[彼/彼女であるセシルが何故それほどまでに、炎を燃やすのか、生まれながらにして当たり前に男である者には欠片も分かりはしない。ただ、何かの代償のように挑まれ続けていた決闘を、のらりくらりと回避し続けていたのは、直感的に正しかったのであろうと思わせられる。]
『 踊 れ 』
『 殺 せ 』
『 仮面を手に入れたならば 』
『 ──今度はセシル 』
『 お前が 』
『 死ぬまで 踊り続けろ 』
[その声は男の口から漏れた呪詛ではなく。あくまで仮面の囁きであろう。
後は、一切の興味を失ったかのよう、燃え盛る憎しみの炎の闇に背を向け、金糸の男に顔を寄せる事も無く。男は迷宮の闇を彷徨いはじめる。かつて、ダンスのパートナーであった女が、おのれの姿を探している事も知らず。
今や金属の左手だけではなく男の全身が、吐く息すらも、熱を持たず氷のように冷たい**。]
(-673) yummy 2011/02/16(Wed) 06時半頃