている。]
「……アタシの名声も地に堕ちた。もう、田舎に帰り時かしらねェ……。
ポッと出のチャレンジャー、しかも女の子に負けるなんて、思ってもみなかったわ。
ハァ……。真っ黄っ黄のファッションも目に毒だと言われる始末。
こうしてジェネシスを知る者は誰もいなくなっていく……。
でもせめてこの街を去る前に、長い間の相棒だったエムブレムをもう一度見たいわ……。」
(#12) 2018/05/22(Tue) 03時半頃