――這い寄る蔦亭:二階窓――
[するりと手を伸ばせば、その先は触手に変わる。
時折言う事を聞かないこともあるけれど、今宵の目的は合致しているからいつも以上に素早く、適切に蠢いていく。
肩まで触手と化せば先端は容易く窓枠に届き、その僅かな出っ張りに数本の触手を引っ掛ければ、小柄な体は容易く窓辺まで引き上げられる。
一つ目。違う。
二つ目。違う。
三つ目の窓を覗き込み、灰青の眼は細められた。]
ふふ。
[コン、と窓をたたく。
コンコン、ともう二回。
気がついたテッドが窓の方を見ればカーテンが引かれていても、月光を背にして黒い影が落ちていることがわかるだろう。
窓の外には足場になりそうなものがあるわけでもなく、人ではとうていそこに立つ事などできないはずなのに、確かに窓の外には人影が存在している。
その人影が揺らぎ、うねる触手が影を落とす。
ああ 窓に!窓に!*]
(-20) 2016/12/07(Wed) 22時半頃