―5月11日正午頃、町役場前広場(幽霊)―
[自分が処刑されてから今までずっと、自分はそこにいた。紙が張り出されているのが見える位置のベンチに座り、人々を見ていた。
自分の顔を見て安堵している人、見向きもせずそそくさと投票して帰る人、ただ眺めている人、そして、自分の死を悲しんでくれた人。ラルフに言われた通りで、自分が思っていた以上に自分はちゃんと皆の心に居場所があったのだと不思議な気持ちがした。お礼を言いたいが、自分の声はもう皆には聞こえない。昨日、彼をすり抜けた手を見やり、死ぬのって淋しいんだな、と膝を抱えていつまでもいつまでも、人々を眺め続けた。
そうして次の日を迎え、クシャミが処刑されたのを知る。自分は彼女の為に何かできただろうか。そうして全てが終わったことに少しの安堵と虚無感を感じればその場でゆっくり眠りに落ちた。
そんな自分を起こすどこか懐かしく感じる声。]
…クー?
[声が聞こえた広場に目を向ければ、いつもの彼女の姿が在った。今の彼女からは重々しい雰囲気は見てとれない。自分は、少しでも役に立てただろうか?夢現に、『凄いなぁ』と彼女のもつ強さに目を細め、思わずつぶやいていた。]
(*4) sizuku 2013/08/08(Thu) 20時半頃