[家主が不在だった割りに、室内の空気は淀んではいなかった。
むしろひやりと乾いて心地良く感じる。
内壁の材質と──間近に湿っぽい温もりがあるからやも。]
ん、…トレイル、く……
[興味津々で上り込み、お家チェックに勤しむ暇がないとは理解していたが。、玄関先での強い抱擁に、項に触れる呼気と、混ざる匂いにまた、呼吸の仕方を忘れかけ。
先ほどは触れるか否か、すれすれの位置にあった唇が頬を撫で、留めを刺すように呼吸を奪われる。]
ッ──… 、……
[これでは話したくとも話せない。
このまま酒気漂う唇を貪りたい衝動をぐっと堪え、
薄目を開けたまま、宙に浮いていた両腕をゆっくりと背中に回し、一瞬だけ睫毛を伏せ、シャツを掴んで引きはがし。
暗がりに浮かぶ碧眼を見据え、唾液に濡れた下唇を親指で拭う。]
……初めて君と出会った時は驚いたよ
こんなにも美しく…好みの顔が近くに居たのかと
(-110) 2019/08/06(Tue) 23時半頃