待って、走れ、な……
[ほんの少し走っただけで、青年の息はすぐにあがる。能力の副作用というわけではなく、薬で弱り切った内臓が急激な運動に耐えられないのだ。痛みはごまかせても酸素供給が追いつかなくなれば人の身体は動かない。適当な部屋に引っ張り込まれれば、すぐにへたりこんだ。]
だって、ナイフがあるなら欲しいなって。
[馬鹿、と言われて言い訳一つ。自分が大きなダメージ負ったとは理解していないから、あっけらかんとしたものだった。
血が流れないというのは青年にとっては僥倖だろう。知らぬうちの失血で動けなくなることはないのだから。]
痛くないよ。あにきのおかげ!
[何が楽しいのか嬉しそうに笑う。クラリスが糸を紡ぐのを見れば、歓声を上げ目を輝かせた。]
すっげー!
[何も無いところから何かが出てくる能力はまるで手品のようで、見ていて楽しい。幻覚と違って触っても溶けたり噛んできたりしないのが面白くて、巻いて貰った包帯をぺたぺた触った。]
(1020) 2012/04/10(Tue) 16時頃