[思い出す。あの日のことを。
まだ雪が強くなかった時にクラリッサは飛び出していった。よくあることだ。彼女が突然機嫌を悪くすれば誰かと口論になったりもする。唐突に気が向いただけで出て行くこともある。しようのない子なんだ。
皆そう思ってただろうし、わかってただろう。
だけどあの子は誰かが居てやらなきゃ、一人ぼっちになってしまう。どんなに振り回されても辟易せず手を差し伸べてやらなければ、彼女は心のどこかでずっと自分を孤独だと感じ続けるだろう。
だから僕は追いかけた。何もできない僕だからこそ、手を伸ばしたんだ。
セレストのようにハナを叱りつけて慰めて抱いてやることもできない。ミッシェルのように教え許してやることもできない。ラディスラヴァのように距離を推し測って在ることもできない。ベッキーのように明るく笑うこともできない。ムパムピスのように親しみをもって説くこともできない。レティーシャのように安らぐ歌を歌うこともできない。
だから僕が、ミッシェル達が僕にしてくれたように年若い子達にしてやれることは、僕なりにただ手を伸ばすことだと思ったんだ。]
(*4) 2013/02/07(Thu) 11時頃