― 廃病院・1F ―
[薬液ポッドにざぶざぶと手を突っ込んで、一本ずつプラグを抜いていく。
各所の調整は成功した筈だ。あとは神経系がうまく繋がっているかどうか。そして、その隅々に仕込んだナノマシンが作動するかどうか。
ワンちゃんの修復は、そこそこの大仕事だった。
電流によるショックが主な死因で、縫合が要るような破損箇所はごく一部。そこはやむを得ず人工皮膚も導入したが、人狼化した際にはそこだけ人の肌で不格好になるのが至極残念だった。やっぱりあの白髪許せない。
問題は内臓部で、そこは大幅に人工のものと交換する必要があった。その名残で、ヘクターの胸から腹にかけて大きく縦に一文字の縫合痕が残っている。]
とりあえず試運転かな。
[両脇を持ち、薬液を撒きながら頭だけを出す。カタタンと軽い音でキーボードを押すと、人工心臓が作動し始めた。全身に再び血流が行き渡れば、じき意識も戻るだろう。
まだ運動神経はほとんどをオフにしてあるので、動かせるのは首から上だけになる。人肌の温度をした薬液をすりこみながら、ワンちゃんの鳴き声を早く耳にしたいと胸を弾ませた。*]
(@0) 2016/06/13(Mon) 09時半頃