――ぃ、踊り、ま……、っ
[従順に頷きかけたが、乱れ散ったストロベリーブロンドの上、途中で仮面に覆われた頭を左右に振る。
手が自由になったことには気付かず、踊りを所望ならと蹴り上げる爪先。幾重ものペティコートの狭間、寝台が轢むに合わせて腿のスティレットが硬質な音を混ぜる]
あ、ぁ……お赦しを……。
[追い詰められた獲物は、乞うしか術を知らない。貴婦人の真似事を演じようと、この身は卑賤な侍女でしかないと、改めて思い知らせる言葉に、胸中はべっとり絶望で塗り潰された。
仮面の奥で、血の滲むほど下唇を噛む。恥辱に耐える時、いつもそうしてきたように。
せめて、殺害に赴く前、頬から顎先を包んだ優しさがあればと思うのに、浮いた鎖骨の上から下へ滑り落ちていく熱に、それは見出せず。乱暴な手が服に隠れた火傷の痕に振れるや否や、娘らしい恐怖も相俟って皮膚の表層が粟立つ。シーツに深く爪を立てる]
(*10) りしあ 2011/02/18(Fri) 01時半頃