――いつかの手記――
あの時の会話で一番強く感じたのは、黍炉はその知能・思考力と比べて感情が恐ろしく乏しい。
あれだけ思考力を伸ばしておいて、感情を殺すだなんて、一体どんな英才教育を受けてきたんだか。
思い当たる節は色々ある、投薬やトラウマを植え付けたり、これは大分昔の話だが、面をつけた人間とだけ関わって育つと、感情の無い人間になるらしい、とかな。
まぁ、過去を聞いた所で無駄だろう。今の状況は変わらない。良くも悪くもね。
あいつに対する対策は、何でもいいから感情を引き出すこと。感性を伸ばすこと。
沢山怒らせて、沢山笑わせる。それで生きたいと思わせる。
それやってだめなら、もうだめなんだ。情報が無い。財閥の英才教育に負けましたーでいいんだよ。そもそもたかがメンテナンス担当が干渉する領域なんか、とっくに越えてる。
…まぁ、打てる対策を打たず、美しい存在をむざむざ死なせるなんて、サイボーグ好きのプライドが許さないからね。
それに、面白そうじゃないか、一人の人間の価値観を、180度変えさせましたー、だなんて。やってみる価値はある。
(-14) 2016/05/08(Sun) 00時半頃