いけないねぇ。つい先ほどまで、自分が何者か忘れていたよ。ははっ。得てしてサボりを働いてしまったわけだ。これは首にされても文句は言えないねぇ。
[さも軽口を叩くかのように、肌寒さとどこか責めるような風への抵抗として欠伸を返す。凝り固まった身体と思考を解すように、頭を軽く揉んでみる]
んー……こりゃあ、いくらか足りてないねぇ。はてさて、思い出しても良いものか。
[体内に蔓延る気怠さをため息に乗せて押し出すと、惰性的な義務感から館へ向かおうとして、しかし足を留めるのだった]
あー……帰り方も忘れちまってるなぁ。仕方ない。全部、思い出そうか。
[目を閉じて、頭の中に引き出しを思い浮かべる。「それらしいもの」を順に引き出しては、検索を繰り返す。絶対記憶を持ちながら自分の記憶のタグ付けを意のままに行える能力。物事を忘れることも思い出すことも、自在のまま。しばらくして、漸く館への帰り道の記憶に行き当たると、ほっと小さく息をつくのだった]
はぁ、火に入っていく虫の気分だねぇ……。
[…はもう一度だけ溜め息をつくと、少しだけ周囲の静寂に耳を澄ませてから館へと向かうのだった。**]
(@243) 2014/11/03(Mon) 01時頃