─ 陽光の淡い記憶《メモリ》 ─
[あの一件以来、虎への監視は強化された。
躾も、今までとは比べものにならぬ程に厳しくなり、ときには、数日間、一切の性行為を封じられるような罰もあった。
予定外に嵩んだコストに、研究員達の間では、やはり処分した方がという意見もあったらしいが、ならば尚更回収しなければという意見の方が多かったらしく、殺処分の難はどうにか逃れた。
その話は、虎の耳にも聞こえていて……意味はよく分からなくても、とても、怖くて哀しい話だということだけは感じ取れて、そのたびに、大きな身体を小さく丸め、胸を締め付けるような痛みに耐えた。]
───…………。
[あの時、怪我を負わせてしまったのは。
騒然とする研究員達を一喝したのは。
大丈夫だと告げるよう、頭を撫でてくれた優しい手は。
床に落ちた銀色に、微かに映った面影は───]
(-1906) nordwolf 2013/12/27(Fri) 00時頃