[チラリと、まりの方を見て]
[新作の口紅を開けて]
[まりの顎をいざ掴まんと]
アンタ、いつも微妙に似合わない化粧品使うのやめなさい。悪いけど見苦しいわよ。
勿体無いでしょう?
ーーほら、本当はこんなに可愛い……お姫様になれるんだから。
お姫様は愛らしいリップにピンクのチークで、幸せそうに微笑むのがお似合いよ。
[うまくとっ捕まえられたならば上品なラメを纏うルージュをまりの唇に薄く塗り拡げ、薬指の腹でそっと暈した。
ゲンバ、こと売り場に毎日立っていた頃、何としても本社へ移動するべく業績アップのために編み出した姑息な知恵である。必死だったせいで完全に何かがおかしいが気にしてはいけない。
人呼んでヤクザの親切心。または取調室のカツ丼。蓋を開ければ単なる口説き戦法。
ただし、使う相手を間違えると一発逆鱗というシロモノだった。
というわけで、かくしてまりの前にはピンクのチークが置かれたのである**]
(-99) shake 2014/01/06(Mon) 01時頃