[最初の「兄」は自身と似た淡い金色の髪の男。
始終穏やかで、笑顔のたえない男だった。翠の瞳を覚えている。
抱きしめられる暖かさと、人は死ぬということを教えてくれた。
二人目の「兄」は赤く茶色い髪の男。
黒い瞳は鋭くて少しだけ怖かったが、虚勢が見えていた。
口も悪く、性格も悪く、服従させる楽しさを教えてくれた。
三人目の「兄」は黒い髪の男。兄なのに年下だった。
自分より弱いものとして庇護したくなるような魅力があった。
欲の使い方と、―――の扱い方を教えてくれた。
逮捕直後に自殺したのは、この男。
それぞれの「兄」たちは宛てがわれた教育係。
生まれたてで真っ白のヨランダに、必要なものを教える存在。
学校なんて行かなかったし、普通の生活はしたことがなかった。]
――兄さん、教えて。
ボク、もっと遊びたい。
[ヨランダに「個」として認識できるのはこの三人と、
今眼の前に居る男だけ]
(1092) 2012/04/10(Tue) 20時半頃