―廃病院―
[ひとの痴態>>*14を眺める趣味があるわけではない。
ただ、己が彼を気に入らないだけだ。
同胞だったころはどこか諦めていたのだ。
兄と同じ戦場に立ち、同じものをみて、同じ平行線上にいる。
自分のほうがもっとずっと兄と近いところにいたはずなのに、自分よりも近いところに割り込まれたような複雑な気持ち。
だから、兄が楽しそうに話す中に朧の名前が混じれば嫌だともいえないままただ、そうなんだね、とだけ返すしかなかった。
別に兄にとって悪いことをする人間でもなさそうだと思ってやり過ごしていた。
それが、今となっては直円に足を開き、ぐずぐずのだらしない顔をして、こんな男が兄の、直円の側にいるなんて。
そう。
いつだって、坂町朧といういきものは自分のいる場所を奪っていく。
それが、故意なのか偶然なのか、そんなことはどうでもいい。
ただ己はこの男がやはり嫌いなのだということだけを実感する]
(@11) 2016/06/08(Wed) 14時頃