― 自室 ―
[出て行ったみんなは地上へ着いた頃だろうか。
ワンピースのポケットを探る。カプセルがみっつ出てくる。
料理をする前に洗面所でネズミの視覚の隙をついて他のカプセルとすり替えたのだ。監視を一匹しか用意しなかった何者かの落ち度。
或いは、解っていて黙って見ていたのかも知れないのだけれど、そんな事は知る由もなく。]
これが人の心。醜い所もあれば、弱い所もある。
[泣きそうな表情で微笑んで。わざとカプセルをネズミに見せびらかすようにしてからそれを呷った。
裏切り者を処分する手間が省けるのだから、ネズミがそれを阻止する事は無いだろう。
ゆるゆると、訪れる死の苦しみを待つ。
それは、次の強欲の器を待つ時間よりも遥かに短い。もう、待つ必要も無いし、待つこともできないのだけれど。
……苦しみに呼吸を乱されるまで、唇は歌を紡いでいる。それがなんの歌か、聴く者は果たして居るのだろうか**]
(-102) 2011/04/25(Mon) 00時頃